気まぐれ翻訳帖

ネットでみつけた興味深い文章を翻訳、紹介します。内容はメディア、ジャーナリズム、政治、経済、ユーモアエッセイなど。

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2017年10月21日 | 連絡事項
個人的な事情により、当分の間ブログを休止させていただきます。
申し訳ありません。
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シリアをめぐる不都合な報道を封殺する英米大手メディア

2017年10月04日 | メディア、ジャーナリズム

訳出するタイミングが例によって大幅に遅れてしまいましたが、訳しておく価値はあると思うので、とにかく今回掲載しておきます。

それにしても、このブログを始めて以来、英米大手メディアが米国政府の意向に沿って?、都合の悪い事実、情報等を報道自粛するありさまにはたびたび驚かされます。


原文のタイトルは
After Hersh Investigation, Media Connive in Propaganda War on Syria
(シリアに関する突っ込んだ調査報道に対し、メディアがプロパガンダ戦で共闘)

書き手は Jonathan Cook(ジョナサン・クック)氏。

原文のサイトはこちら↓
https://www.counterpunch.org/2017/06/30/after-hersh-investigation-media-connive-in-propaganda-war-on-syria/


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2017年6月30日

After Hersh Investigation, Media Connive in Propaganda War on Syria
シリアに関する突っ込んだ調査報道に対し、メディアがプロパガンダ戦で共闘


by Jonathan Cook
ジョナサン・クック



欧米のいわゆる「自由な」メディアがいかに「半面の真実」と欺瞞の世界を作り上げ、その聴衆をコントロールしているか、そして、いかにわれわれから情報を遠ざけ、われわれを手なずけているか-----その度合いを理解したかったら、その事例研究にもっともふさわしいのは、ピュリッツァー賞受賞の経歴も有する、調査報道ジャーナリストのシーモア・ハーシュ氏を彼らがいかに処遇しているかに注目することであろう。

これら、お互いが激しく競争し、企業収益を追求する、スクープに飢えたメディア各社は、今回の件に関しては、足並みそろえて同じ意思決定を示した。
つまり、まずは、ハーシュ氏の最新の調査報道記事の掲載をはねつけた。そして次に、先週の日曜、その記事がドイツで掲載されても、その後もしつように無視を決め込んだのである。
ハーシュ氏が明らかにしたことについて、彼らはなおも完全な沈黙をたもっている-----ここ数日の間、まさに同氏の調査報道の対象である問題と関連した2つの話題に、彼らみずからが強い興味を示したにもかかわらず。

この2つの話題は、欧米メディアでのこの突出したあつかわれ方を考えれば、明らかにハーシュ氏の調査報道を「中和する」意図で持ち出されたのである。
この話題をめぐる報道は、しかし、ハーシュ氏のそもそもの調査報道に関して、読者にいっさい情報を提供しない。われわれは完全に『鏡の国のアリス』の不条理な世界に入り込んでいる。

さて、では、ハーシュ氏が明らかにしたこととは何であったか。
同氏の今回の情報源は米諜報機関の人間である。つまり、これまで何十年かに渡ってハーシュ氏のもっとも重要な報道実績のいくつかに貢献してきた人々である。これらの人々のおかげでベトナム戦争時の米兵によるマイライ(ソンミ村)虐殺事件、2004年のアブグレイブ刑務所におけるイラク人捕虜への虐待事件などの詳細が明らかになったのだ。
今回、彼らがハーシュ氏に語ったところによると、アサド大統領が4月4日、シリア北部のハンシャイフンで致死性の化学物質サリンを使用したとの米国政府の公式見解はあやまりであるとのことだ。実際は、ジハード戦士の集会をシリア航空機が爆撃し、それによって物資貯蔵庫の誘爆がひき起こされ、庫内の有毒物質が外部に漏出した。近隣の一般市民が亡くなったのはそのせいだという。

このような出来事に関しては、異なった種類の説明こそ、メディアにとっては大変な興味の的であるはずだ。なぜなら、トランプ大統領は上記の公式見解に基づいてシリア攻撃にゴーサインを出したからだ。
ハーシュ氏の調査報道が示唆するのは、トランプ大統領が自身の当局関係者の助言にそむいて攻撃に踏み切ったということである。
これはきわめて危険なふるまいだった。それは国際法に明確に違反するだけではない。アサド大統領の強力な味方であるロシアをこの混迷に引き込むことになったかもしれない。つまり、シリアを舞台として、世界の二大核保有国の深刻な対立という事態を招来したかもしれない。

ところが、欧米メディアはハーシュ氏の調査報道にはみごとなほど関心を示さなかった。かつてジャーナリストの鑑(かがみ)とあがめられたハーシュ氏だが、そのハーシュ氏が英米の大手メディアに片っぱしから掲載を打診してみたが、色よい返事はもらえなかったのである。氏の調査報道を拾ってくれたのは、結局、ドイツの日曜新聞『ヴェルト・アム・ゾンターク』紙だけであった。

もちろん、ハーシュ氏の調査報道を英米メディアがそろって無視したことには、いくつかの理由が-----たとえどんなにあり得なさそうであっても-----考えられなくはない。
たとえば、氏の入手した内部情報があやまりである証拠を彼らが得ていた場合である。
しかし、この場合、英米メディアはその証拠を提示すればいいはずだ。ただし、そうした反証の提示はハーシュ氏のそもそもの報道の存在を認めることになる。そして、メディアはどうもこぞってこの路線は採用したくないらしい。

