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代案を出そう。 『グローバリゼーション・パラドクス』

2019-05-05 15:02:17 | bookreview
自由貿易とグローバルガバナンスが行き詰った世界で
本書の価値はますます増している。

基点となるアイデアは2つ。

①市場と政府は代替的なものではなく補完的なもの
よりよく機能する市場が欲しいのであれば、より良い政府が必要となる
②経済の繁栄と安定は、労働市場、金融、企業統治、社会福祉など
様々な領域における様々な制度の組み合わせを通じて実現することが可能

ハイパーグローバリゼーションは労働基準、法人税競争、健康/安全基準、
新興国における産業政策など民主的な選択に影響し、国家主権を侵害し、
市井の人々の思いを妨げてしまう。その表出が今の欧米の政治だ。

ハイパーグローバリゼーションと民主主義と国家主権は並立しない。
選択肢は3つしかない。
国際的な取引費用を最小化する代わりに民主主義を制限するか、
グローバリゼーションを制限して民主主義的な正統性を確立するか
(第二次大戦後のブレトンウッズの妥協がそれで、しばらく非常に機能した)、
国家主権を犠牲にしてグローバル民主主義に向かうか。

著者の結論は明快で、「グローバルな規制が機能する範囲は、
望ましいグローバリゼーションの範囲に限定される」ことが望ましい。

資本主義3.0をデザインするにあたり、新しいグローバリゼーションの指針は7つ。
1.市場は統治システムに深く埋め込まれるべきだ
2.民主統治と政治共同体はほとんどが国民国家として組織されており、今後とも消えそうにない
3.繁栄に「唯一の道」はない
4.それぞれの国に独自の社会体制、規制、制度を守る権利がある
5.自国の制度を他国に押し付けるべきではない
6.国際経済制度の目的は、国によって異なる制度の間に交通ルールを制定することである
7.非民主的国家は、民主国家による国際経済秩序において同じ権利や特権を享受できない

「健全で、持続可能な世界経済を可能にするには、各国が自らの未来を決める、
民主主義のための余地を残さなければならない。」

民主国家の主権者である国民は、良き社会を自らデザインし、統治せねばならない。
それぞれの、政治が大事だ。経済学はそのためにある。