CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】〆切本

2016-10-10 18:27:13 | 読書感想文とか読み物レビウー
〆切本  著:夏目漱石 ほか

夏目漱石をはじめ、
様々な作家や漫画家、編集者が、
〆切りに関して書いた、書簡、手紙、エッセーなど
あれこれまとめた本でありました
下手な解釈や解説など入らないで、
ただただ、それらの文章を集めた
文集めいたそれでありまして、
読んでいて、なんというかな、大変面白かったのであります
昨今はやりの業界ものという印象もあるけど
〆切りに追われる人たちの悲喜こもごもが
物凄く伝わってきて、非常に面白かった

はがきや書簡、いわゆる手紙だったものが
やっぱり一等面白いというわけでありまして、
明治や大正の文豪たちの
編集者や、共同著者なんかにあてたものが
まぁ、なんといえばいいのか、
いい意味でも、悪い意味でも言い訳が見事で
正直いって笑えてならないのでありました
美辞麗句ではないんだけども、
流れるように実に旨い文章で、言い訳しているというのが
なんとも、贅沢このうえない面白さを醸しています

個人的には、大好きな夏目漱石の近況を記して、
いかに忙しいかを語りながら、締め切りをなんとかという話も
結構ぐっとくるものがありましたが、
それ以上に、吉川英治の言い訳が面白くて、
まるで吉川作品のままでありながら、なんというか、
女々しいとはいわぬ、ただただ、平身低頭謝っているというのが
大変貴重といえばいいか、面白いのでありました
あと、池波正太郎のも、
完全に先生の小説まんまの文体で言い訳だから
一層に面白かったのであります

そういう、作家のあれこれも楽しく読めながらも、
この〆切りに悩まされた編集者側のものもいくつかあって、
これまた、なんだろうか、
いかにもサラリーマンとして大変なところといえばいいか、
仕事の大変さがにじみでていて
大変よろしい読後感でありました、本当、
こんな仕事絶対やりたくないなぁと思わされる
もう、悪辣なエピソードがてんこ盛りで面白かった
昔の作家は酷いな

と、共通してというか、なんか、
これも一種都市伝説から、そうせざるをえないような
作家は〆切りを守らないほうがよいものを書けるという
信仰めいたものが、様々な人に語られていまして
まぁこれも面白いことこのうえない
仕事で、ちょっとだけ編集系統をやったことがあるので
この〆切りに関する、書き手側のいい加減さには
火をくべて焙りころしたいとまで思うほどの怒りを覚えるんだが
それも含めて、この仕事そのものであるなと
改めて思い知ったりしたのであります

最終的には、どうしても原稿が間に合わず
穴埋め原稿として、言い訳をつらつら書いたものだとか
これは本当に誌面に掲載されていたのか
そのあたりはわからないのでありますけども
作家と編集者との間で繰り広げられる悲喜劇が
なんの説明も、描写もなく
残酷なほど見えて読めるので
大変面白い読書でありました

まぁ、これを笑いながら
仕事の〆切りがまさに迫っているんだが
そんなことは知らないのである


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