前回書いた「60年報告」を読み直した。
正式には、「手話通訳制度調査検討報告書」というタイトルで、1985年(昭和60年)5月20日に全日本ろうあ連盟の中に設置された『手話通訳制度調査検討委員会』から”中間報告”という形でだされたものだ。
とりあえず項目を拾ってみると、まず委員会の構成は
○ろうあ団体関係者 4名
○関係行政機関 3名
○言語教育等専門家 4名
○学識経験者 3名
でした。そして主な検討事項は、
第1部 日本のろうあ者と手話の現状
1.ろうあ者の生活をめぐる問題点
(1)家族関係
(2)医療関係
(3)職業関係
(4)教育関係
(5)司法関係
(6)文化関係
(7)その他
①電話
②緊急または非常時の連絡
2.ろうあ者のコミュニケーションをめぐる問題点
(1)社会のろうあ者観
(2)社会参加を拒む壁
(3)ろうあ者の復権の歴史
(4)コミュニケーションの現状
①口話
②聴覚を主体とするコミュニケーション
③筆談
④手話
3.手話の機能と位置づけ
(1)手話の機能
①伝達的機能
②心理的機能
(2)手話の位置づけ
①教育的位置づけ
イ)ろう学校における手話の現状
ロ)高等教育機関における手話
②社会的位置づけ
4.手話発展への課題
(1)手話の独自性と音声言語
(2)標準手話と地域性
①標準手話
②手話の地域性
(3)手話開発のあり方
(4)専門分野の手話
(5)手話の普及
①聴覚障害者自身への普及
②関係者への普及
5.コミュニケーション保障のための課題
(1)コミュニケーション対策の現状
(2)手話通訳に関する問題点
(3)コミュニケーション対策の課題
そして、第2部が「手話通訳士(仮称)」となっているのですが、「なお、その実現のための具体的方策については引き続き検討する必要があろう。」として、わずか5頁でまとめられているのが残念です。たいした量ではないので全文掲載します。
制度の在り方について
1.手話通訳事業の充実の課題
今後における手話通訳事業の充実をめぐる課題としては、多様に変化する社会生活に対応して表現できる手話を含め、共通語としての「標準手話」の充実について、関係者の協力のもとに研究開発・普及のための方策を講ずる必要のあること、手話使用の主体である聴覚障害者が「標準手話」や新たな手話表現を日常的に駆使できるよう普及体制を整え、定着化をはかる必要があること等である。
2.「手話通訳士制度」の在り方
本制度は、聴覚障害者の生活にとって必要不可欠なコミュニケーションの保障のための手段である。殊に、司法分野における基本的人権に関わる場合や、医療などの命に係わる場合、また、国民としての権利を行使する場合においては、社会的に認められた手話通訳者によるコミュニケーション保障が確実になされなければならない。
このような任務を有する手話通訳者には、コミュニケーション技術における高い専門性、高い倫理性が要求されるとともに、そのために必要な養成、資格審査および適切な処遇が、全国斉一的に考えられなければならない。
本制度は、福祉、職業、教育、医療、司法、情報、交通、公民権の行使など、社会生活全般に広がるものであるので、それぞれの分野における法的整備が検討される必要があるが、当面特に聴覚障害者の社会参加や平等の実現をめざす根拠法である身体障害者福祉法および身体障害者雇用促進法などにおいてその位置づけを明確にする必要があろう。
こうした性格をもつ「手話通訳士制度」は、国が資格、養成、認定等に関する基本方針を示し、その実施は都道府県・指定都市が行うことが適当であろう。
3.「手話通訳士」の職務および処遇
(1)「手話通訳士」の職務
「手話通訳士」の職務は、次のとおりとすることが望ましい。
イ)聴覚障害者のコミュニケーションに関すること。
これは、単なる言葉の置換のみではなく、日本語(口話を含む)と手話双方の語を訳して相手方に伝えることである。
ロ)聴覚障害者への情報提供に関すること。
これは、聴覚障害者問題の正しい理解にたって各種の情報を適確に提供することである。
ただし、「手話通訳士」は設置場所、地域等により、上記イ)ロ)以外の業務を行うことも考慮する必要がある。
(2)「手話通訳士」の処遇