あるいは、彼らはこれがすでに古くさいニュースであり、もはや読者の興味をひかないと考えたのかもしれない。この解釈は納得しがたいとはいえ、少なくとも一応はもっともらしい体裁をそなえている。
けれども、先週の日曜にハーシュ氏の記事が掲載されて以来起こったことは、あらゆる点でこの説明の仕方をうらぎるものだ。

ハーシュ氏の記事は、政府の公式見解を何としてでも維持したい人々から、明らかに同記事を「中和する」意図をふくんだ2つの反応を引き出した。
同氏が発掘した事実は欧米メディアには皆目興味をひかないものだったかもしれないが、不思議なことに、米国政府はただちに危機対応姿勢を採った。
むろん、政府職員がハーシュ氏の記事に直接言及することはなかった。そんなことをすれば当の記事に関心が集まり、メディアはそれにふれざるを得なくなるであろう。政府は、代わりに、ハーシュ氏の記事から注意をそらすとともに、公式見解を補強すべく誤誘導を図ったのである。
この点だけでもわれわれは危惧しなければならない-----国民は正しく情報を伝えられておらず情報操作を受けているのだ、と。

「中和する」意図をふくんだ最初の例は、ハーシュ氏の記事が掲載された直後の、米国防総省とトランプ大統領による声明である。
それは、アサド大統領が自国民に新たな化学兵器攻撃をもくろんでいる証拠を米国はつかんだ、そして、それが実行された場合、米国政府はきわめて厳しい措置で対応する、という警告であった。

英『ガーディアン』紙はこう報じている。

「米国は火曜、シリア空軍基地における化学兵器攻撃の準備行動を看取したと発表した。4月に使用されたと目されるサリンガスもこれにふくまれるという。米国政府は、このさらなる化学兵器の使用はシリアにとって『大きな代価を払う』ことになると警告した」

「中和する」意図をふくんだ2番目の例は金曜日に登場した。匿名の2人の外交官が化学兵器禁止機関(OPCW)の報告を「事実だとした」。それは、ハンシャイフンの犠牲者の一部にサリンもしくはそれに似た化学物質に由来する症状が見られたというものだった。

この話には大いに疑ってしかるべき明白な理由がある。
化学兵器禁止機関の報告はすでに周知のことであったし、議論の対象にもしばらくなっていた。つまり、ニュースとして報じる価値はみじんもなかった。

また、この報告には瑕疵があることもよく知られている。
化学兵器禁止機関に提出された遺体には、いわゆる「分析過程の管理」-----中立的な監視-----がおこなわれていなかった。この点は、イラクの兵器査察官であったスコット・リッター氏も指摘している。
化学兵器禁止機関に遺体が届く前に、利害関係者は誰であれ、工作をほどこす機会があったであろう。だからこそ、同機関はサリンの痕跡をアサド政権の責に帰する声明をひかえたのである。
真実を伝えるニュースの世界では、この化学兵器禁止機関の報告は、「アサド政権の責に帰する」ことができた場合にのみ、メディアが再度関心を寄せる価値が生じるはずのものである。

また、アサド政権に対する警告を大々的に発したところで、米国防総省とトランプ政権は抑止効果を高められるわけではない。アサド大統領が今後サリンガスを使用する可能性を低めることはできないであろう。それはロシアに内々に警告することではるかにうまくやれるであろう。同国はアサド大統領に絶大な影響力を有している。
この米国政府の警告は、要するに、アサド大統領に向けてではなく、欧米の一般大衆に向けてのものなのだ-----ハーシュ氏の調査報道が疑問を投げかける形となった政府の公式見解を維持・強化するために。

米国政府の警告は実際には将来の化学兵器使用の可能性を低めるどころかむしろ増大させるものだ。
反アサド派の勢力には、アサド大統領を巻き込むべく「偽旗作戦」(相手側になりすましておこない、相手側に非を押しつける軍事作戦)として化学兵器を使う、強い動機がある。米国がシリアに介入したがっていることは周知の事実だからだ。
いかなる観点から見ても、この米国政府の声明はいちじるしく思慮を欠いた-----もしくは悪意のある-----行為であり、それが達成すると想定されている展開とは真逆の結果をもたらす可能性が高い。

しかし、これだけにとどまらず、上記の2つの話題についてははるかに深刻な側面がある。
これら米国政府の主張が大手メディアで何の疑いも差し挟まれずに報道されたことは、それだけでも十分憂慮に値する。しかし、良心に照らして受け入れがたいのは、これらの話題をメディアが正面切って取り上げる際、ハーシュ氏の調査報道をしつように無視し続けている点である。

業界の一般的な慣行にしたがえば、これらの話題はまっとうなジャーナリストであれば記事にしないところだ-----ハーシュ氏の報道に言及することなしには。これらの話題にそれは決定的なかかわりを持っているのだから。
いや、実際はそれどころではない。ハーシュ氏の伝えた諜報機関の情報が決定的に重要というだけでなく、まさにそれこそが、これらの話題がいきなり大々的なニュースとして取り上げられた理由なのである。

