あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

新潮版「源氏物語七」を読んで

2018-01-22 11:07:29 | Weblog


照る日曇る日 第1028回



光源氏死してのちおそらく紫式部はこの物語は放擲したいと願ったのでしょうが、パトロンの藤原道長が「もそっと話を長引かせよ。ここで止めたら一条天皇が娘彰子の寝所にやってこなくなるじゃんか」というて脅迫したので、仕方なく続編を無理矢理でっちあげたのでしょう。

本巻でのメーンエベンターは、源氏の孫子の世代に当たる薫や匂宮ですが、どう見ても小物ですし、彼らにからむヒロインたち、大君、中の君、浮舟も、かつての源氏の恋人たちに比べれば一様に地味でくすんでいる。

彼らがしでかすことだって、基本的には前篇と同じですから、既視感の漂い方も半端なものではない。にもかかわらず同工異曲の随所にさまざまなバリアントを施して宇治十帖を健気に書きつづけた作家根性は、見上げたものと評すべきでせう。

それにしても薫選手は、後からそれほど後悔するのなら、どうしてせっかく大君が段取りしてくれた絶好のチャンスに、据え膳の中の君のをぱっくり食べておかなかったのでしょうか。まさに後悔先に立たず、でありますですね。

草食系のインテリゲンチャンと体育会系の肉食男匂宮との対比が鮮やかですが、これも源氏が柏木に煮え湯を飲まされた挿話の繰り返し。しかしここでは因果応報、その柏木の息子、薫が、ものの見事に復讐されているのですね。


 ベルリンフィルは名オケなれど目障りなビオラの猪八戒なんとかしてくれえ 蝶人


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