マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

クラッシュ

2008-09-17 14:51:43 | 映画ーDVD
ークラッシューCRASH
2004年 アメリカ
ポール・ハギス監督 サンドラ・ブロック(ジーン)ドン・チードル(グラハム)マット・ディロン(ライアン巡査)ジェニファー・エスポジート(リア)ウィリアム・フィクトナー(フラナガン)ブレンダン・フレイザー(リック)テレンス・ハワード(キャメロン)クリス・“リュダクリス”・ブリッジス(アンソニー)タンディ・ニュートン(クリスティン)ライアン・フィリップ(ハンセン巡査)ラレンズ・テイト(ピーター)ノーナ・ゲイ(カレン)マイケル・ペーニャ(ダニエル)ロレッタ・ディヴァイン(シャニクア)ショーン・トーブ(ファハド)ビヴァリー・トッド(グラハムの母)キース・デヴィッド(ディクソン警部補)バハー・スーメク(ドリ)トニー・ダンザ(フレッド)

【解説】
ロスのハイウェイで起きた交通事故をきっかけに、さまざまな人種、階層、職業の人々の人生が連鎖反応を起こすヒューマンドラマ。脚本に惚れ込んだサンドラ・ブロックや、ドン・チードル、マット・ディロンら豪華キャストが、運命に翻弄(ほんろう)される現代人の怒りや孤独や悲しみ、喜びや救いを見事に表現する。『ミリオンダラー・ベイビー』の製作と脚本でアカデミー賞にノミネートされたポール・ハギス監督による珠玉の名作。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
クリスマス間近のロサンゼルス。黒人刑事のグラハム(ドン・チードル)は、相棒であり恋人でもあるスペイン系のリア(ジェニファー・エスポジト)と追突事故に巻き込まれる。彼は偶然事故現場近くで発見された黒人男性の死体に引き付けられる……。(シネマトゥデイ)

【感想】
劇場で見て、とても感動して、そのあとアカデミー賞作品賞を獲ったことを知り、当然だなあと思った作品。
また、見直すと、さらに見えて来るものがありました。

主人公が誰というのではない、群像劇。
脚本が緻密に計算されて、ひとつのクラッシュ事故を中心に、人々の物語が濃密に積み重ねられていきます。

登場人物はみんなとても複雑で、一筋縄ではいかない人たちばかり。だから、その行く末も予測できません。

アメリカロサンゼルス、単純に人種差別とか偏見とか言ってしまえない複雑な社会に生きている人々の物語です。数多くの人種と、その人々の複雑な歴史、それに銃や暴力が人の心をもてあそぶように絡み合って、人々の思いが交錯し、疑心暗鬼を生み、ふれあえない町となってしまっています。

例えば、ライアン巡査(マット・ディロン)。

人種差別主義者の嫌みな警官ですが、家に帰れば、父親の介護をする孝行息子です。
また、事故を前にすると、自分の命も顧みず、人を助ける使命感も持っています。

 助けられたのはキャメロン(テレンス・ハワード)の妻クリスティン(タンディ・ニュートン)

例えば、グラハム(ドン・チードル)、


腕利きの刑事ですが、ジャンキーの母、不良で行方不明の弟がアキレス腱。
巨悪にも目をつぶらざるを得ないのです。

黒人ながら、敏腕プロデューサーとして、美人の妻クリスティン(タンディ・ニュートン)とセレブな暮らしをしているキャメロン(テレンス・ハワード)ですが、一皮むけば、人種差別に怯えなければならない、屈辱の自分がいます。

エリート検事(ブレンダン・フレイザー)の妻のジーン(サンドラ・ブロック)も、怪我をして、誰も助けてくれない状態になってやっと、自分のいらだちの原因が孤独にあるわかり、いつも冷たく当たっていた家政婦さんの優しさに、ようやく気付くのでした。