アサド大統領に対するトランプ政権と国防総省の警告あるいは化学兵器禁止機関の報告の再紹介を、ハーシュ氏の記事にふれずにすます報道はプロパガンダ-----シリアに対する違法な政権転覆を企図した英米の外交目標を支えるプロパガンダ-----にほかならない。そして、今のところ、このような報道が米国と英国の主だった新聞とテレビ局のすべてを支配しているようである。


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グーグル検索が「グーグル検閲」に-----グーグルが進歩派サイトへのアクセスを抑制

2017年09月08日 | メディア、ジャーナリズム

短いですが、また時期遅れですが、どうしても気になるニュースなので、ここで訳出しておきます。

米国政府とグーグルによる思想統制と洗脳がいよいよ激しさを増したようです(笑)。いや、笑いごとではありませんが。

例によって、大手メディアはこれを大々的に取り上げようとはしません。


原文のタイトルは
Google Censors Block Access to CounterPunch and Other Progressive Sites
(グーグルの検閲エンジンが『カウンターパンチ』等、進歩派サイトへのアクセスを阻害)

書き手は Eric Sommer(エリック・ソマー)氏。


原文のサイトはこちら↓
https://www.counterpunch.org/2017/08/09/google-censors-block-access-to-counterpunch-and-other-progressive-sites/

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2017年8月9日

Google Censors Block Access to CounterPunch and Other Progressive Sites
グーグルの検閲エンジンが『カウンターパンチ』等、進歩派サイトへのアクセスを阻害

by Eric Sommer
エリック・ソマー


米国政府、および、それとつるんだIT企業はインターネットを徹底的に活用して、ユーザーの情報を集め、その活動を監視し、彼らの見たりしたりすることを統制しようとする他の国々の政府の陣営に本格的に仲間入りを果たそうとしつつある。

まずはNSA(米国家安全保障局)が何百万もの米国市民だけでなく世界中の人々の電子メール、電話の通話記録、ソーシャルメディアにおける情報、等々を収集していた-----いや現在もそうしている。グーグルを初めとするソフトウエア企業はひそかにNSAに便宜を図り、ユーザーへのアクセスを彼らに許していた。この言語道断の体制はエドワード・スノーデン氏の暴露によってようやく周知となった。

さて、今度はグーグル自身が今や、米国政府内のお友だちの意向を受け、一部のサイトを進んで検閲-----実質的にアクセスを妨害-----しようとしている。
この対象となったサイトは、米国の労働者に向けて、彼らの賃金や福祉制度、生活水準へのさらなる攻撃をもくろむ連邦政府の現在進行中の営為に関して警鐘を鳴らそうとするサイト、あるいは、米国の主導するNATOその他の軍事機構とイラン、ロシア、中国等の国々との近い将来の戦争勃発の可能性に注意を喚起しようとするサイトである(ちなみにイランやロシア、中国等は米国もしくは米国民に対していかなる直接的な脅威もおよぼしていない)。

グーグルは、新規の、「反フェイク・ニュース」プログラムと称する取り組みに着手したが、そのアルゴリズムは、この2、3ヶ月の間、これまで検索上位に表示されていた社会主義的、反戦的、進歩的なサイトを最悪で50ページ目の位置にまで押し下げてしまった。実質的に検索者の目にとまらず、検索結果に表示されないことに等しい。
検索結果においていちじるしく表示例を減らしたサイトは、たとえば、カウンター・パンチ、ワールド・ソーシャリスト・ウェブサイト、デモクラシー・ナウ、米国自由人権協会(米国市民的自由連合)、ウィキリークス、等々である。
上のワールド・ソーシャリスト・ウェブサイトを例にとると、グーグルの新プログラムの導入以来、表示例は67パーセント減少した。

グーグルの、この検索エンジンから「検閲エンジン」への転換はささいな出来事では決してない。グーグル検索は現在、労働者だけにとどまらず社会のその他の成員にとっても、自分の生活や状況に関する情報を得る際の基本的な手段になっている。言論の自由、報道の自由という基本的な権利に対するこのような重大な侵害に抗すべく、われわれはあらゆる努力を払わねばならない。

このネット検閲で最大の痛手を受けた上記のワールド・ソーシャリスト・ウェブサイトは目下、一般市民の意見をつのり、影響を受けたサイトに呼びかけて、グーグルの検閲行為に対する幅広い抗議運動を計画している。
(検閲行為に関する他の情報-----具体的な数値など-----については以下のサイトを参照
http://www.wsws.org/en/articles/2017/08/08/goog-a08.html

労働に従事している人々はインターネットの真に民主的な利用法のために力をつくさねばならない。真に民主的な利用法のためには、まず、さまざまな話題にふれることがどこまでも許されていなければならない。米国民および世界の人々がふれるべきだとグーグル、そして米国政府が、考えるものだけに限られてはならないのだ。


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[余談など]


もちろん今回のこのブログはグーグル検索でずっと下位に表示されるでしょう(笑)



大企業は政府とたやすく癒着します。

アマゾンやペイパルは以前、米国政府が敵対的とみなすウィキリークスへのクラウドサービスを停止する挙に出ました。
政府のご機嫌をうかがい、仕事の受注につなげるため、これらの大企業は簡単に「言論の自由」その他を踏みにじります。

そして、政府のプロパガンダ機関と化している大手メディア(および、そのお抱えのコメンテーターやジャーナリスト)は、日頃「自由と民主主義」や「言論の自由」を金科玉条にしていますが、今回のような件に関しては口をつぐむのです。
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圧政者を好む米国とそれを擁護する大手メディア(続き)

