『らーめん放浪記』
〈1-(10)・沖縄〉
べ子が『ヤンバル病院』に
『急アル中』の“技”を駆使した潜入に
まんまと成功を遂げていたその頃
犬山(いぬやま)はウシ男とはぐれ
道に迷っていた。
「ここ…どこ…?」
ウシ男は相当怒っていたのか
相当あせっていたのか
恐ろしいテンションの形相で
ぺらぺらと喋り倒しながら
怒り肩でずんずんと歩を進め
らーめん屋台『黒猫』へ向かう人ごみを掻き分け
いつの間にか消えてしまった。
そう
老犬を置き去りにして。
犬山は結局1人
取り残されてしまった。
てっきり犬山は
ウシ男が『ヤンバル病院』へ向かうだろうと思っていたものだから
まったく違う方角の
迷路の様にくねくねとした
那覇の街中を歩き倒され
しかも程なくして置き去りにされ
もう訳が分からなくなってしまっていたのだ。
日本でありながら日本じゃないみたいだ。
見渡すかぎり“変家・変家・変家”
東京のそれからしたら、とても変わっている。
石垣に囲まれて比較的低い建物。
屋根が平らでコンクリートの建物。
シーサー、シーサー、シーサー。
それらが犬山には
まるで魔物が低姿勢で
この老いぼれ爺さんをおちょくっているかの様に見え
なんだか少しばかり可笑しくなる。
さて、どうしたものか。
まぁ、無理してウシ男を捜す必要もないだろう。
かえって自由に“泳がせて”おいたほうが
勝手にあちこち引っ掻き回してくれそうだし
上手くいけば捜査不要?
こちらにとって好都合って感じもするしな。
この家々を守る“シーサー”のように
シーサー顔の男が
この事件をいいように導いてくれるだろうよ。
さて、それよりなんだか疲れたと
犬山はとりあえず『サウナ』へ向かう事に。
でもただでさえ暑いここ南国沖縄に
『サウナ』なんてあるのか?
こうも年中暑けりゃ
『サウナ』なんていらないだろう。
そんな悪態ついてはみたものの
やっぱり疲れを癒したいのが本音。
とりあえず捜してみる事に。
まずはこの“迷子”をどうにかしなくては。
国際通りに出るにはどうしたら良いものか。
通行人に道を尋ねると
ありゃ?
って程単純に迷いから脱出する事が出来た。
何故こんな単純な道を
ぐるぐる、ぐるぐると
ワシは迷ってしまっていたのだろう。
“犬のおまわりさん”ともあろうものが
なんとも恥ずかしい。
さすがに定年間近な老犬だと
嗅覚も鈍るもんなのか。
小石を蹴飛ばし肩をすくめて
犬山はほんの少し苦笑してみせたのだった。
『島んちゅぬ湯』
は国際通りをちょいと、あちょいと、
あ、ちょいとちょっくらちょいと入った一角にある
スーパー銭湯のような大型温泉施設だ。
多種類の風呂やサウナ
メニュー豊富な食堂
マッサージルームやカラオケ等も完備
ホテルとジョイントされており地元民ならびに
観光客もゆったりのんびりと疲れを癒しくつろげる
那覇の新たなオアシス的空間である。
沖縄にはこのような施設が少なかったため
本土からの移住者が増えた近年
ここは皆にとても喜ばれているだろう。
さて南国沖縄にもこんな立派な『サウナ』施設があった!
犬山は喜び勇んで『島んちゅぬ湯』ののれんをくぐる。
自動ドア
“ブイーン”
♪ハイサイおじさん(ハーイ)
ハイサイおじさん(アッヌガッ)
夕びぬ三合ビン小 残とんな
残とら我んに 分からんな♪
爆音の『ハイサイおじさん』!
なんだこの音は!
