先日、俵万智氏が「朝日新聞」(10月30日)に、彼女のデビュー作として知られる『サラダ記念日』について語っていた。
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
実はこの歌、本当は「カレー味の空揚げ記念日」であったとのこと。「空揚げ」では歌にならないので「サラダ」にしたようだが、「七月六日」も実際は別の日という。
「サラダ」でも「空揚げ」でも、個人的にはどちらでもかまわない。「七月初め」の「サラダ」がミソなのだろうか。みずみずしい色の「サラダ菜」に「胡瓜(きゅうり)」、「ミニトマト」の赤い輝き、それに輪切りにされた「ゆで卵」の黄色と「ハム」の色。それらが鮮やかに浮かんで来る。
若い恋人同士が、“二人きりの初めての夕餉” を迎えているのだろうか。ささやかな食卓に、将来のことを託しているのかもしれない。「小倉百人一首の濃厚な恋情の息づかい」とは異なった、“現代青春の初々しい恋情” がそこにはある。
★ ★ ★ 記念日?! ★ ★ ★
――あたくしもこの歌大好きよ。
そうねえ……。二人にとっては、どんな『記念日』がいいのかしら? お互いの絆や想い出が何気なくそこに詠みこまれているような……。 ねえ……こんな『記念日』はいかが?
「そのコートがいいね」と君が言ったから十一月二十日はセリーヌ記念日
これって「本歌取り」って言うんでしょ? 「セリーヌ」も決まってると思わない? そうなればいろいろありそうだわ。
「三音」のブランド名だったら、「四音」の「記念日」とピッタリ「七音」で納まるのね。グッチなんか、「グッチ記念日」でぴったり「七音」。「シャネル記念日」に「プラダ記念日」、それに「ヴィトン記念日」。
……でも、「ヴィトン」はやっぱり「ルイ・ヴィトン」って言わなくちゃ、納まりが悪いかも。「四音」でも悪くないわね。エルメス、カルダン、バルマン、フェラガモ……。でもやっぱり、「ピエール・カルダン」「ピエール・バルマン」って言うべきよね。
「イヴ・サンローラン」……これはちょっと長くてまとまりにくそう……って言うか、あたくし、サンローランはあまり好きじゃないの。
……ああ! あたくしに「歌人」(うたびと)の神が降りてきたわ。何てすてき!
ね~え。この歌いかが? これ。これこれ。 絶対に、これしかないわ!
「そのバックはいいね」と君が言ったから十二月五日はルイ・ヴィトンの日
ねえ。いいでしょ。「記念日」って言わなくても、「○○の日」で充分ね。
でも……ねえ? 何か物足りと思わない? …………ああ! やだ! やだ! フィクションなんてつまらないわ。やっぱりそこに真実っていうか……ノンフィクションとしての手ごたえみたいなものがなくっちゃ……それって絶対に必要でしょ?
「バック」は取るに足らないものかも知れない。でもその “何か” が意味するあたくしとあなたの……き・ず・な……。
それをさりげなく象徴するもの……。とっても印象的な『記念日』として残るような気がするでしょ? 絶対そうだわ! ねえ? そう思うでしょ?
ね~え。聞いてる? ねえ? ……あれっ? 眠ちゃったの?