生涯を完結させるまでに歌いたい歌、最近始めたヴァイオリンとフルートはどこまで演奏できるようになるか、と時々ワンコ

死は人生の終末ではない。 生涯の完成である。(ルターの言葉)
声楽とヴァイオリン、クラシック音楽、時々ワンコの話。

宮崎謙一 日本音響学会誌 69巻 10号 2013年 pp.562-569 解説 絶対音感を巡る誤解

2015-03-31 23:54:51 | 論文・資料紹介、書評
 一部抜粋して要約させて頂きます。と言うよりも印象に残る文言を抜き出しただけと言ったほうが近いかもしれません。

 英語圏では絶対音感のことを perfect pitch と言うが、学術的にはabsolute pitchと言う方が正しい。perfectという語には完璧なという意味があるが、absoluteは単に他のものと比較しないでというだけの意味。絶対音感と言うよりも絶対音高徒言うべきではないか。

 中国、日本では音楽家であれば絶対音感の持ち主が多いが、ヨーロッパでは音楽家であっても絶対音感の持ち主は非常に少ない。音楽では、同時に鳴り響くピッチや前後につながるピッチの間の関係(相対音高)を認知することや、それらの関係が組織づけられるやり方(和声、調性)を把握することが本質的に重要である。従って単音のピッチをばらばらに把握する能力である絶対音感は、音楽的には何の意味もないと言うことができるだろう。

 ここまで主張されてしまうと、絶対音感はないは相対音感も怪しい私からすれば、やはり絶対音感の持ち主であれば視唱や聴音だって楽に出来てしまうのではないかと思ってしまうのですが、如何でしょうか?

 確かにピアニストで絶対音感は持っているけれど歌は下手と言う人はいるようですね。私自身も声楽技術が向上してくると同時により正確な音程で歌える様になって来ている実感はありますし、更にはそれと同時に他人の歌唱を聞いていて音程の甘さが気になるようになって来ています。

 絶対音感を身につけるには臨界期があって、それを過ぎてしまうといくら訓練しても身につかない、ということは多くの方がご存知のことと思います。小さい内(5歳ぐらいまで?)に訓練して身につける能力と言うイメージだと思うのですが、出典は失念してしまいましたが、赤ん坊なら誰でも、100人が100人、絶対音感を持っていて、訓練して定着させないと成長につれて失われてしまうと考えたほうが実態に近いという学術的な報告があったように記憶しています。

 それから共感覚と言って音高と同時に色が見えるという人がいるそうです。有名なところではメシアンとかスクリャービンとか。日本人でも絶対音感と同時に色が見える人が結構いるそうなんですが、中にはメシアンやスクリャーピンの持っている共感覚とは違うのではないかと言う例もありそうです。幼児に絶対音感を付けると謳っている大手の音楽教室で、キィボードの白鍵黒鍵を色分けしているところがあるそうです。その音楽教室で絶対音感を身につけた人は、その音楽教室で使っていた色分けされたキィボードの色と音高とを関連付けて記憶していることが多いそうです。

 私ごときの中途半端な音感の持ち主であっても、音感は記憶に関係しているのではないかと言う思いを持ってはいます。

 さて、宮崎謙一氏の論文に戻ると、「絶対音感がある音楽学生は様々に異なる高さに移調された音程やメロディを絶対音感にたよって聴く傾向があり、絶対音感がない音楽学生に比べて課題の遂行成績が悪くなる場合があることが明らかになった。」と記載されています。大部の本格的な論文ではなく解説と言うことで簡潔に要約されていますが、専門家が執筆した記事ですので、興味のある方は是非私ごときがつまみ食いしたブログではなく、「絶対音感を巡る誤解」をお読みいただければと思います。面白いです。

Lili Boulanger  Quatre Melodies: Attente  Reflets Le Retour  Dans l'immense tristesse

2015-03-30 22:28:09 | リリー・ブーランジェ
 リリ・ブーランジェ歌曲集というCDに、歌曲集「空の開けたところ」とカップリングされているのがこの「4つの歌」ですが、残念ながらペトルッチ(IMSLP)に楽譜は公開されてなく、頼みの梅丘歌曲会館にも取り上げられていません。Amazon.com、Amazon.uk、さらに読めないのを承知でAmazon.frまで楽譜が販売されていないか探してみましたが見つかりません。

 動画サイトで検索してみると、4曲のうちの1曲目から3曲目までは音源がアップされているのを確認しました。私が購入したCDを含め全てソプラノと思われる女声が歌っています。調性音楽の範疇に納まりつつも緊張感の強い和声が其処かしこで何気なく鳴っています。自己の存在を主張しすぎない控えめなピアノですが、私にはリリ・ブーランジェらしさ、リリの個性・アイデンティティを感じます。何れも静かな穏やかな曲でありながら静かな緊張感があり、リリ・ブーランジェらしい浮遊感を感じます。