原則として専任職員(常勤)とし、その処遇は公務員と同等または準ずるものとすることが適当である。
(3)「手話通訳士」としての責務
「手話通訳士」はその職務の特質から次のような責務を有する。
① 職務を行うにあたっては、個人の人権を尊重し、その身上に関する秘密を守らなければならない。
② 自発的に職務に関する研修に励み、資質向上に努める。
③ 職務を通して聴覚障害者の社会参加と平等の実現に努める。
4.「手話通訳士」の養成
(1)養成の主体は、原則として都道府県・指定都市とすることが望ましいが、実施に際しては、適当な団体に委託することも検討されてよい。
(2)養成の費用は、都道府県・指定都市の負担として、国がこれに助成を行うことが適当であろう。
(3)学習内容は、聴覚障害者のコミュニケーションに関する科目、聴覚障害者の教育・福祉に関する科目、手話理論および手話実技に関する科目を必須とすることが望ましい。
5.「手話通訳士」の資格認定
(1)資格認定について
手話通訳者の資質向上と人材を確保するため、「手話通訳士」の認定を行うことが必要である。認定の主体は国とすることが適当であるが、その実施については適切な団体に委託することも検討されてよい。その費用は国の負担とすることが適当であるが、受験料については受験者の負担も考慮されてよい。
(2)認定試験の実施
試験科目については、全日本聾唖連盟が実施している認定試験および「手話通訳士」の養成内容等を参考にし検討することが望ましい。
受験資格としては、学歴は問わず、年齢は20 才以上とし、2年以上の「手話通訳士」養成を終えた者または、5年以上の手話通訳を経験した者が適当であろう。ただし、現在手話通訳活動に従事している者については経過措置を検討する必要がある。
なお、試験実施に際しては、「手話通訳士」認定試験委員会を設置し、合格基準の認定、試験内容の作成、試験審査等を行わせることが望ましい。
6.「手話通訳士」の設置派遣等について
(1)「手話通訳士」設置派遣
上記により養成認定した「手話通訳士」を全国斉一的に設置することが必要である。
設置場所については、都道府県・指定都市本庁、市役所、福祉事務所、身体障害者更生相談所、身体障害者福祉センター、公共職業安定所に重点的に設置するとともに、聴覚障害者の要請に応じ派遣も行える体制が考慮される必要がある。また手話通訳派遣専門組織の設置も検討されてよい。
「手話通訳士」の設置数については、設置場所・派遣対象等を勘案し、聴覚障害者100人に1人を標準として、概ね4,000 人程度を目指すべきであろう。
(2)政府機関等における「手話通訳士」の確保
聴覚障害者に必要なコミュニケーションの保障をするために、医療、司法、教育、労働等、聴覚障害者の生命および権利の擁護に深くかかわる政府諸機関等は、「手話通訳士」の確保について積極的に取り組むことが望まれる。
(3)「手話通訳士」の優先採用
「手話通訳士」認定制度で認定された「手話通訳士」は、政府諸機関、地方自治体、関係機関または民間企業等において、優先的に採用されることが望ましい。
7.現在の施策と関連
手話通訳に関連する事業として、厚生省の「手話通訳設置事業」および「手話奉仕員養成・派遣事業」並びに労働省の「手話協力員事業」は、聴覚障害者の生活・福祉の向上・拡充に大きく寄与してきている。
これらの事業は「手話通訳士」制度を支える基盤であり、聴覚障害者の社会参加と平等を促進するうえで欠かせない重要な役割を有しているので、次によりさらに充実が期待される。
(1)手話通訳設置事業
「手話通訳士」設置事業に統合発展することをも含め、より有効適切な実施方式を検討すべきであろう。
(2)手話奉仕員養成・派遣事業
地域に即して機動的に活動できる手話奉仕員が、聴覚障害者の日常的コミュニケーションの確保に尽くしている役割はきわめて大きい。「手話通訳士」への資格がこうしたボランティアの励みとなり、さらに裾野が拡がって行くような配慮が必要である。
派遣事業についても、「手話通訳士」設置派遣事業との有機的関連づけが必要であり、広域的な派遣システム等も含め、より発展の方向で検討する必要があろう。
(3)手話協力員事業
聴覚障害者の社会経済活動への参加を促進するために「手話通訳士」設置派遣事業との有機的関連をもたせることにより、より一層の充実を図らなければならない。