2017年08月18日 | メディア、ジャーナリズム

(前回からの続き)

以上の歴史は、米国のメディアや政府高官たちによって、いっさい消去され、あるいは粉飾され、愛国主義的な神話に置き換えられつつある。あからさまに独裁者支持の政策を何十年と肯定しながら、彼らはトランプ政権が成立して以来ずっと広報戦略上の神話を築き上げ、それを広めてきた。つまり、トランプ大統領の独裁者支持はいわば斬新な、「米国の高貴な伝統からの逸脱」という見方である。

トランプ以前の米国は世界中で民主主義を支援し、広めることに心をくだき、これを敵視する独裁者を非難してきた-----こう、彼らはくり返し説く。これは、もっともたちの悪い種類の歴史修正主義である。この見方を擁護する人間は誰であれ慙愧の念を感じて当然の、偏狭な愛国主義的プロパガンダである。

独裁者支持の例と同様に、米国のこの種のプロパガンダの例も枚挙にいとまがない。それは、最近急速に数を増してきた。すべてを紹介するには紙幅が足りない。特に影響力を有する例をいくつかかかげるだけでお許しねがおう。

今年2月にニューヨーク・タイムズ紙は論説欄で「何はさておき母国批判」というジーン・カークパトリック女史の言葉-----1984年に民主党議員を非愛国的となじる際に使った-----を冒頭にかかげつつ、トランプ大統領を非難した。
そのプロパガンダ的なたわごとはこうである。
「トランプ氏は、大統領に就任して以降、言論の自由や寛容等の普遍的価値観の擁護者たるアメリカという伝統的な役割にあまり肩入れしていない」。
サウジアラビアやエジプト、チリ、バーレーン、イラン、アルゼンチン、ブラジル、その他米国の支援する独裁者の下で暮らしてきた数多くの国々の一般市民にとっては、なんたる驚きであろう-----まさか「言論の自由や寛容等の普遍的価値観の擁護者たるアメリカという伝統的な役割」-----こんな台詞を聞かされるとは!

そして、おそらくもっとも言語道断な例は、昨日のワシントン・ポスト紙の記事に見出される。ホワイトハウス局長のフィリップ・ラッカー氏が書いたものである。同氏によると、
「少なくとも1970年代以降の米大統領はみな、みずからの行政権限を使って世界各地で人権と民主的価値を擁護してきた」。
さらに、
「トランプ大統領は米国の従来の外交政策から決定的に離反し、独裁的指導者との関係を深めようとしている」。

独裁的指導者との関係を深めることは「米国の従来の外交政策から離反」することなどではさらさらない。にもかかわらず、このプロパガンダ的な嘘は今や、とびきり愛国的なジャーナリストの間で共通認識となっている。彼らは、トランプ政権以前の米国が世界中の抑圧された人々を暴君から解放するのに懸命であったと熱っぽく世界にふれ回るのだ。
ニューヨーク・タイムズ紙の政治担当記者マギー・ハーバーマン女史も、ラッカー氏のこの愛国的な嘘を支持する言葉をツイッターに書きつけている(そして、これは広く共有された)。

(注: 原文サイトには、ここで次のような内容のツイッター画像が貼られています)

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マギー・ハーバーマン
@maggieNYT

トランプ氏は、これまでの大統領ときっぱり袂を分かって、いわゆる民主主義を広めることには基本的にあまり興味がない。@
PhilipRucker
ワシントン・ポスト・コム/政治/トランプ

午前8時8分 - 2017年5月2日

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(トランプ大統領の画像)

トランプ大統領が世界の独裁的指導者を次々と称賛-----人権運動家が懸念

プーチンその他の専制君主に対するトランプ大統領の好意表明は米外交政策における大きな転換

ワシントン・ポスト・コム
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リプライ149 リツイート504 いいね750
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いったいどうすればジャーナリストでありながら信じられるだろう-----トランプ氏の「いわゆる民主主義を広めることにはあまり興味がない」ことが、これまでの大統領と「きっぱり袂を分かって」いる点-----「劇的な転換」-----である、などと。
ところが、これこそ、目下の米国メディアで定番の言い回しなのである。
それは今朝のCNNニュースでもはっきりとうかがわれた。ある番組の一コマで、独裁的な政治指導者をトランプ氏が称えたことは「アメリカの政策の急激な転換」と伝えたのだ。

(注: 原文サイトでは、ここで、CNNニュースの動画が貼られています。表示されている画像の内容は以下の通り。

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[独裁者に対峙する米国の伝統とのトランプ氏の訣別]

暴君に関するトランプ大統領のコメント

金正恩 「頭のいいやつ」
エルドアン 「大いに評価する」
シシ 「卓越した人物」
プーチン 「オバマより優秀」
ドゥテルテ 「打ち解けた会話ができた」

(現在進展中のニュース)

トランプ氏、米国政府のこれまでの政策を急激に転換し、独裁的指導者を称賛

ライブCNN 午前9時6分 東部標準時
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CNNは何十年もの間米国の定番路線であった政策を取り上げ、視聴者にそれを「アメリカの政策の急激な転換」として語る。

