ーファウストーFAUST
2011年 ロシア
アレクサンドル・ソクーロフ監督 ヨハネス・ツァイラー(ハインリヒ・ファウスト)アントン・アダシンスキー(マウリツィウス・ミュラー(高利貸))イゾルダ・ディシャウク(マルガレーテ)ゲオルク・フリードリヒ(ワーグナー)ハンナ・シグラ(高利貸の“妻”)
【解説】
『太陽』などのロシアの巨匠アレクサンドル・ソクーロフが監督を務め、ドイツの文豪ゲーテの傑作「ファウスト」を映画化。19世紀のドイツを舞台に、高名な研究者と高利貸の出会いによって狂い始める運命の行方を圧倒的な映像美で描き切る。主人公を演じるのはドイツ出身のヨハネス・ツァイラー。ダンサーでもあるアントン・アダシンスキーが高利貸を熱演。第68回ベネチア国際映画祭金獅子賞受賞の重厚な物語に引き込まれる。
【あらすじ】
19世紀初頭のドイツ、ファウスト博士(ヨハネス・ツァイラー)は、助手(ゲオルク・フリードリヒ」と共に「魂」のありかを追い求めていた。だが、人体のどこにも魂は見つからず、落胆する博士に助手は人々に悪魔だとささやかれている男(アントン・アダシンスキー)の存在を伝える。研究費も使い果たした博士はうわさの高利貸の元を訪れると、金は貸せないが違う形で協力をすると言われ……。(シネマトゥデイ)
【感想】
文豪ゲーテの「ファウスト」から発想した自由な作品だそうです。
日本の天皇を主人公にした作品「太陽」を作ったロシアのアレクサンドル・ソクーロフ監督作品。
ベネチア国際映画祭でも金獅子賞を受賞している作品です。
私は「太陽」は見て、なかなか面白いと思ったのですが、ゲーテの「ファウスト」も読んでいないし、どうでしょう、この作品。
まず、人間の腑分けのシーンから始まります。
「ゲー」なんだけど、なんとも大雑把でリアリティのない死体。
そのうえ、白黒と言うか、淡い黄緑色の世界だし、画面も小さいので、残酷さも希薄で、遠い昔の映画を見ているようです。
主人公のファウスト博士(ヨハネス・ツァイラー)は、ワーグナー(ゲオルク・フリードリヒ)という助手と人間の魂のありかを探していました。
でも、死んだ人間からはみつかりません。
そんなことばかり研究しているので、お金を使い果たし、父親を訪ねますが追い返されます。
仕方なく、マウリツィウス・ミュラー(アントン・アダシンスキー)という高利貸しを訪ね、お金を貸してくれるように頼みますが、彼は違う形で協力すると言って、ファウスト博士を訪ねてきました。
ここから二人の彷徨がはじまります。
ときどき、画面が歪んで、気味が悪いです。
そんな中で出会った美少女マルガレーテ(イゾルダ・ディシャウク)。
ファウスト博士は一目惚れし、一夜でいいから共にしたいとマウリツィウスに頼むのです。
マウリツィウスは異様な体をしています。
この人は悪魔でしょう?
毒を飲んでも平気だし、そうとしか思えない。
ラストの賽の河原のようなシーンでは、なぜか寺山修司と恐山を思い出しました。
そんな映画が確かありましたよね。
ワーグナーが作り出した人工生命体も気持ち悪かった。
その中で際立っていたのが、マルガレーテのピュアな美しさ。
黒づくめのコスチューム、顔がハート形に見える帽子をかぶって、口うるさいお母さんや貧しい暮らしの中で耐えている風情。
それをファウストという中年のおっさんが狙うという、しごく俗物的な作品。
そうだ、マルガレーテのお兄さんを殺したのがファウスト博士だった。
悪魔にはめられたと思い込んでいるけど。
その悲しみの中にいるマルガレーテをなんとかしたいなんて、まあ、ひどい男ね。
これは、揶揄とか、皮肉とか言うことなのでしょうが、あっけにとられている間に終わってしまったという感じでした。