情緒もなんも、あったものじゃない。
うるさい『三線』の音色は
せっかくの『喜納昌吉・ハイサイおじさん』を
『志村けん・変なおじさん』に変えてしまっていた。
しかめっ面で入銭料を支払いロッカーへ。
“爺眼鏡”を外しヨレヨレになった衣服を脱ぎ
そのまま『サウナ室』へ“ヨロヨロ”と直行。
眼鏡を外すと何も見えなくなる程
犬山はちょー乱視でちょー近視プラス老眼なのだ。
ログハウス調のサウナはフィンランド式らしく
高温でいて多湿
汗が即効でにじんでくる。
お風呂を楽しむ人が多いのか
『サウナ室』内は犬山だけのようだ。
1人ゆったりしたかった犬山には好都合。
フェイスタオルを頭巾の様に頭へ巻きつけ
“どじょうすくい”スタイルでひな壇に腰掛ける。
あぁ…
なんだか全てが面倒臭くなったきたな~。
当初はただの『沖縄桜観光旅行』だったのに。
何故かいろんな事に巻き込まれ
疲れ果てて今ここにいる。
『サウナ』の様に
全部吐き出して
捨て去って
すっきりさっぱりしたいもんだ。
思い返せばなんてくだらない人生なんだろう。
ただただ犯人をおいかけるだけの日々。
罪を犯す者にも人生があり
犯される者にもまた人生がある。
正直追いかけている者にとって
両者の真の気持ちは分からない。
特に…罪を犯すものの気持ちは…。
犯罪者か…。
あ~あ。
刺激が欲しい。
刺激が。
もうかったるいし
桜を拝んで東京に帰るとするか。
捜査に関しては
“よく分かりませんでしたね~”
とかなんとか誤魔化せば良い。
「はぁ~」
ため息ついて、ふっと我に返る。
BGMが『サウナ室』内に心地よく流れていたのに気づく。
♪古いアルバムめくり ありがとうってつぶやいた
いつもいつも胸の中 励ましてくれる人よ
晴れ渡る日も 雨の日も 浮かぶあの笑顔
想い出遠くあせても
おもかげ探して よみがえる日は 涙(ナダ)そうそう
一番星に祈る それが私のくせになり
夕暮れに見上げる空 心いっぱいあなた探す
悲しみにも 喜びにも 想うあの笑顔
あなたの場所から私が
見えたら きっといつか 会えると信じ 生きてゆく
晴れ渡る日も 雨の日も 浮かぶあの笑顔
想い出遠くあせても
さみしくて 恋しくて 君への想い 涙そうそう
会いたくて 会いたくて 君への想い 涙そうそう♪
良い歌だ。
「殺すか」
ん?
「うん。
そうだね。
奴は色々知りすぎたよね」
んん?
「とりあえず
明日奴のアパートへ行こう。
奴はまだそこにいる」
んんん?
ワシ1人じゃなかったのか?
まさに“志村!後ろ!後ろ!”みたいな
後方から複数の声が。
「『トン吉』兄さんとこの病院
最近“肉”の“出荷量”少ないんじゃないのか?
どんどん殺っちゃって流してもらわないと
このご時勢厳しいんだから
うちもシノギがキツイし」
「だよね~!
了解!
今月は脳神経外科の強化月間にしちゃうわ~!
妊婦は少子化で少ないケド
ジジババは多いからね~!
高齢化社会だし!
でもやっぱ“腐りかけ”より“出来立て新鮮”なほうのが
美味いんだけどね~!
高値が付くし。
ま、いいや。
質より量で勝負といきまっしょ!
だから『チン平』んとこの『みたらし組』も
どんどんうちに患者、流しちゃってよ~!」
「『カン太』
あの『猫田』さんとこの屋台の売り上げはどうなんだ?」
「順調さ~。
問題ないさ~!
それより“ダシ”の注文が半端ね~もんで。
兄さん
あの冷凍保存してる“ゾンビ達”
そろそろ流してくれさ~」
「だよね~!
了解!」
なんなんだ?この会話は?