このようなあからさまに虚偽のプロパガンダと言えば、民主党屈指の人気議員であるアダム・シフ氏の発言を除くわけにはいかない。同氏は昨日、ツイッターで-----案の定またたく間に拡散した-----大勢の人間を殺害したフィリピンのドゥテルテ大統領をホワイトハウスに招き、米国の高貴な伝統を汚したとしてトランプ大統領を指弾した。

(注: 原文サイトには、ここで次のような内容のツイッター画像が貼られています)

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アダム・シフ
@RepAdamSchiff

往時は、アメリカは、超法規的な殺人を非難し、その実行者をホワイトハウスに招くなどということはなかった。往時というのは103日前のことである。
ツイッター・コム/ポリティコ/~

午後11時24分 - 2017年5月1日

リプライ1480 リツイート11055 いいね19395
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米国は「超法規的な殺人」を好む暴君や専制君主を長年にわたり支援してきたが-----ホワイトハウスで歓待を受けた者さえ大勢いる-----、それだけではない。それどころか、オバマ政権の対テロ戦争の中核的手段が「超法規的な殺人」そのものであった。
同政権は数年にわたって複数のイスラム国でドローン攻撃を実施し、米国籍を有する人間をふくめ、多数の人間を死に至らしめた。彼らはテロ活動との関係を疑われたが、決してその事実が証明されたわけではなかった。つまり、オバマ政権は何千という人間を超法規的に殺害したのである。
超法規的な殺人を好むのがトランプ政権の新機軸だなどと主張できるのは、よっぽど風変わりなジャーナリストだけであろう。

目下の現象は明らかすぎるほど明らかだ。少しでも理性があれば-----米国の歴史についていささかでも知識があれば-----、米国の独裁者支持と礼賛が、トランプ氏の大統領就任をもって始まったなどと信じたりはしないであろう。
ワシントン・ポスト紙は昨日、上記の記事に対する批判に応えて、ラッカー氏の愛国的な文章を修正した。すなわち、「少なくとも1970年代以降の米大統領はみな、少なくとも折にふれ、みずからの行政権限を使って世界各地で人権と民主的価値を擁護してきた」と。「少なくとも折にふれ」という文言を加えたのである。

しかし、この主張は依然としてマヤカシである。米大統領が人権をめぐる状況改善を褒めたたえた場合でさえ、誰がそれを本気で言っていると信じるだろう。人権侵害を非難することは米国が敵対国をたたくために使用する手前勝手な方策にすぎない。それは政府高官でさえ、ときに率直に認めていることである。
たとえば、2013年のワシントン・ポスト紙の記事には、まことに稀有なことに、次のような文章がある。

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人権擁護団体はまた、エチオピアの政治的弾圧について米国政府が口をつぐんでいるとも非難する。同国は東アフリカにおける米国の重要な戦略的パートナーである。

「米国に協力する国はまずあれこれ言われません」。こう、アフリカを専門とする政府高官は認めた(ただし、報復をおそれて匿名を条件に発言)。「一方、そうでない国はあらん限りいたぶられます」。
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ポスト紙は続けて述べる。ブッシュ政権も「同じ路線を採用した」。また、「アフリカについては、オバマ大統領が国家安全保障より民主制に重点を置くことを多くの外交関係者や人権擁護団体がのぞんだけれども、…… それは結局かなわなかった」。実際には「まったく変化がなかったと言ってよろしい」とこの高官は語る。「要するに、ブッシュ政権からオバマ政権へは、ほぼ何の障害もなくスムーズに移行した」。

これが米国の人権擁護の使用法である。つまり、米国の意向におとなしく従わない、非協力的な国を罰するための「いたぶり」の道具として、である。逆に、米国に「協力する」ならば「まずあれこれ言われません」、のぞむならどれほど人権を侵害してもおとがめなしである-----たとえ露骨な支援や資金供与はないとしても。

米国政府が何十年とやり続けてきたこと-----凶悪極まる暴君を支援し褒めたたえること-----を、今、トランプ大統領がやっているからと言って非難する人々は、実際には何が気にくわないのだろうか。
それは、彼らが母国アメリカについて自分自身に必死に言い聞かせている神話をトランプ大統領が切り崩しているからである。
米国が世界中で自由と民主主義の普及につくしていると宣言できることは、彼らの内面的な独白において礎石を成している。ワシントン・ポスト紙のニュース編集室から米国務省の通廊に至るまで、これは、他の国々のふるまいを審判する存在という世界における米国の地位を正当化するために、彼らが日々みずからに言い聞かせているおとぎ話である。

うわっ面をはぎ取ってしまえば-----このおとぎ話を斥けてしまえば-----、きびしい現実がまざまざと姿を現す。彼らが擁護しているのは帝国主義の不法で恣意的な力の行使にほかならない。おとぎ話を排してしまえば、彼らの倫理的な枠組み全体がゆらいでしまう。
彼らが怒っているのは、トランプ大統領が独裁者を愛するからではない。彼らの鑽仰する大統領たちも全員そうしたのである。言うまでもないことながら、キッシンジャー氏をあがめる政治風土では、独裁者を抱擁するのに何の躊躇もない。

彼らが怒っているのはトランプ大統領が独裁者を嫌うふりをするのが下手、もしくは進んでそうしないからである。その結果、彼らが毎度毎度黙認している暴力行為や戦争、圧政、内政干渉、独裁者支援、等には道義的目的があるという建て前が崩れてしまう。

