第5回 「銀婚式/銀婚式を迎えた夫の感謝スピーチ」
蝶人狂言綺語輯&バガテル―そんな私のここだけの話 op. 263
テーマ=生涯のパートナーである妻への感謝を柱に
今日は私ども夫婦のためにこんな素敵な会を開いて頂きまして、まことにありがとうございます。
*1家内はどうか分かりませんが,ふたりがいっしょになってから25年、銀婚式おめでとうと言われてもあまり実感がなくて困ります。
*2昨日も今日のあいさつのために鉛筆なめなめ、家内に「光陰矢の如し」とか「歳月人を待たず」という古い諺はこういう席で使うためにあるのかなあ、と申しましたら、家内が「あなたいまどきそんな古めかしい死語を持ち出したら、若い人には何のことやら分からないわよ。下手なあいさつでお客様を退屈させるよりは、あなたの“おはこ”の美空ひばりの『川の流れのように』でも歌ってごまかしなさいよ」とアドバイスしてくれましたが、いくらなんでもそういう訳にも参りますまい。
*3思わず知らず家内の話をしてしまいましたが、私としては今日の銀婚式を迎えるに当って、まず感謝を捧げたいのは、最愛の、と申しますか、最強の、といいますか、ともかく生涯の相棒であり、ベストパートナーであります私の家内でございます。
私は、いわゆる猛烈サラリーマンのひとりでありました。折角の休日だというのに会社に出かけて仕事をする。家庭サービスなど一度もなし。家内を海外旅行はおろか国内の温泉旅行にも連れて行ったことなし。
あまりにも自己本位の亭主関白でありましたが、そんな私に文句も言わず、本当は山ほどあったのでしょうが、そこをグットこらえて結婚以来25年間黙って付いてきてくれました。改めて礼を言います。香代子、本当にありがとう。
家内は、私が結核で入院した時もずっと病院に寝泊りして献身的に看病してくれました。そのお陰で今日ただいまの私があると考えております。
*4こんなことを言うのはとても恥ずかしいのですが、少なくとも私は、もう一度生まれ替わってきても、また家内といっしょに暮らしたいと思っております。
*5それから、私ども老夫婦を長きにわたって世話してくれている、長男の道夫とみどりさん。いつもいつも細やかな気配り、暖かい心遣いを本当にありがとう。
私もこの年になって足腰が弱ってきたのですが、特にみどりさんにはかゆい所に手が届くようにきめ細かく介護して頂いて、心から感謝しています。
どうも本日は皆さんありがとう。
○スピーチのポイント
1) あまり緊張せずに「ざっくばらんな語り」から入っていくと実感とかけ離れずに自分の言いたいことが言えるでしょう。
2) “楽屋ネタを公開する”という型破りの手法です。
3) ここからが本論。妻の献身への感謝が主題なので真正面からのアプローチはもちろん、搦め手からのアプローチも交えて多角的な展開を図ります。
4) ここがスピーチのハイライト。晴の舞台でこんなきざなせりふを吐いてもいいじゃないか。
5) 世話になった人々への感謝も忘れずに。
「人類は宇宙へ出ないと未来はない」とホーキング博士語れり 蝶人