サーカスな日々

サーカスが好きだ。舞台もそうだが、楽屋裏の真剣な喧騒が好きだ。日常もまたサーカスでありその楽屋裏もまことに興味深い。

現実のほうが(秋葉原事件の加藤被告陳述の重要度80点)

2010年07月29日 | それでも世界は回る
asahi.com(朝日新聞社):加藤被告「現実の方が大切な物あった」 秋葉原事件公判 - 社会


加藤被告「現実の方が大切な物あった」 

秋葉原事件公判(1/3ページ) 2010年7月29日22時28分

東京・秋葉原で2008年6月、7人を殺害し10人を負傷させた無差別殺傷事件で、殺人などの罪に問われた元派遣社員・加藤智大被告(27)の第17回公判が29日、東京地裁(村山浩昭裁判長)であった。
2回目の被告人質問で、被告は事件直前の心の動きを自らの口で語った。
加藤被告の供述によると、依存を深めたインターネット掲示板での「荒らし」などの嫌がらせがやまず、「事件を起こすとほのめかすことで、嫌がらせをやめてもらおうと考えた」という。
一方、被告は直前まで「本気で事件を起こすつもりはなく、できれば起こさないですむようにしたかった」とも強調した。
ただ、人間関係も良好だった静岡県裾野市での派遣の職場を「自分の作業着がない」との理由で激高し、飛び出してしまうと、さらにエスカレート。刃物や車を使った犯行予告を書き込み、実際に凶器のナイフや現場までの車を手配した。
事件当日、現場の秋葉原の交差点は3度、通り過ぎた。直後、静岡に帰ることも頭をよぎったが、「掲示板を取り返すこともできないし、自分の居場所はないことに改めて気付いた」という。
弁護人から当時の考えについて問われると、加藤被告は「大切な掲示板に執着していたが、今考えれば、現実の方が大切な物がたくさんあったし、居場所もあったように思える。後悔している」と絞り出した。(山本亮介)

◇  29日に東京地裁であった公判での加藤智大被告の被告人質問の要旨は次の通り。(質問はすべて弁護人)
【ネットでの嫌がらせ】  ――「なりすまし」とは。  例えるなら、家に帰ると自分そっくりな人が生活していて、家族がそれに気づかず、自分が偽物だと言われてしまう状態。

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とても冷静な陳述である。
加藤被告にとって、「掲示板」のなかでの社会とのつながりがことのほか大きく、その場が「アラシ」や「なりすまし」で、メチャメチャになってしまったことへの、絶望が、この事件に至った動機だというように自分で捉えている。
この「秋葉原事件」をどうとらえるか、という問題はとても大切だ。
犯罪的には、秋葉原に車で乗り付けて、殺傷を犯してしまったということにつきるのだが、加藤被告の本質的な問題は、「掲示板」のなかに相当なリアルを感じ、それを壊されたことが、自分そのものを理不尽に壊された、攻撃されたという、反応に過剰に陥ったということだ。
そのあとの行動は、病理的な精神状態にあったのかどうか、現在の法制度下では専門家の判断を待つしかないところがある。
掲示板でも、ブログでもそうかもしれないが、悪意のある書き込みなどに疲れ果て、炎上までいかなくても、サイトを停止する人はとても多い。
「そんなのは笑ってやりすごせばいいよ」というアドバイスがあったとしても、そうはなれない心境の人たちもいる。
もちろん、無意識にそのことにかかわずらうことで、深みにはまることを察知して、閉鎖したり停止したりするわけで、その防御反応のほうが、正解である場合も多いのかもしれない。
加藤被告は今後、獄中で長い時間、自分と向かい合うことになる。
この人の、自己対象化に注目したい。


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