実際のところは、米国が多少なりとも人権や民主主義の擁護者であるという虚構、装いでさえ過剰に言い広められている。上で述べた例(および他の数多くの例)が示すように、大統領をふくむ米国の行政当局者は、これまでドゥテルテ大統領程度の暴君でもおおっぴらに歓待し、褒めたたえてきた。

トランプ大統領が米国本来の土壌から生まれたと思うよりは外国の悪玉の手先であると信じる方が心おだやかでいられる。それと同様に、トランプ氏の圧政者好みがこと新しい現象と信じる方が精神衛生によろしい。しかし、神話を信じれば心平穏であるという事実は、その神話を広めることを正当化しはしない-----とりわけジャーナリストについては。

トランプ以前の大統領は民主主義の普及に努めていた、暴君を支援することは米国の伝統からの「劇的な転換」である、こう、米国メディアは誰彼となく告げる。しかし、これは事実からのあまりに明白な乖離であって、人を仰天させる体のものだ。それは、政府の活動について愛国的なプロパガンダを広めることが米国メディアの主任務であるとすでに考えている人間にとってさえ、なお驚異なのである。


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[補足など]

■文章中でふれられている、ドローン攻撃による「超法規的な殺人」については、その性質や問題が本ブログの以前の回でも言及されています↓

・第三世界はアメリカの兵器テスト場
http://blog.goo.ne.jp/kimahon/e/00fb123d3eb2bba49f10b71c853504c1


・チョムスキー氏の著作に対する奇妙な書評(続き)
http://blog.goo.ne.jp/kimahon/e/9a7349a62d98ba0c24b805d56ea62735


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圧政者を好む米国とそれを擁護する大手メディア

2017年07月28日 | 国際政治

トランプ大統領がフィリピンのドゥテルテ大統領やトルコのエルドアン大統領などの独裁的な元首を褒めたたえているのをリベラル派メディアが疑問視しています。
これらの元首は自由と民主主義を標榜する米国とは相容れないというわけです。
しかし、実際は …… 。

例によって、調査報道を得意とするネット・メディア『インターセプト』から採りました。
書き手は、おなじみのグレン・グリーンウォルド氏です。

タイトルは
Trump’s Support and Praise of Despots Is Central to the U.S. Tradition, Not a Deviation From It
(トランプ大統領の専制君主びいきは米国の伝統からの逸脱どころか伝統そのもの)

やや長いので2回に分けて掲載します。

原文サイトはこちら↓
https://theintercept.com/2017/05/02/trumps-support-and-praise-of-despots-is-central-to-the-u-s-tradition-not-a-deviation-from-it/


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Trump’s Support and Praise of Despots Is Central to the U.S. Tradition, Not a Deviation From It
トランプ大統領の専制君主びいきは米国の伝統からの逸脱どころか伝統そのもの


Glenn Greenwald
グレン・グリーンウォルド

2017年5月3日 2:13 a.m.


少なくとも第二次世界大戦以降、世界で指折りの専制君主を支持することが米外交政策の柱であった。決定的な特質と言っていいかもしれない。米国が支援してきた暴君のタイプは多岐にわたるが、その戦略的な根拠は一貫している。すなわち、反米的な感情が浸透している地域では、民主政体が採用されると、米国の国益に資するどころかそれを阻害する国家元首が登場しがちだからである。

米国の意向にしたがう独裁者を当該国に押しつけたり支援したりすることは、このような不都合な反米感情をがっちり封じ込めるために米国の為政者が昔からずっと好んで使ってき、今もなお使い続けている手口である。この事情はみじんも物議をかもさない。議論に値しない趣きさえ有する。米国の暴君支持は大方、白昼堂々とおこなわれ、一流の政策通や報道機関によって長年の間きっぱりと擁護され、うべなわれてきた。

ワシントン界隈でもっとも愛され、敬意を払われてきた外交政策の第一人者ヘンリー・キッシンジャー氏は、米国の意向に沿うという理由で極悪非道の暴君を歓迎し、下支えしたことにより名声を築いてきた。
その輝かしい経歴のいくつかを、歴史学者のグレッグ・グランディン氏はこう説明している。
キッシンジャー氏は「パキスタンのISI(パキスタン統合情報局)に力をつけさせるとともに、アフガニスタンの不安定化のためにイスラム原理主義を利用するよう彼らをそそのかした」。
「サウジアラビアおよび革命前のイランとの『兵器・オイルマネー引き換え政策』(訳注1)への依存を確立した」。
「南米中でクーデターや『暗殺部隊』を支援した」。
また、キッシンジャー氏は、大規模な民間人殺害をおこなったアルゼンチンの軍事政権を褒めたたえたし、米国の同盟国インドネシアの独裁者であり、20世紀屈指の極悪人と呼ぶべきスハルト氏による大量虐殺の遂行を積極的に幇助した。

(訳注1: 原文は arms-for-petrodollars です。取りあえず『兵器・オイルマネー引き換え政策』としておきました。これは、サウジアラビアなどがアメリカその他に原油を輸出して得た収益金(オイルマネー)を元手に、今度はその国から兵器を購入することです)

(注: 原文サイトでは、ここで、英『ガーディアン』紙の過去記事の画像が貼られています。
記事のタイトルは
「キッシンジャー氏、アルゼンチンの『汚い戦争』を是認」)