振り向けない。
振り向いちゃいけないような感じの会話だ。
ま、たとえ振り向いたって
見えないんだけど。
「最近東京のマスコミが
うちらの周りうろうろしているらしいな」
「警察の犬も何か嗅ぎ付けているみたいよ~。
ちょいちょいうちに来てるみたいだしね~」
「殺るさ?」
「厄介なのはまずい。
適当に泳がせとけ」
!!!?
犬山の全身から
一気に汗が噴出す。
「こんなちまちました仕事は今のうちだけだ。
そのうち俺ら『陽罵琉』3兄弟の名を
ここ沖縄の地に大々的に知らしめて
完全支配してやる」
「支配って!
なんだか凄いね~!」
「ここは米軍のものじゃないさ!
うちら島んちゅぬものさ~!」
病院?
『ヤンバル』?
3兄弟?
ゾンビ達?
屋台?
ダシ?
んんんんんんんんんんんんんんんんん~~~???
『サウナ』の扉が開き
「社長」
「おう?」
「来客です」
「おう」
うつむく犬山の横をすり抜け
全身刺青の男『みたらし組組長・次男の陽罵琉チン平』が
『サウナ室』から出て行った。
んんんんんんんんんんんんんんんんん~~~???
後に続き『ヤンバル病院院長・長男の陽罵琉トン吉』
『那覇公設市場内肉屋店主・三男の陽罵琉カン太』
も退室。
んんんんんんんんんんんんんんんんん!!!
ほっほっほっほっほっほ!!!
犬山の足元は
汗とよだれで水溜りが出来ていた!
興奮のあまり立ち上がり
拳を握り締め頭上に突き上げながら高らかに笑う老犬!
「わっんわんわんわんわんわんわんわん!!
わおーーーーーーーーーーーーん!!」
大量の汗を飛び散らせながら
犬山は
『みたらし組』が経営するここ『島んちゅぬ湯』の『サウナ室』にて
脱水症状で倒れ
救急車にて『ヤンバル病院』に搬送されたのだった。
救急車の車内で犬山は
終始にんまり般若の様な青白い笑みを浮かべ
♪会いたくて 会いたくて
犯罪者への想い 涙そうそう♪
と
さっきながれていたBGMを
ハミングで繰り返していたのだった。
その頃
ウシ男は
犬山がいない事に気づき
途方に暮れていた。
「あれれ…?」
♪パララ~ララ
パラララララ~~~♪
街に夜鳴きの音(ね)が響く。
めけめけ~。
『らーめん放浪記』つづく。
(注)この物語はフィクションです。
登場する人物、建物、団体名等はすべて
架空の物です。
写真。黒猫バッヂ。
茅ヶ崎の作家さんものだそうっす。
帽子に付けて!
にゃー!
〈1-(10)・沖縄〉
べ子が『ヤンバル病院』に
『急アル中』の“技”を駆使した潜入に
まんまと成功を遂げていたその頃
犬山(いぬやま)はウシ男とはぐれ
道に迷っていた。
「ここ…どこ…?」
ウシ男は相当怒っていたのか
相当あせっていたのか
恐ろしいテンションの形相で
ぺらぺらと喋り倒しながら
怒り肩でずんずんと歩を進め
らーめん屋台『黒猫』へ向かう人ごみを掻き分け
いつの間にか消えてしまった。
そう
老犬を置き去りにして。
犬山は結局1人
取り残されてしまった。
てっきり犬山は
ウシ男が『ヤンバル病院』へ向かうだろうと思っていたものだから
まったく違う方角の
迷路の様にくねくねとした
那覇の街中を歩き倒され
しかも程なくして置き去りにされ
もう訳が分からなくなってしまっていたのだ。
日本でありながら日本じゃないみたいだ。
見渡すかぎり“変家・変家・変家”
東京のそれからしたら、とても変わっている。
石垣に囲まれて比較的低い建物。
屋根が平らでコンクリートの建物。
シーサー、シーサー、シーサー。
それらが犬山には
まるで魔物が低姿勢で
この老いぼれ爺さんをおちょくっているかの様に見え
なんだか少しばかり可笑しくなる。
さて、どうしたものか。
まぁ、無理してウシ男を捜す必要もないだろう。
かえって自由に“泳がせて”おいたほうが
勝手にあちこち引っ掻き回してくれそうだし
上手くいけば捜査不要?