 音源以外に情報が無いので、これ以上コメントすることがありません。せめてそれぞれの曲のタイトルの和訳を載せておきましょう。

 Attente=待つこと Reflets=反射 Le Retour=復帰 Dans l'immense tristesse=大きな悲しみ

 楽譜さえ入手できれば自分でも歌って見たいと思っています。何とか楽譜を入手できないか今後もトライし続けます。

オペラサロントナカイ主催 オペラハイライトシリーズVol.10  ビゼー  《 カルメン 》 ハイライト

2015-03-29 23:10:10 | 聴いて来ました
 先日、オペラサロントナカイ主催のビゼー 《 カルメン 》ハイライトを聴いて観て食べて飲んで来ました。会場はサン・ミケーレというイタリアレストラン。ビルの1フロアのため天井は特に高くも無く、音響反射板などがあるわけでもなく、窓際にフルコンサートでもなくコンパクトでもないグランドピアノがあるという環境でした。カルメン巌淵真理、ドン・ホセ村上公太、エスカミーリョ野村光洋、ミカエラ神田沙央理、ピアノ村田千晶。これまでドリンク付とか演奏の合間にスィーツが出る程度のコンサートの経験はありますが、イタリアンとは言えフルコースの料理を食べながらオペラハイライトを聞くというのは今回が初めてでした。ウィークデーであったため、会社を定時に退社して会場に着いたときは開場10分後開演20分前でしたが、既に結構なお客さんが着席されていて料理に取り組んでいるところでした。その後も続々とお客さんが入場して開演10分前にはほぼ満席、家族・友人・知人か仕事関係かまでは判りませんが、殆どのお客さんがグループで、シルバーと言いましょうか、年齢層の高い方が多かったと思います。

 いよいよ開演時間になって、出演者の口火を切ってカルメンのハバネラから始まります。ピアノ前奏が流れ出しても食器の音などテーブルノイズが聞えていましたが、歌が始まると1分もしないうちにテーブルノイズが途絶え、観客が聞き入っているのがわかります。今回の歌手は4名が4名とも美声の持ち主で、初めの頃こそ時々瞬間的に日本人本人の存在が見え聞える時もありましたが、それぞれの役になりきっています。大ホールの公演に比べれば声を張り上げる必要はないですし、舞台メイクではなくナチュラルメイクで顔の表情が良く判りますが、目線の動きだけで役の舞台上での動きを彷彿とさせる曲に対する理解とそれを表す表現力の持ち主ばかりですね。限られた狭いスペースのなかで出来る限りの演技もされて、男声は燕尾服女声はドレス姿でしたが、軍服姿のドン・ホセ、闘牛士姿のエスカミーリョの姿が見えました。家族に連れてこられたであろう小学生ぐらいの女の子がいましたが、その子も歌い手の動きに合わせて体を動かしていたので、完全に引き込まれていたと思います。

 歌い手と聞き手が同じ高さで歌い聞くコンサートって良いものだと以前から思っていましたが、今回その思いをあらためて強くしました。大ホールでの演奏会だと演奏中はステージの上は明るいですが観客席の照明は落としますよね。そうするとステージの上からはお客様の表情は判り難くなります。全体の雰囲気や手応えは何となくわかりますが、ステージ上と客席との距離は離れていますよね。今回の様に同じ高さの上で、一番前のお客さんとは手を伸ばせば届く距離で、一人ひとりの聴衆とアイコンタクトをとりながら歌える。そしてきちんとした技術と曲に対する理解があれば、伝わってこないわけがありません。ものすごく充実した一時を過ごすことが出来ました。大ホールに大勢の聴衆を集めてのコンサートが催されるようになったのは近代市民革命後の社会であって、それ以前は支配階級のみが自らのためだけにお抱え演奏家に音楽を奏でさせていた時代が長く続いていたわけです。その良し悪しはともかく、そのようなクラシック音楽が生まれ育ってきたころのスタイルに近いのが、今回の様なディナーショー的なコンサートだとあらためて思った次第です。演奏がつまらなければ食事を愉しんでもよし、会話を愉しんでもよし。演奏する側は自らの演奏で聞き手の心をつかんでやるぞと言う挑戦。ここに真剣勝負があるからこそ、素晴らしい演奏が素晴らしい料理とお互いを高めあい、料理や美酒があってこそなおそれを凌駕する演奏こそが主役として光り輝く。この様な営みこそが聞き手も演奏する側も鍛えるのではないかと思った次第。

 ちなみに料理もハウスワインも、デザートのスイーツとコーヒーも美味しゅう御座いました。

らららクラシック  もう一度みたいBest10

2015-03-28 23:17:37 | その他
 年度の変わり目ということでしょうか、私のお気に入りの番組であるNHK教育の「らららクラシック」でこれまでの一年分なのか半年分なのかは判りませんが、過去の放送分からもう一度観たい(聴きたい)曲の人気投票の結果を放送していました。番組のHPで再確認すると

  1位 ラフマニノフ     ヴォカリーズ
  2位 パッヘルベル     カノン
  3位 ラフマニノフ     ピアノ協奏曲第2番
  4位 サン・サーンス    白鳥
  5位 ブラームス      ハンガリー舞曲
  6位 リスト        ラ・カンパネルラ
  7位 ボロディン      だったん人の踊り
  8位 ドビュッシー     月の光
  9位 マスカーニ      カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲
 10位 シューマン      トロイメライ