また、レーガン大統領の下で国連大使をつとめたジーン・カークパトリック女史は第一級の保守派知識人と考えられている。親欧米派、右派の独裁者をきっぱりと持ち上げたからである。イランのシャー(国王)やニカラグアの軍人独裁者アナスタシオ・ソモサ・ガルシアなど、米国が支援する非情な圧政者に賛辞を惜しまなかった。
「彼らは米国にすこぶる友好的です。子弟その他をわが国の大学に送り込んで教育を受けさせ、国連決議ではわれわれと同じ側につき、たとえ個人的なコスト、政治的なコストを払うことになろうと、つねに米国の国益と立場を支持してくれます」。
こうした次第で、レーガン政権時代の米外交政策は-----それ以前とそれ以後もずっとそうであったように-----、親米派の独裁者、「暗殺部隊」、あるいはテロリストにさえ経済的、軍事的、外交的な支援をおこなうことと了解することができる。

米国の主流派メディアは、米国政府によるこのような独裁者支持の姿勢をおおっぴらに称賛し続けてきた。
アウグスト・ピノチェトは、民主的な選挙によって就任したチリの左派系の大統領を米国が打倒して同国に押しつけた軍人独裁者であるが、その2006年の死去にあたって、ワシントン・ポスト紙は論説欄でカークパトリックとピノチェトの両人を褒めちぎった。
ピノチェト大統領は「凶悪至極で、政府当局の手によって3000を超す人々が殺害され、何万もの人々が拷問を受けた」と書く一方で、「チリに経済的奇跡をもたらしたその自由市場政策」を礼賛したのである。そして、締めくくりにこう記した。ピノチェトと同様に「カークパトリック女史もまた左派陣営から攻撃を受けた。が、今やもう明らかなはずだ。彼女は正しかった」と。

ニューヨーク・タイムズ紙も同様である。2002年に右派のクーデターによってベネズエラの左派大統領ウゴ・チャベス氏が一時的に失脚したとき、同紙の論説はそれを「民主主義の勝利」と評した。
「チャベス大統領の昨日の辞任をもって、ベネズエラの民主政はもはや未来の独裁者におびやかされる心配はなくなった。危険な民衆扇動家である同氏は、軍部が介入した後、著名なビジネス・リーダーに権力を引き渡してから職を辞した」。

[これに関して私が数年前に書いた文章を再掲しておく。

この論説の中でニューヨーク・タイムズ紙は、チャベス大統領の「排除はあくまでもベネズエラ国民が決定したこと]と述べた。ところが、ほどなく-----かつ予想されたことであったが-----、これにはブッシュ政権のネオコン(新保守派)幹部が非常に大きな役割をはたしていたことが明らかになった。
そして、11年後、チャベス大統領が逝去した際、同紙の論説員は「ブッシュ政権が南米における米国の声価をいちじるしく傷つけた」ことを認めた。「チャベス大統領に対する2002年のクーデターの試みをおろかにも称賛した」からである。
しかし、同紙は、クーデター当時、米国の威信失墜を認めなかったことはもちろん、同紙自身がクーデターを賛美したことについてもいっさい口をつぐんでいる。]

(注: 原文サイトでは、ここで、英『ガーディアン』紙の過去記事の画像が貼られています。
記事のタイトルは
「ベネズエラのクーデターにブッシュ政権幹部が関与」)

1977年にカーター大統領はテヘランで開かれたイランのパフラヴィー(パーレビ)国王との公式晩餐会に出席した。同国王は、米CIAが民主的な選挙で選ばれたモサデク首相を放逐した後、米国の支援を受けつつ何十年にもわたって同国に君臨した冷酷な独裁者である。この晩餐会の直前にはカーター政権が国王をホワイトハウスに招いていた。
席上でカーター大統領はこのイランの専制者を祝してグラスをかかげ、次のように述べた。

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両陛下ならびにイラン各界の著名なる指導者の皆様

皆様方のあたたかいもてなし、ならびに、今夕これまでに共にしました愉快な一刻について、短いながら感謝の言葉を申し述べたいと思います。私は何人かの方からたずねられました。ほんの一月かそこら前、私どもは両陛下の訪米という栄誉に浴したばかり。それなのに、なぜこれほど間を置かずに今回の訪問に至ったのか、と。先の訪米の折り、両陛下がお帰りになられました後、私は妻に聞きました。「新年を誰といっしょに過ごしたいと思う?」と。そうしますと妻は「ほかの誰よりもイラン国王、王妃ファラのお二人と」と答えました。そういう次第で、私どもは今回の旅程をととのえ、皆様方との面晤の栄を得たわけであります。
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多数の人間を殺してきたイラン国王に対するカーター大統領の賛辞は、しゃべるにつれて、いよいよきらびやかで追従的なものになった。
「イランは、国王の偉大なるリーダーシップによって、世界で問題をかかえた地域の一つに属しながら安定した孤島となっています。これはまったく陛下の、そしてまた、陛下のリーダーシップの賜物であり、イラン国民が陛下にささげる敬意と称賛と愛の所産であります」。
しかし、それから2年後、国王を崇敬しているとカーター大統領がのたまったその同じ国民は彼を追放し、この独裁者に長年支援と賛辞をささげてきた米国を今に至るも憎んでいるのである。

(注: 原文サイトでは、ここで、『アメリカン・プレジデンシー・プロジェクト』というサイトの画像の一部が貼られています。
タイトルは
「ジミー・カーター
第39代アメリカ合衆国大統領-----1977-1981
カーター大統領、テヘランでイラン国王と晩餐会
1977年12月31日)

