生涯を完結させるまでに歌いたい歌、最近始めたヴァイオリンとフルートはどこまで演奏できるようになるか、と時々ワンコ

死は人生の終末ではない。 生涯の完成である。(ルターの言葉)
声楽とヴァイオリン、クラシック音楽、時々ワンコの話。

Milhaud Melodies Tristesses ミヨー 歌曲集 悲しみ

2016-07-22 22:47:52 | ミヨー

 トーマス・ハンプソンのCDに収録されている曲、特にシューマンの歌曲にあらためて刺さっていたところですが、大部前にネット数版最大手のサイトから注文していたCDが海の向こうから届きました。フランス六人組の一人、ダリウス・ミヨーの「歌曲集(悲しみ)」です。全43曲と収録曲数が多いですが、言い換えれば1曲の演奏時間が短いとも言えます。第1曲目は「Prelude」とのタイトルがあるだけで1分45秒の演奏時間の半分ぐらいはピアノの前奏です。これが昨日紹介したシューマンの作品40「母親の夢」と曲想が良く似ています。シューマンの「母親の夢」の方は、ピアノパートの右手はアルペジオを左手はオブリガートをそれぞれ単音で弾いていますが、ミヨーの「Prelude」は右手が重音を弾きつつアルペジオを進行させています。

 ペトルッチ(IMSLP)のサイトでミヨーの公開されている楽譜を探してみました。声楽曲らしい作品は全て開いてみましたが、「Prelude」という作品は見当たりませんでした。ネット最大手の動画サイトで検索しても、{Milhaud}×{Prelude}ではヒットしませんでした。と言うことで紹介しておきながらミヨーの「Prelude」を聴いていただくには「Milhaud  Melodies  Tristesses」というCDを購入していただくしかないようです。このCDは全曲バリトンのJean-Francois Gardeil の歌唱によるもので、甲高い声を好まないフランス人好みの柔らかく倍音に溢れた男声中・低声で、アヴァンギャルドなミヨーの歌曲を耳障り良く聴衆に届けてくれます。ベル・エポック以降のフランス歌曲が嫌いでない方には購入しても決して後悔しないとお奨めできるアルバムです。

 ミヨーとシューマンとを比較すると、間違いなく共通する何かがあります。ただしシューマンはやはりロマン派音楽の範疇にいながらロマン派音楽の限界を越えようとしていたという印象ですが、ミヨーは既にロマン派の枠組みから逸脱しているとは言えるでしょう。しかしそのミヨーであっても、少なくともこのCDに収録された範囲では、ロマン派音楽を否定することを第一義に置いていた訳ではなく、ロマン派音楽の技法とは本質的に異なる技法でロマン派音楽に繋がる完成度を追求していたように思います。

 暫くはトーマス・ハンプソンのCDが教えてくれたシューマンの歌曲の世界と、Jean-Francois Gardeil が教えてくれたミヨーの歌曲の世界について、その共通点と相違点等に思いをはせつつ、特にミヨーの作品の楽譜が入手できるかどうか、種々検討していこうと思っています。


Milhaud  Poems Juifs  Chant de Laboureur ミヨー  歌曲集「ユダヤ人の詩」作品34-3  「労働者の歌」

2015-03-16 22:05:13 | ミヨー
 最近ホロストフスキーのロシア歌曲のCDばかり聴き込んでいました。そうするとホロストフスキーの声にも飽きてくるもので久しぶりにミヨーのCDを聴いて見ました。そうすると以前に聞いたミヨーの歌曲が自分の中でちょうど良く咀嚼され、ホロストフスキーのロシア歌曲によって完全にリセット・イニシャライズされて耳に入って来ました。楽しいですね、聴いていてウキウキしてきます。1月25日にブログに記したその同じCDです。3つの歌曲集、「アリッサ」作品9、「愛の歌」作品409、「ユダヤ人の詩」作品34が収録されていますが、特に「ユダヤ人の詩」にもっともインパクトを受けました。全8曲からなりますが第3曲の「労働者の詩」が最もふるっていますね。

 梅丘歌曲会館に「ユダヤ人の詩」全曲の邦訳が公開されていて、「労働者の歌」は労働者と言うよりも農民を歌っているとのことです。あらためてペトルッチ(IMSLP)のサイトを確認すると前回見逃していたのか、今回までに新しく公開されたのかはわかりませんが、「ユダヤ人の詩」の楽譜が公開されています。ピアノの伴奏パターンでA、B、Cに分けられ、中間部では複符点の厳しく弾むリズム、後部は左手が四分音符で5度の跳躍を繰り返し右手は符点のリズムで弾んでいる行進曲風になっていますが、それが四分の五拍子になっているところがミヨーらしいと言えるのでしょうか。

