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人文軽視は危険!

2016-05-29 19:06:24 | より良き我国のために
 私が工学系の学生時代、母校の文系の先生がT教授でした。「トイレの後、メーつぶったまま水を流してないか?目の前に横たわっているのは身体からの大事な手紙だ。ヨーく読むこと」と言いながら目をつぶり、トイレのレバーを押し下げるジェスチャーで笑わせる人でした。人望篤く話も面白くてT教授が学生寮に宿直する晩は話を聞きに来た学生で部屋が溢れるほどでした。

 そのT教授がある日の授業でこんな事を言われたのです。「有史以来、科学技術の発達は目覚ましい。それに引き換え、人間の精神分野の発達は遅い。従って人類は自ら創り出した最先端の科学技術を正しく使いこなせないでいる。皆さんは工学を極めると同時に精神・心の分野も磨き、科学技術の間違った開発や使い方をしないように心掛けて欲しい」 教授の話に具体例は無かったのですが、当時の私はダイナマイトや核兵器を思い浮かべました。原発の危険性にはまだ気付いていませんでした。

 ダイナマイトは鉱山や建設現場で使う分には利器ですが、爆弾として戦争に使われると忌まわしい凶器になりました。発明者のノーベルはダイナマイトで得た財産を使ってノーベル賞を創設し、人類が殺しあう事無く平和に発展する様願ったのです。核兵器に至っては最初から大量殺戮兵器目的でした。第二次大戦のさなか、敵側よりも早く開発しようと競走したのです。そしてドイツよりも一足早く成功した米国が日本の降伏意図を知りながらも広島と長崎に落としたのは新たな脅威に成りつつあったソ連への牽制の為でした。

 従来の砲弾とは比較にならないほどの威力を持ったダイナマイトを兵器に利用した人の心、更にそのダイナマイトとは比較にならないほどの威力を持った核兵器を開発し、使用した指導者の心、これらは弓や剣を使って戦っていた古代ギリシャやローマ帝国の政治家達の心と比べてほとんど進歩していません。そこに有るのは己を利する欲望です。しかし彼らが手にする武器の威力は万倍にも億倍にもなったのです。

 核兵器のもたらす惨禍を人類は知っています。原発の恐ろしさもチェルノブイリと福島の相次ぐ事故で思い知ったはずです。しかしそれでもこれらを廃絶しようとする意見が国会の中で多数を占めないのは人間の精神・心の進歩が遅れているからではないでしょうか。この分野の発達を担うのは主に哲学、文学、法学、政治、経済など文系の役割です。この分野の人々が核兵器や原発の廃絶を推進する勢力の中核を担うのです。

昨年6月、文科省は全国立大学に対して文系学部を削減する様通知しました。財政難の折、教育予算を削減するなら理系を温存し、文系を減らそうと考えたのです。理系学部の温存は安倍政権の殖産興業方針に資すると共に経済界の意向にも沿うものです。一方文系学部はゆくゆく核兵器や原発廃絶を推進し、更には憲法改悪にも反対して安倍政権に歯向かう勢力を生み出す可能性が高いのです。安倍政権が意識的に文系学部を減らしたい理由がこれです。更に安倍政権は理系学部を研究助成公募によって軍需産業と結びつけ、日本版産軍学複合体制を作って富国強兵も図ろうとしています。これは日本を「戦争する国」、「戦争で儲ける国」へ変えていく施策の一つに他なりません。

 私たちはこの危険極まりない安倍政権を一日も早く下野させ、文系軽視、産軍学複合体制化の施策を改めなければならないのです。


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