世界指折りの悪逆な独裁者に対する米国の肩入れは、冷戦の終了とともに止んだわけではなく、それどころか弱まりさえしなかった。ブッシュ、オバマの両政権とも、これらの独裁者にあいかわらず兵器を供与し、資金を拠出して下支えし、称賛の言葉を呈し続けた。

2009年当時、国務長官であったヒラリー・クリントンは、米国の後押しするエジプトの独裁者についてこう語っている。
「ムバラク夫妻は自分の家族の朋友であると私は心の底から思っています」。
また、エジプト国防相兼軍総司令官アブデルファタフ・サイード・シシ氏が同国初の自由な選挙で成立した政権を打倒したとき、ヒラリーの後任者であるジョン・ケリー氏は、シシ氏を「民主制を回復した」と称えた。
シシ氏はその後いよいよ峻烈で圧政的な傾向を強めたが、オバマ政権はそれに兵器と資金の大盤ぶるまいで応じた。人権侵害で悪名高いバーレーン王国の独裁者に関しても同様の対応であった。

(注: 原文サイトでは、ここで、米『ABCニュース』の過去記事の画像が貼られています。
タイトルは
「国務長官クリントンの2009年の発言:『ムバラク夫妻は自分の家族の朋友であると私は心の底から思っています』
2011年1月31日 ABCニュース・コム)

選挙で民主的に成立したホンジュラスの左派政権に対する2009年の軍事クーデターにおいても、米国は、あからさまな後押しではないにしろ、少なくとも暗黙の承認をあたえた。
そしてその後、ヒラリーのひきいる国務省は、自分たちの支援するクーデター政権が批判者や反政府活動家に対する暗殺計画に従事していたあり余る証拠があるにもかかわらず、それをひたすら否定し続けた。
ワシントン・ポスト紙のカレン・アティアー記者は昨年、「今日のホンジュラスおよびハイチの騒乱と政治的不安定性に関して、[ヒラリーひきいる]米国務省が関与した反民主的な体制転換がいかなる寄与をはたしたか」を探った。記事の中では、ホンジュラスのクーデターを指揮した軍指導者たちを庇護するためにヒラリー国務長官の講じたさまざまな措置が具体的に取り上げられている。

サウジアラビアも忘れてはならない。同国は長い間、地球上で飛びぬけて圧政的な国の一つであり、米国がきわめて重要視する同盟国である。サウジの専制君主に対する米国の入れ込みぶりは、これだけでも、自由と民主主義の普及をめぐる米国の大義名分の綱領をほとんど全否定するに等しい。米歴代政権はこれまでずっとサウジの王政を維持し、強化することに倦むことなく取り組んできたからである。

オバマ大統領も、前任者のブッシュと同様、くり返しサウジの独裁者をホワイトハウスで歓待した。2015年にこの極悪な国王が亡くなったとき、オバマは急遽インド訪問を中断してリヤドに飛び、米国の親密なパートナーである国王のために弔意を表した。ほかにも米国から民主党、共和党双方の名だたる政治家が駆けつけた。
英『ガーディアン』紙は次のように書いている。
「オバマ大統領は、多数の議員をひきいてサウジの新国王との関係を深めるようとする中で、同国の専制君主に追従的な自分の姿勢を釈明せざるを得なかった。ほんの数時間前は、インドで宗教的寛容と女性の権利について講演したばかりだったが」。

国王の死去に際して、オバマ大統領は、批判者の殺害や収監をくり返したこの専制君主をこう評した。
「アブドラ国王の理念は故国では国民の教育および世界とのより深い関わりにささげられていました」。
もっとも、オバマ大統領の弔意の表し方は、英国政府のそれに比べるとまだ穏当だった。英国政府は、アブドラ国王の死を悼んで、すべての国旗を弔意を示す半旗にするよう命じたのである。
とはいえ、サウジの王政をおおっぴらに称揚するのにオバマが二の足を踏むというわけではまったくなかった。

(注: 原文サイトでは、ここで、米政治専門サイト『ポリティコ』の過去記事の画像が貼られています。
タイトルは
『オバマ、アブドラ国王を歓待する』)

要するに、第二次世界大戦以降の米外交政策は-----世界各地で何度となくくり返した膨大な人権侵害行為とは別に-----、民主的な選挙で成立した政権を打倒すること、さらには、残虐な独裁者を支持し、同盟関係を結び、力を貸すこと等、を土台としてきたのである。この行き方は世界のあらゆる地域に適用され、米歴代政権が例外なく奉じてきた行き方であった。この点を認識せずに世界における米国の役割をいささかでも理解することはまず不可能である。

(続く)


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[その他、補足など]

■本文で述べられているパフラヴィー(パーレビ)国王を含む、イランとアメリカの関係については、以下のサイトの文章が参考になります。

イランの核問題とは?  ~アメリカ・イスラエルとの関係を読み取る~
http://ocean-love.seesaa.net/article/382562077.html?seesaa_related=category


■ここでふれられているキッシンジャー氏の航跡については、このブログの以前の回でも話題になっています↓

元政府高官におもねる名門大学
http://blog.goo.ne.jp/kimahon/e/ba9ff3f6850bb44b97779b2ca5d73252


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