地球温暖化を否定する報告書を発表した組織が石油企業、石炭供給企業などの化石燃料業界から相当額の資金提供を受けていました。
地球温暖化を否定する主張は石油企業や石炭企業によるプロパガンダの可能性を強く疑わなければならないようです。
今回の文章は、非営利のオンライン・マガジン『Truthout』(トゥルースアウト誌)から採りました。
タイトルは
The Climate Deniers Are Using the Same Tactics as the Tobacco Industry
(地球温暖化否定派、タバコ業界と同じ戦術を採用)
原文はこちら
http://truth-out.org/opinion/item/23000-the-climate-deniers-are-using-the-same-tactics-as-the-tobacco-industry
(なお、原文の掲載期日は4月9日でした)
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The Climate Deniers Are Using the Same Tactics as the Tobacco Industry
地球温暖化否定派、タバコ業界と同じ戦術を採用
2014年4月9日(水)
By The Daily Take Team、The Thom Hartmann Program
地球温暖化が最悪のシナリオに向かって進んでいることがいよいよ鮮明になりつつあるが、化石燃料業界は、これに応えて、プロパガンダによる反撃を一段と強化している。
先週、『気候変動に関する非政府間パネル』(NIPCC)と称する団体が、5度目の報告書を発表し、国連の『気候変動に関する政府間パネル』の知見が「誤りであることを証明」した。
このNIPCCの報告書は、保守系のシンクタンクである『ハートランド・インスティチュート』が発表したもので、それによると、地球温暖化はまったく憂慮に値しない、それは、以前にも何百回と起こった自然の一過程にすぎないとのことだ。それどころか、大気における二酸化炭素の増大は植物が呼吸する空気の増量を意味するので、地球温暖化は好ましいとする可能性さえ示唆して報告書を締めくくっている。
これは冗談ではなく大まじめの主張なのだ。
例によって、「客観報道」を謳うフォックス・ニュースがこの報告書を取り上げ、これが真正な学問のたまものであるかのごとく報じている。
視聴者は、しかし、このNIPCCの見解になぜ科学者の97パーセントが不同意であるのか首をひねるかもしれない。『ハートランド・インスティチュート』のジョセフ・バスト会長によると、それは、気候にかかわる学界が総じて環境保護論者のせいで「腐敗」しているからである。
しかし、実際は、腐敗し不誠実であるのはNIPCCと『ハートランド・インスティチュート』の方である。
あの『大統領の陰謀』の「ディープ・スロート」のセリフを拝借しよう。「金の流れを追え」、だ。
NIPCCの報告書を発表したシンクタンク、『ハートランド・インスティチュート』は、化石燃料業界とその関係者からの資金拠出に大幅に依存している。具体的には、過去30年間で約6700万ドル相当を寄付金としてエクソン・モービル社、コーク兄弟、スケイフ財団などから受け取っている。これらの法人や人物は、人類がこのまま大気に温室効果ガスを排出し続ければ莫大な富を獲得することになる存在だ。
また、NIPCCの報告書を作成した中心的人物は、地球温暖化否定業界の紳士録に載る人間でもある。つまり、NIPCCの創設者はフレッド・シンガー博士であるが、同博士はこれまで何十年も地球温暖化はたいした問題ではないという嘘を推進してきた人物である。そして、化石燃料企業はこの間ずっと博士を援助してきた。また、報告書の共著者であるクレイグ・イドソ氏は過去、石炭供給企業の最大手ピーボディ・エナジー社に勤めていた経歴の持ち主である。
つまり、こういうことだ。NIPCCの報告書は、地球温暖化が嘘であると一般大衆に信じ込ませるために構築された、化石燃料業界による大がかりなペテンなのである。