という簡潔なものだったのですね。”中間報告”たるゆえんです。でも、ここであの有名な(?)「「手話通訳士」の設置数については、設置場所・派遣対象等を勘案し、聴覚障害者100人に1人を標準として、概ね4,000 人程度を目指すべきであろう。」という文言が書かれたのもこの報告書なのです。
そして、最後の「おわりに」で以下のように書かれていたのもとても印象的でした。
特に、ろうあ者が社会生活全般を通じて、最も強く期待している「手話通訳」の不十分さが痛感された。
ろうあ者にとって意志疎通おける「手話通訳」は、肢体不自由者の移動における「義肢」「義足」「車椅子」等、視聴覚障害者の歩行にとっての「安全つえ」、読書における「点字」と同等の地位を占めるものであり、それらが補装具、日常用具等重要な位置づけがなされていることにかんがみ、これと同様な扱いがなされるべきであろう。
本報告にあたって最大の論議を費やした点は、「手話通訳」の「職務」であった。
我が国の多くのろうあ者が真に求めているものは、「手話通訳の専門家」プラス「ろうあ者福祉相談員」というものであるといわれている。これは、言語習得に障害をもち、コミュニケーションや情報からも阻害されている現在のろうあ者の孤独で不安定な状況を端的に物語っているとともに、ろうあ者福祉の遅れを反映しているものと考えられる。
本報告では、「手話通訳」の制度化を前提としたため、その職務については、コミュニケーション担当の専門家としての位置づけを示した。そうした資格をもつ人々が、関係行政機関等のろうあ者福祉担当者として配置され、ろうあ者の福祉を担当する体制の実現する日の一日も早いことを期待しつつ報告としたい。
改めて地域のみんなで学びたい資料だと思います。
そうそう、こういう資料がネットですぐに手に入らないのって、どうもねぇ~という感じです。とりあえず全通研の創立30周年記念出版「はばたこう未来へ」という本の付録CD-ROMに収録されていることを書いておきますね。(全日ろう連のサイトに掲載して欲しいですよねぇ~)
正式には、「手話通訳制度調査検討報告書」というタイトルで、1985年(昭和60年)5月20日に全日本ろうあ連盟の中に設置された『手話通訳制度調査検討委員会』から”中間報告”という形でだされたものだ。
とりあえず項目を拾ってみると、まず委員会の構成は
○ろうあ団体関係者 4名
○関係行政機関 3名
○言語教育等専門家 4名
○学識経験者 3名
でした。そして主な検討事項は、
第1部 日本のろうあ者と手話の現状
1.ろうあ者の生活をめぐる問題点
(1)家族関係
(2)医療関係
(3)職業関係
(4)教育関係
(5)司法関係
(6)文化関係
(7)その他
①電話
②緊急または非常時の連絡
2.ろうあ者のコミュニケーションをめぐる問題点
(1)社会のろうあ者観
(2)社会参加を拒む壁
(3)ろうあ者の復権の歴史
(4)コミュニケーションの現状
①口話
②聴覚を主体とするコミュニケーション
③筆談
④手話
3.手話の機能と位置づけ
(1)手話の機能
①伝達的機能
②心理的機能
(2)手話の位置づけ
①教育的位置づけ
イ)ろう学校における手話の現状
ロ)高等教育機関における手話
②社会的位置づけ
4.手話発展への課題
(1)手話の独自性と音声言語
(2)標準手話と地域性
①標準手話
②手話の地域性
(3)手話開発のあり方
(4)専門分野の手話
(5)手話の普及
①聴覚障害者自身への普及
②関係者への普及
5.コミュニケーション保障のための課題
(1)コミュニケーション対策の現状
(2)手話通訳に関する問題点
(3)コミュニケーション対策の課題
そして、第2部が「手話通訳士(仮称)」となっているのですが、「なお、その実現のための具体的方策については引き続き検討する必要があろう。」として、わずか5頁でまとめられているのが残念です。たいした量ではないので全文掲載します。
制度の在り方について
1.手話通訳事業の充実の課題