 動画サイトでも「Chant de Laboureur」で検索するだけでもヒットします。ノイズも出て来ますので、「Milhaud」も掛けた方が良いと思います。ただ「Milhaud」も掛けてもアップされている音源自体が少ないようです。

Darius Milhaud Alissa, L'Amour Chante, Poems Juifs  ミヨー アリッサ 愛の歌 ユダヤ人の詩

2015-01-25 23:54:01 | ミヨー
 フランス6人組の一人であるダリウス・ミヨーの歌曲を集めたCDがやっと届きました。8曲からなる作品番号9の「アリッサ」、9曲からなる作品番号409の「愛の歌」、8曲からなる作品番号34の「ユダヤ人の詩」です。残念ながらペトルッチ(IMSLP)のサイトではこれらの楽譜は公開されていません。歌詞だけでも確認したいと思って梅丘歌曲会館のサイトを見に行くと「ユダヤ人の詩」は収録されていました。

 いずれの曲も完全な無調音楽ではないものの、かなり現代音楽的な味付けの曲です。自由奔放とか、独特の浮遊感と言うような言葉が浮かんできます。古典的な調性感からなるべく遠ざかろうとしている意志が感じられると共に、フランス歌曲らしく詩を語るニュアンスにも溢れています。イタリア歌曲ではなくドイツリートとも全く違った、アヴァンギャルドという言葉が最も似合う近・現代的なフランス歌曲を聞いていると、自分でも歌いたくなります。少し前までは調性感の希薄な曲はとても自分では歌えないと思っていましたが、習うより慣れろで、歌える様になるまで繰り返し練習すれば時間がかかっても何時かは歌える様になると考えるようになりました。歌える様になるのが先か自分の寿命が尽きるのが先か、本当に歌いたい歌であれば歌える様になるまでの練習だって辛いわけはありません。問題は楽譜を入手できるかどうかだけ。

 とは言え、どのような場で歌うかというのも問題ですね。普通の声楽教室門下発表会の様なところでは一人だけ浮いてしまうのは間違いないでしょうね。むしろジャズのライブで歌った方がウケが良いかもしれません。



今後の予定です。

 ・5月31日 声楽家団体横浜ピッコロ第8回定期演奏会
 ・6月10日 市民オペラ「リゴレット」合唱参加
 ・6月11日 市民オペラ「リゴレット」マルッロ

Darius Milhaud  Symphonie No.3 Te Deum Op.271  ミヨー 交響曲第3番 テ・デウム 作品271

2014-10-24 22:04:05 | ミヨー
 フランス歌曲を自ら歌うようになって、フランス音楽の作曲家の作品をなるべく多く聞くように努力しています。器楽作品は動画サイトで色々聞くことができますが、声楽作品となるとなかなか音源が見つからない作曲家もいます。フランス6人組の紅一点タイユフュールとか、今日取り上げるミヨーとか。  オークションサイトで見つけたCDがミヨーの交響曲第3番(とカップリングで第2番)でした。テ・デウムと言う標題が付いていたのでもしかしてと思って調べてみると合唱付きです。Wikipedia日本語版にも独立した項目として収録されているので、それなりに知られている作品と思われます。全4楽章で、合唱が入るのは2楽章と4楽章のみ、2楽章はヴィカリーズのみで歌詞はなし、4楽章でテ・デウムが歌われます。

 バーゼル放送シンフォニーオーケストラ&バーゼル劇場合唱団による1997年の録音です。1楽章はややスネアドラム(小太鼓)が元気良すぎの感がありますが、軽快でフランスものらしく管楽器が賑やかです。2楽章になるといつの間にか合唱のヴォカリーズが入って何やら神秘的な感じです。現代音楽アレルギーの人にアレルギーを感じさせない程度に現代音楽的な、神秘的な浮遊感を感じます。ただ、若干合唱のピッチが決まりきっていないところがあり、浮遊している積りでいると落っこちてしまいそうになります。まあ、でもなかなか良い感じです。3楽章はスケルツォ的で終楽章の前に肩の凝りをほぐしておこうと言うことでしょうか。吹奏楽曲も得意なミヨーらしく管楽器が色々スパイスを効かしてくれます。

 さて、いよいよ神に感謝し賛美するテ・デウムを高らかに歌いあげる4楽章ですが、非常に重心が高いです。高音域の音が溢れているにも関わらず低音域の音が寂しいので、甲高くややもすると耳障りに感じてしまいます。そして止めが合唱のヴィブラートの深さ(幅)です。私にとって聞くに堪えないレベルに限りなく近い深い(幅の広い)ヴィブラートです。1997年と言えばピリオド奏法も出てきていた頃ではないかと思うのですが、これほど深いヴィブラートを作曲家自身は意図していたのでしょうか????? ということで、ミヨーの音楽は現時点で私にとっては咀嚼できていません。ミヨーは歌曲も残しているようなので、次こそはミヨーの歌曲を入手してじっくりと味わってみたいと思っています。