『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

・車のバッテリーよ、永遠に!(下):終章

2012年05月20日 15時44分44秒 | ■つれづれに(日記)

 

 ◆平成24年4月17日 午前6時~◆

 ……………車屋の二人の青年との出会いからほぼ1年後……。
 “そのアクシデント”は、平成24(2012)年4月17日の「講義初日」の早朝に起きた。やや曇り気味の早朝。アパートの部屋を出て駐車場に向かった。
 時刻は、ジャスト6時。
 
 
 はりきって乗り込んだ軽自動車。だがそのエンジン音は、カタリともコトリともしない。本シリーズ(上)で述べたように、バッテリーが上がっているのだ。
 何たる無様、何たる不運。「講義初日」という“清新な緊張感”が、瞬時に“吹きとんだ”。いや、“ぶっとんだ”。
 トラブル確認時刻、6時03分
 
 閑静な高台の住宅地。そのT字三叉路の真ん中からは、人影も車が出入りする“けはい”もない。15台分の駐車場には、1台分を除いて車が静かに並んでいる。平日の朝6時そこそこに家を出る御仁など、そう多くはないのだろう。
 去年の「車屋の青年2人」の「出勤時刻」は、いずれも限りなく「9時」に近かった。
 
 去年のような「信じがたい超ラッキー」は、どう考えても“夢のまた夢”というしかない。そう思いながらも、視線は去年の「救世主M君」宅の「二階建て」に向けられ、自然に足が向かっていた。筆者の「駐車スペース」から「M邸」までは、20mちょっとの距離だ。
 
       ☆
 
 だがM邸は、一階の「雨戸」がしっかりと閉まっている。物音一つなく静まり返り、ちょっとやそっとで家人が出てくる様子はない。
 「最大の頼み」を失った筆者は、やむなく「ある知人」の携帯に電話を入れた。おそらくはまだ夢心地であることを確信しつつ……。
 
 ……やはり……電話はかからなかった。『スイッチが入っていないか、電波の届かない所に……』とのメッセージを繰り返し聞くだけだった。
 電波再確認時刻、6時09分
 
 
 とそのとき、近くの家から夫婦らしき人物が車に乗ろうとしている姿を見つけた。すばやく歩み寄り「ブースター」(充電用接続コード)のことを尋ねた。だが――、
  
 ――急いでいるものですから。
 
 ほとんど無視に近かった。満足な返事もないまま、迷惑そうな冷たい視線だけを浴びた。へこみそうな気持をかろうじて支えながら、『これがSEKENというやつさ』……気丈にそう納得させてもいた。
 冷たい……SEKENの再認識時刻、6時12分
 
       ☆
 
 T字三叉路の「見通し」はまずまず。携帯の時刻を見つめながらも、目と耳の集中力は「超超MAX」。「針の落ちる音」も「猫のまばたき」も見逃さなかった……だろう。というより、『矢でも鉄砲でも持って来い』という、半ば“破れかぶれ”の心境だった。
 だが、「針も猫も、矢も鉄砲も」その“けはい”は“微塵”もなかった。
 
       ☆
 
 「7時」にトラブル「解消」=「出発」……では絶対に「9時20分」開始の講義には間に合わない。「6時40分出発)」なら何とかなる。となれば、「6時30分」には「トラブル解消」のための「行動」すなわち「バッテリー充電作業」の「メド」がたっていなければならない。
 
 筆者の足は、導かれるように再び「M邸」に近づいていた。潜在意識による無意識の行動だった。要するに、“居ても立っても居られない”心境のなせる業なのだろう。だが先ほど同様、雨戸はしっかりと閉じられていた。
 
 But! しか~し! 針の音も猫の瞬きも見逃さない「センサー」は、M邸に“人のけはい”を感じた。
 
 “けはい”どころか、紛れもなく「human being」が眼の前に動いているではないか。「M邸敷地内の人影」いうことは、ほぼ「M家のご家族」。とたんに元気と勇気が全身に満ち始め、瞬時に「口を開く」体勢が整った。
 
 ――おはようございます。
 
 湧き上がる興奮のためか、どこか声が「よそ行き」になっている。明らかに「自分の声」ではない。だが――、
 
 ――ご主人でいらっしゃいますか? わたくし、隣りのアパートに住んでいる者ですが、実は車のバッテリーがあがってしまって。ちょうど1年前にも同じようなことがあり、お宅の息子さんに助けていただいたことがありました。……息子さん、まだおやすみですですよね? 
 