今後における手話通訳事業の充実をめぐる課題としては、多様に変化する社会生活に対応して表現できる手話を含め、共通語としての「標準手話」の充実について、関係者の協力のもとに研究開発・普及のための方策を講ずる必要のあること、手話使用の主体である聴覚障害者が「標準手話」や新たな手話表現を日常的に駆使できるよう普及体制を整え、定着化をはかる必要があること等である。
2.「手話通訳士制度」の在り方
本制度は、聴覚障害者の生活にとって必要不可欠なコミュニケーションの保障のための手段である。殊に、司法分野における基本的人権に関わる場合や、医療などの命に係わる場合、また、国民としての権利を行使する場合においては、社会的に認められた手話通訳者によるコミュニケーション保障が確実になされなければならない。
このような任務を有する手話通訳者には、コミュニケーション技術における高い専門性、高い倫理性が要求されるとともに、そのために必要な養成、資格審査および適切な処遇が、全国斉一的に考えられなければならない。
本制度は、福祉、職業、教育、医療、司法、情報、交通、公民権の行使など、社会生活全般に広がるものであるので、それぞれの分野における法的整備が検討される必要があるが、当面特に聴覚障害者の社会参加や平等の実現をめざす根拠法である身体障害者福祉法および身体障害者雇用促進法などにおいてその位置づけを明確にする必要があろう。
こうした性格をもつ「手話通訳士制度」は、国が資格、養成、認定等に関する基本方針を示し、その実施は都道府県・指定都市が行うことが適当であろう。
3.「手話通訳士」の職務および処遇
(1)「手話通訳士」の職務
「手話通訳士」の職務は、次のとおりとすることが望ましい。
イ)聴覚障害者のコミュニケーションに関すること。
これは、単なる言葉の置換のみではなく、日本語(口話を含む)と手話双方の語を訳して相手方に伝えることである。
ロ)聴覚障害者への情報提供に関すること。
これは、聴覚障害者問題の正しい理解にたって各種の情報を適確に提供することである。
ただし、「手話通訳士」は設置場所、地域等により、上記イ)ロ)以外の業務を行うことも考慮する必要がある。
(2)「手話通訳士」の処遇
原則として専任職員(常勤)とし、その処遇は公務員と同等または準ずるものとすることが適当である。
(3)「手話通訳士」としての責務
「手話通訳士」はその職務の特質から次のような責務を有する。
① 職務を行うにあたっては、個人の人権を尊重し、その身上に関する秘密を守らなければならない。
② 自発的に職務に関する研修に励み、資質向上に努める。
③ 職務を通して聴覚障害者の社会参加と平等の実現に努める。
4.「手話通訳士」の養成
(1)養成の主体は、原則として都道府県・指定都市とすることが望ましいが、実施に際しては、適当な団体に委託することも検討されてよい。
(2)養成の費用は、都道府県・指定都市の負担として、国がこれに助成を行うことが適当であろう。
(3)学習内容は、聴覚障害者のコミュニケーションに関する科目、聴覚障害者の教育・福祉に関する科目、手話理論および手話実技に関する科目を必須とすることが望ましい。
5.「手話通訳士」の資格認定
(1)資格認定について
手話通訳者の資質向上と人材を確保するため、「手話通訳士」の認定を行うことが必要である。認定の主体は国とすることが適当であるが、その実施については適切な団体に委託することも検討されてよい。その費用は国の負担とすることが適当であるが、受験料については受験者の負担も考慮されてよい。
(2)認定試験の実施
試験科目については、全日本聾唖連盟が実施している認定試験および「手話通訳士」の養成内容等を参考にし検討することが望ましい。
受験資格としては、学歴は問わず、年齢は20 才以上とし、2年以上の「手話通訳士」養成を終えた者または、5年以上の手話通訳を経験した者が適当であろう。ただし、現在手話通訳活動に従事している者については経過措置を検討する必要がある。
なお、試験実施に際しては、「手話通訳士」認定試験委員会を設置し、合格基準の認定、試験内容の作成、試験審査等を行わせることが望ましい。
6.「手話通訳士」の設置派遣等について
(1)「手話通訳士」設置派遣
上記により養成認定した「手話通訳士」を全国斉一的に設置することが必要である。
