よくクイズなどに使われる二つの壊れた時計の話がある。
時計A. 完全に止まっており,ずっと正午を指している。
時計B, 正しい時刻より常に5分遅れている。
さて,どちらが「より正確な」時計だろうか?
常識的には時計Bが時計Aより正確だと感じる。
そもそも,時計Bが常に5分遅れだとわきまえていれば,時計Bが示している時刻に5分加えれば正確な時刻がわかるので,十分実用的である。
一方,時計Aは時計としての役割を全く果たさないので役に立たない。
しかし,次のような考え方もある。
時計Bは決して正しい時刻を指し示さないのに対し,
時計Aは日に二度(0時と12時),実際の時刻と完全に一致する。
一日に一度も正しい時刻を示さない時計と,一日に二度も正しい時刻に一致する時計とを比べたら,「正確な時刻を指すことができる時計の方がより正確である」という意見である。
単に「正確さ」という言葉の意味をどうとらえるかで判断が変わるだけの話であって,別に大したパラドックスというわけではない。
ここで言いたかったのは,Taylor 展開は時計Aのような近似の仕方である,ということである。
f(a+h,b+k) のTaylor展開というのは,点(a,b)の「ある近傍」のみで近似のよさ,すなわち精度が保証されるという近似法である。
ベクトル (h,k) の大きさ(変数の (a,b) からのズレの大きさ)が「ある許容範囲にあるときのみ」Taylor多項式は元の関数のよい近似を与える。
逆に言うと,(h,k) の大きさがその許容範囲を超えたときには近似の精度は保証されないということである。
一般の関数を多項式で近似する方法は何もTaylor展開だけではなく,時計Bのような近似の方法も知られている。
一度ももとの関数の値と一致することはないかもしれないが,(ある範囲の)全ての入力に対して,出力の誤差が例えば 0.01 以下になるような多項式による別の近似法がある。
それは Stone - Weierstrass の定理と呼ばれている。
そして多分「最良近似多項式」というものはこの定理で存在が保証されている多項式を指すのだと思われる。(調べてないけど。)
皆さんの中には,将来「最良近似多項式」のお世話になる人が出るかもしれない。
時計A. 完全に止まっており,ずっと正午を指している。
時計B, 正しい時刻より常に5分遅れている。
さて,どちらが「より正確な」時計だろうか?
常識的には時計Bが時計Aより正確だと感じる。
そもそも,時計Bが常に5分遅れだとわきまえていれば,時計Bが示している時刻に5分加えれば正確な時刻がわかるので,十分実用的である。
一方,時計Aは時計としての役割を全く果たさないので役に立たない。
しかし,次のような考え方もある。
時計Bは決して正しい時刻を指し示さないのに対し,
時計Aは日に二度(0時と12時),実際の時刻と完全に一致する。
一日に一度も正しい時刻を示さない時計と,一日に二度も正しい時刻に一致する時計とを比べたら,「正確な時刻を指すことができる時計の方がより正確である」という意見である。
単に「正確さ」という言葉の意味をどうとらえるかで判断が変わるだけの話であって,別に大したパラドックスというわけではない。
ここで言いたかったのは,Taylor 展開は時計Aのような近似の仕方である,ということである。
f(a+h,b+k) のTaylor展開というのは,点(a,b)の「ある近傍」のみで近似のよさ,すなわち精度が保証されるという近似法である。
ベクトル (h,k) の大きさ(変数の (a,b) からのズレの大きさ)が「ある許容範囲にあるときのみ」Taylor多項式は元の関数のよい近似を与える。
逆に言うと,(h,k) の大きさがその許容範囲を超えたときには近似の精度は保証されないということである。
一般の関数を多項式で近似する方法は何もTaylor展開だけではなく,時計Bのような近似の方法も知られている。
一度ももとの関数の値と一致することはないかもしれないが,(ある範囲の)全ての入力に対して,出力の誤差が例えば 0.01 以下になるような多項式による別の近似法がある。
それは Stone - Weierstrass の定理と呼ばれている。
そして多分「最良近似多項式」というものはこの定理で存在が保証されている多項式を指すのだと思われる。(調べてないけど。)
皆さんの中には,将来「最良近似多項式」のお世話になる人が出るかもしれない。
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