という結果でした。

 2位のパッヘルベルですが、今から300年前に生きた人とのことでした。300年の時の経過を経て今もなお人気を保っているカノン。ある意味十分すぎるほど手垢の付いた曲と言うこともできると思いますが、それでも聴くたびに素直に感動できる名曲ですよね。さてMCの石田衣良氏も言っていましたが、意外なことに1位だけが器楽曲ではないラフマニノフのヴォカリーズなんですよね。人類にとって音楽の起源は声楽に始まりその後器楽に展開していったと思っています。そういう点では2位から10位が全て器楽作品であるのに第一位が歌曲作品であることもある意味納得出来るように思います。ところがその1位の声楽曲が歌詞のないヴォカリーズであることにもう一度考え込んでしまいます。歌詞のある声楽曲ではどうしても歌詞の内容によって制限される範囲が生じてしまいます。ところが歌詞の無いヴォカリーズでは聞き手の想像力が無限に広がります。ヴォカリーズだからこそ1位になったとも思えます。

 歌詞のある歌を歌う場合、オペラのアリアであっても歌曲であっても、歌詞に歌われている世界を再構築するように歌います。歌詞を分析して、あるいは曲の構成なども分析して作曲家が歌い手にどのように歌わせたいのかまで解釈して歌おうとします。聞き手により具体的なイメージが伝わることを目指します。ところがそれが唯一のアプローチではないということなのでしょうね。作品の個別的な側面のイメージをより具体的に構築することももちろん重要ですが、更に普遍性に通じる道の存在を示唆することでより高いレベルでの感動が得られるということなのでしょう。自らの意思で音楽を聞こうとする人にとっては、具体的なイメージを提示されるだけよりも、自らの想像力を働かせて音楽を受け止めることで得られるより高い感動を求めていると言えるのではないでしょうか。具体性と普遍性、相反する特性のようにも思われますが、表現するものとしては具体性と普遍性・抽象性を同時に表現する演奏を追及したいと思います。

如何にしてロシア歌曲にアプローチするか

2015-03-27 23:20:40 | より良く歌うために
 中学・高校時代、定期試験の直前になると小説がやけに読みたくなることってありませんでした? 6月本番の「リゴレット」の練習が始まって、まだまだ絶対的に練習不足であることを痛感しているので、時間があれば少しでも「リゴレット」の練習に充てようとしています。そうすると逆に「リゴレット」以外の曲を歌いたくなる自分が居ます。また年度末で来週には新年度が始まります。以前から聞いているNHKのラジオ語学講座も旧年度分が終り、新たに新年度の番組がスタートします。ということで6月の「リゴレット」が終わったらシューマンの「詩人の恋」の後半を仕上げる作業にかかることになりますが、同時にロシア歌曲を実際に歌える様にしたいとも思っています。具体的にはリムスキー=コルサコフの「八行詩」を考えています。いずれこんな日が来た時のために丸三年NHKのラジオ語学講座「まいにちロシア語」を聞き続けて来ました。そのおかげでロシア語特有の文法用語や、アクセントのないaはoと発音するなど、幾つかの約束事は判る様になってきています。ところがラジオ講座録音を携帯音楽プレーヤーで聞いているだけでは全くロシア語を読めるようにはなっていません。

 ということで、ロシア歌曲を教えてくれる声楽の先生を探しました。日本国内に何人かいるのは確かです。しかしフランス歌曲を教えてもらえる先生と比較しても、ロシア歌曲を教えてくれる先生ははるかに少ないようです。私が住んでいる市内にもいらっしゃるようですが少々通い難いようなのでまだ直接のコンタクトはとっていません。そこで次善の策として、歌詞が読めさえすれば良いのだからロシア歌曲の先生ではなく、単なるロシア語の先生、あるいはカルチャースクール等でのロシア語講座を受けてみようと思いました。ところが会社勤めの身が通える土日に開講しているロシア語講座は殆ど見当たりません。ロシア語学院に資料請求したりしましたが、なかなか良いところが見つかりません。

 そこで兎に角キリル文字を読み書き出来るようにしようと思い立ち、適当な教材が無いか探しました。「ロシア語練習帳」という様なものもあるようですが、ネットで購入すると本体価格よりも送料が高かったりするようで今一つ購入に踏み切れません。色々探しているうちに実質的にこれが良いだろうと思うものを見つけました。JICA(国際協力機構)が新たにロシア語圏に派遣する隊員向けの教育資料の様です。

 「事前学習補助教材(ロシア語)」と「ロシア語文字練習帳」です。”http://www.jica.gojp/volunteer/qualifier/pdf/russia1.pdf”と”http://www.jica.gojp/volunteer/qualifier/pdf/russia2.pdf”でダウンロードできます。まずはこの二つのファイルをSONYのDPT-S1に格納しておいて文字の練習をするところから始めてみましょう。この様なやり方でキリル文字(ロシア語文字)の練習をするにはDPT-S1はもってこいですね。声を出せない状況で時間があるときはせっせと練習してみようと思っています。