一番感動したのは、鍵屋のダニエルのエピソード。
見かけは、入れ墨だらけの黒人のダニエル。
ジーンの家では、鍵を修理しても「明日には変えさせて、あんなギャングに直させたら、明日には合鍵が町中に出回ってしまう」と言われてしまいます。
それでも言い返しもせず、仕事を終えて立ち去るダニエル。
家に帰れば、5歳の娘の優しいお父さん。
銃の音に怯える娘に、「妖精の服」を着せてあげます。
それは目にも見えず、さわれもしないけど、銃弾から身を守ってくれる不思議な服です。

一方、アラブ人といつも間違われる、ペルシャ人の1家。
お父さんは英語がうまく話せないし、理解も難しい。
それで、トラブルが絶えません。
泥棒に入られて以来、とても神経質で自分も銃を買うことにしました。
娘のドリは看護婦として働いていて、この国になじんでいますが、とても心配しています。

このお店に、ダニエルが鍵の取り替えにきたけれど、ドアが壊れていて、鍵がかけられない。
お父さんに言っても、通じないので、喧嘩になって、お金ももらわず帰ってきました。

その夜、ペルシャ人のお店は泥棒に襲われて、めちゃめちゃに。
保険も、お父さんの過失ということで支払われないことがわかりました。

ダニエルを逆恨みするお父さん。
捨ててあった領収書からダニエルの家を知り、拳銃を持って待ち伏せています。

ダニエルが帰ると、銃を構えて詰め寄るお父さん。
ダニエルの娘は「パパは妖精の服をもっていないのよ」と言いながら、ダニエルに飛びついた瞬間、銃声。



しかし、誰も傷ついていません。
「妖精の服」の魔法?
いえいえ、娘のドリが、空砲を入れておいたのでした。

「天使が助けてくれた」お父さんはつぶやきます。
ドリのお父さんを思う愛の力は、みんなを助けたのですね。

悲劇の結末となったのは、ハンセン巡査(ライアン・フィリップ)。


彼自身も、自分のなかにあった凶暴性について、認識していなかったでしょう。
あの瞬間まで…。

人々の悲しみも、怒りも、憤りも、恐怖もなにもかも飲み込んで、、巨大な都市は息づいています。

人々は、昼夜を問わずふれあいを求めて町を彷徨っているのです。
都会生きる人々の姿を、こんなにも多面的に捉えた映画が、かつてあったでしょうか! 

素晴らしいお映画でした。


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4 コメント

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Unknown (はお)
2008-09-17 22:28:57
食物連鎖という言葉がありますが、食物ならぬ感情連鎖。人の感情が別の人の感情を動かし、また別の人の感情を呼び覚まして行く。しかもそれが時として本人でさえも思いもしない方向に進んで行くこともある・・・善意の結果が必ずしも善となるばかりではなく、悪意の果てにあるものが必ずしも悪い結果だけではなく。しかし私たちには結果だけしか見えないこともあり・・・そんないろいろなことを考えさせられた映画でした。私はこの映画とてもいいと思います。
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考えさせられます。 (めえめえ)
2008-09-17 23:07:21
あの結末は想像しませんでした。
正義感のある青年だったのに…。
ライアンの行動に疑問を持ちつつ、自分の心とも葛藤していたのかも知れませんね。
この心の不安は多民族国家で生活したことがない私に完全に理解するのは難しいかも知れません。
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はおさんへ (マダムよう)
2008-09-18 10:50:33
コメントありがとうございます。

感情連鎖ーまさに、そういうテーマの作品でしたね。
善人とか、悪人とか、一言ではくくられない、人間の複雑さ、社会の複雑さを、端的に描いて秀逸ですね。

「告発のとき」はご覧になりましたか?
まだなら、ぜひ!!
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めえめえさんへ (マダムよう)
2008-09-18 10:54:19
この映画を最初に見たとき、「私はロスでは住めない」と思いました。
まさに、ライアン・フィリップの行動が、それを象徴していました。

ここに出てくる東洋人は中国人と、売られてきた人たちですが、普通の日本人が生活しているとしたら、とういう位置づけになるのでしょうね。
たくさんの物語が考えられるでしょうね。
そんなことを考えるきっかけになるのも、興味深い映画だと思いました。
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