 不思議なほどスラスラと言葉が出て来たことに、自分でも驚いた。
 しかし、それよりも驚いたのは、「ご主人」すなわち「M君」のお父さんの応対だった。「まだ人が寝静まっている早朝」の、それも「初対面」の「招かざる客」。……であるにもかかわらず、怪訝な表情一つなく、親しみと好意すら感じられたからだ。
  
 ――さあ。どうでしょうか。……見てきましょう。
 
 そのひと言と表情のおかげで気持に“ゆとり”が生まれ、冷静に時刻を確認していた。
 「お父さん」との出会い、6時21分
 
       ☆
 
 再び独りとなり、沈着かつ冷静にM邸の「車庫」を見まわした。しかし、2台の乗用車は確認できるものの、昨年見た「仕事用のワゴン車」が見当たらない。「ブースター」は、あるのだろうか。
 “灯りかけた希望”に「黄色信号」が点灯し始める。と同時に、毎晩遅く帰宅する青年が、すんなり起きれるものだろうかと、こちらも心配だった。
 
 ……時間は容赦なく過ぎていく。まるで「この世の終わり」のカウントダウンのようだ。
 
 「お父さん」が家に入って、2分……3分……、そして4分……5分と経過した。不安の信号は、着々と「黄色」から「赤色」へ変わりかけようとしている。迫り来る「作業着手リミット」まであと4分。つまり、時刻は6時26分。……ヤバイぞ!
 
 と思った瞬間、何とM君の姿が見えた。というより、“忽然と現れた”というべきだろうか。別の言い方をすれば、「筆者の前に運ばれて来た」……。何度憶い返しても、それが一番適した言い方かもしれない。
 
        ☆
 
 「M君」は爽やかな青年の笑顔をしている。よく見ると「作業着」に身を包み、全身から「その道の職人」というオーラが出ている。さ~すが、プロ。だがやはり、「ブースター」はなかった。
 
 しかし「プロ」は悠然と、物置の辺りで何やら作業をしている。「ブースター」がないため、臨時に「バッテリーを交換」するという。そのため多少時間はかかったものの、見事に「エンジン」がかかった。トラブル解消時刻、6時43分
 の1分後、筆者は片道56kmの走行を開始した――6時44分
 
        ☆
 
 ……そして走行所要時間、2時間28分。学校到着は、9時12分だった。事務の女性と打合せをすませ、そそくさと出席簿やテキスト、法令集、講義ノートを抱えて「教室」に駆け込んだ。
 「授業開始」の1分前、9時19分だった。 
 
  

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4 コメント

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ギリギリだったんですねっ (GB)
2012-05-20 22:16:37
僕も寝起きで頭が回らず、
ケーブル無しで
時間とお金をかけずに
エンジンをかける方法を
パッと思いつきませんでしたょ。

「そっかそっか。」といった感じでした。

お役に立てて朝から気分が良かったですょ


コレなんですょね

僕は何か大切な物を忘れてしまっていたかも知れません。

困っている人の役に立ちたくて僕は修理屋になったんですょね。
仕事漬けの毎日で
大切な事、忘れてました。


本当にこちらこそ
ありがとうございました。





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わが救世主よ! (shuri)
2012-05-20 22:49:01
 「機械オンチ」の私は、あのとき「ブースター」がないということを聞いただけで、正直言って「万事休す」と思いました。

 でも悠然とマイペースで何やらやっているあなたを見ていると、“この人なら何とかしてくれる”という安心感がありました。

 時間的には、本当にぎりぎりでした。何度も、もう間に合わないかもしれないとあきらめかけたものですが、そのつど、あれだけ無理して、しかも奇跡的にお父さんと出会い、あなたを起こしていただき、そしてあなたに充電してもらったのだから、絶対に間に合うという不思議な自信が湧いてきました。

 そのため、時間が経つにつれて落ち着きを取り戻していました。学校が近くなり、周りが田園風景となったこともよかったのでしょう。
 
 ことに春の「筑後川」を渡るとき、その川幅の広さと周囲の緑の広がりに、最高にハッピーな気分でした。

 「間に合う」とか「間に合わない」とか、そんなことは、もうどうでもよくなっていました。素晴らしい体験でした。

 あなたが「主演男優賞」なら、お父上は「助演男優賞」です。

 何でもないことで、おちかづきになれ、しかも感動的な体験をさせていただいたことを神に感謝します。

 私も「忘れていた何か」を想い出しましたよ。
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ドラマティック! (くに)
2012-05-24 21:17:04
その学校で、受講中の生徒です。

「かきくいな」で呆気に取られた初日に
こんな事になっていたとは…


「SMAP興味ないし」と苦笑しながら
実は6人時代の、現オートレーサーである森且行氏が好きだったなどとは口が裂けても言えません(笑)

個人だと名前が出るのに、グループのメンバーとして考えるとなかなか出ないものですね。

いつも失念してしまう稲垣吾郎氏には申し訳無いな、と思いつつ。

私達の先生に救いの手を差し伸べて下さったMさんに、
感謝です。

無事に授業を受けることができ、良かった、良かった。






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ファンタスティック! (shuri)
2012-05-25 00:46:33
 くにさん、ありがとうございます。M君があなたのコメントを見てくれることを祈ります。
 
 本当に「ドラマ」でした。今もその素晴らしい「感動の余韻」が、何かの折に甦ってきます。

 今日(もう昨日になって)の授業終了後のパソコン騒動でおわかりのように、小生が「機械オンチ」であったからこそのM君との出会いでした。

 その意味において、MEのPCにも「ドラマティックなエピローグ」が……てな具合にならないかな……?!
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