設置場所については、都道府県・指定都市本庁、市役所、福祉事務所、身体障害者更生相談所、身体障害者福祉センター、公共職業安定所に重点的に設置するとともに、聴覚障害者の要請に応じ派遣も行える体制が考慮される必要がある。また手話通訳派遣専門組織の設置も検討されてよい。
「手話通訳士」の設置数については、設置場所・派遣対象等を勘案し、聴覚障害者100人に1人を標準として、概ね4,000 人程度を目指すべきであろう。
(2)政府機関等における「手話通訳士」の確保
聴覚障害者に必要なコミュニケーションの保障をするために、医療、司法、教育、労働等、聴覚障害者の生命および権利の擁護に深くかかわる政府諸機関等は、「手話通訳士」の確保について積極的に取り組むことが望まれる。
(3)「手話通訳士」の優先採用
「手話通訳士」認定制度で認定された「手話通訳士」は、政府諸機関、地方自治体、関係機関または民間企業等において、優先的に採用されることが望ましい。
7.現在の施策と関連
手話通訳に関連する事業として、厚生省の「手話通訳設置事業」および「手話奉仕員養成・派遣事業」並びに労働省の「手話協力員事業」は、聴覚障害者の生活・福祉の向上・拡充に大きく寄与してきている。
これらの事業は「手話通訳士」制度を支える基盤であり、聴覚障害者の社会参加と平等を促進するうえで欠かせない重要な役割を有しているので、次によりさらに充実が期待される。
(1)手話通訳設置事業
「手話通訳士」設置事業に統合発展することをも含め、より有効適切な実施方式を検討すべきであろう。
(2)手話奉仕員養成・派遣事業
地域に即して機動的に活動できる手話奉仕員が、聴覚障害者の日常的コミュニケーションの確保に尽くしている役割はきわめて大きい。「手話通訳士」への資格がこうしたボランティアの励みとなり、さらに裾野が拡がって行くような配慮が必要である。
派遣事業についても、「手話通訳士」設置派遣事業との有機的関連づけが必要であり、広域的な派遣システム等も含め、より発展の方向で検討する必要があろう。
(3)手話協力員事業
聴覚障害者の社会経済活動への参加を促進するために「手話通訳士」設置派遣事業との有機的関連をもたせることにより、より一層の充実を図らなければならない。
という簡潔なものだったのですね。”中間報告”たるゆえんです。でも、ここであの有名な(?)「「手話通訳士」の設置数については、設置場所・派遣対象等を勘案し、聴覚障害者100人に1人を標準として、概ね4,000 人程度を目指すべきであろう。」という文言が書かれたのもこの報告書なのです。
そして、最後の「おわりに」で以下のように書かれていたのもとても印象的でした。
特に、ろうあ者が社会生活全般を通じて、最も強く期待している「手話通訳」の不十分さが痛感された。
ろうあ者にとって意志疎通おける「手話通訳」は、肢体不自由者の移動における「義肢」「義足」「車椅子」等、視聴覚障害者の歩行にとっての「安全つえ」、読書における「点字」と同等の地位を占めるものであり、それらが補装具、日常用具等重要な位置づけがなされていることにかんがみ、これと同様な扱いがなされるべきであろう。
本報告にあたって最大の論議を費やした点は、「手話通訳」の「職務」であった。
我が国の多くのろうあ者が真に求めているものは、「手話通訳の専門家」プラス「ろうあ者福祉相談員」というものであるといわれている。これは、言語習得に障害をもち、コミュニケーションや情報からも阻害されている現在のろうあ者の孤独で不安定な状況を端的に物語っているとともに、ろうあ者福祉の遅れを反映しているものと考えられる。
本報告では、「手話通訳」の制度化を前提としたため、その職務については、コミュニケーション担当の専門家としての位置づけを示した。そうした資格をもつ人々が、関係行政機関等のろうあ者福祉担当者として配置され、ろうあ者の福祉を担当する体制の実現する日の一日も早いことを期待しつつ報告としたい。
改めて地域のみんなで学びたい資料だと思います。
そうそう、こういう資料がネットですぐに手に入らないのって、どうもねぇ~という感じです。とりあえず全通研の創立30周年記念出版「はばたこう未来へ」という本の付録CD-ROMに収録されていることを書いておきますね。(全日ろう連のサイトに掲載して欲しいですよねぇ~)