これはあたかも歴史が-----考えられ得る最悪のやり方で-----くり返されたかのように思われる。つまり、1990年代の昔、この気候変動否定派のNIPCC報告書を作成した人々は、もうひとつのやはり悪名高い産業-----すなわち、タバコ業界-----のためにサクラとして働いていた。
訴訟や議会での公聴会などによって国民の意見がタバコ業界に厳しいものとなりつつあった時、『ハートランド・インスティチュート』は、おためごかしの研究成果を次から次へと繰り出して、受動喫煙と癌の因果関係を否定し続けた。
たとえば、『ハートランド・インスティチュート』の現会長であるジョセフ・バスト氏は、1998年に同団体のウェブサイトの文章において、こう主張している。
「EPA(米環境保護庁)は、受動喫煙による一般大衆への健康上のリスクを見出すためにデータを歪曲せざるを得なかったのだ」、と。
『ハートランド・インスティチュート』の広報活動はタバコ業界の大義にとってすこぶる重要であった。だからこそ、フィリップ・モリス社の幹部であるトム・ボレリ氏は、「5ヵ年計画」と呼ばれる1993年の覚え書の中で、同組織を支援することを社の重要な戦略のひとつに数えたのである。
『ハートランド・インスティチュート』がタバコ業界のサクラを演じるのと並行して、NIPCCの創設者であるシンガー博士は、自身でもあからさまにタバコ業界寄りの研究成果を世に問うためにせっせと立ち働いていた。1993年には、フィリップ・モリス社のひいきのPR会社であるAPCOアソシエート社と協力し、受動喫煙と癌の結びつきを示唆する研究の「誤りを証明」するために尽力した。
これらは、むろんのこと、巨大タバコ企業の利益を守るべく遂行されたのである。彼らは議会における証言でもニコチンの中毒性を堂々と否定してみせた。
歴史にはこのような同一性はまれである。目下の化石燃料業界は、1990年代にタバコ業界が用いたのと寸分たがわぬシナリオに依拠して行動しているように思われる。
もし楽天主義者であれば、1990年代のタバコ訴訟の決着を持ち出して、最終的に真実が勝利をおさめ、誰が悪党であるかはっきりするだろうと弁じるかもしれない。
しかし、思い出していただきたい。米医務総監のルーサー・テリー氏が喫煙の危険性について米国民に警鐘を鳴らした後、タバコ企業がそれまで引き起こし、今も引き起こしている死をめぐって、その責任を彼らに問うのに30年以上もかかったことを。
地球温暖化に関しては、そのような時間的余裕がないかもしれないのだ。一部の科学者の見解では、急激な気候変動によって数十年のうちに人類が死滅する可能性が示唆されている。
米国民とメディアは手遅れにならないうちに立ち上がり、地球温暖化を否定することを真実の言葉で呼ぶべきだ、つまり、ペテンである、と。
何と言っても、賭けられているのは人類の将来なのだから。
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[補足と余談など]
■『ハートランド・インスティチュート』の活動については、以下のような記事もありました。
気候変動否定派、米学校教育へ関与する動き発覚
http://www.afpbb.com/articles/-/2861353?pid=8551495
■タバコ業界と学術界の結びつきについては、日本でも以下のような記事がありました。
喫煙科学研究財団に解散勧告 「国民の健康に反する存在」 日本禁煙学会
http://eharagen.sun.macserver.jp/tabacco3.html
■大企業や政府当局は自分に都合のいい研究成果を強力に推進します。「でっち上げ」の言葉がふさわしい場合さえあります。
石炭・石油企業の資金拠出によるプロパガンダが存在する一方で、地球温暖化に関しては、対立する側の原子力関連企業もこれと反対方向のプロパガンダを推し進めているはずです。
さまざまな立場からのプロパガンダが錯綜し、真実の姿が見えにくくなっています。
大手メディアも、巨額の広告費などをえさにされて、これらのプロパガンダに協力的になります。
また、いつの時代にも「御用学者」と呼ばれる存在、曲学阿世の徒がいました。
一般市民はよほど注意深くなければなりません。
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