こちらにとって好都合って感じもするしな。
この家々を守る“シーサー”のように
シーサー顔の男が
この事件をいいように導いてくれるだろうよ。
さて、それよりなんだか疲れたと
犬山はとりあえず『サウナ』へ向かう事に。
でもただでさえ暑いここ南国沖縄に
『サウナ』なんてあるのか?
こうも年中暑けりゃ
『サウナ』なんていらないだろう。
そんな悪態ついてはみたものの
やっぱり疲れを癒したいのが本音。
とりあえず捜してみる事に。
まずはこの“迷子”をどうにかしなくては。
国際通りに出るにはどうしたら良いものか。
通行人に道を尋ねると
ありゃ?
って程単純に迷いから脱出する事が出来た。
何故こんな単純な道を
ぐるぐる、ぐるぐると
ワシは迷ってしまっていたのだろう。
“犬のおまわりさん”ともあろうものが
なんとも恥ずかしい。
さすがに定年間近な老犬だと
嗅覚も鈍るもんなのか。
小石を蹴飛ばし肩をすくめて
犬山はほんの少し苦笑してみせたのだった。
『島んちゅぬ湯』
は国際通りをちょいと、あちょいと、
あ、ちょいとちょっくらちょいと入った一角にある
スーパー銭湯のような大型温泉施設だ。
多種類の風呂やサウナ
メニュー豊富な食堂
マッサージルームやカラオケ等も完備
ホテルとジョイントされており地元民ならびに
観光客もゆったりのんびりと疲れを癒しくつろげる
那覇の新たなオアシス的空間である。
沖縄にはこのような施設が少なかったため
本土からの移住者が増えた近年
ここは皆にとても喜ばれているだろう。
さて南国沖縄にもこんな立派な『サウナ』施設があった!
犬山は喜び勇んで『島んちゅぬ湯』ののれんをくぐる。
自動ドア
“ブイーン”
♪ハイサイおじさん(ハーイ)
ハイサイおじさん(アッヌガッ)
夕びぬ三合ビン小 残とんな
残とら我んに 分からんな♪
爆音の『ハイサイおじさん』!
なんだこの音は!
情緒もなんも、あったものじゃない。
うるさい『三線』の音色は
せっかくの『喜納昌吉・ハイサイおじさん』を
『志村けん・変なおじさん』に変えてしまっていた。
しかめっ面で入銭料を支払いロッカーへ。
“爺眼鏡”を外しヨレヨレになった衣服を脱ぎ
そのまま『サウナ室』へ“ヨロヨロ”と直行。
眼鏡を外すと何も見えなくなる程
犬山はちょー乱視でちょー近視プラス老眼なのだ。
ログハウス調のサウナはフィンランド式らしく
高温でいて多湿
汗が即効でにじんでくる。
お風呂を楽しむ人が多いのか
『サウナ室』内は犬山だけのようだ。
1人ゆったりしたかった犬山には好都合。
フェイスタオルを頭巾の様に頭へ巻きつけ
“どじょうすくい”スタイルでひな壇に腰掛ける。
あぁ…
なんだか全てが面倒臭くなったきたな~。
当初はただの『沖縄桜観光旅行』だったのに。
何故かいろんな事に巻き込まれ
疲れ果てて今ここにいる。
『サウナ』の様に
全部吐き出して
捨て去って
すっきりさっぱりしたいもんだ。
思い返せばなんてくだらない人生なんだろう。
ただただ犯人をおいかけるだけの日々。
罪を犯す者にも人生があり
犯される者にもまた人生がある。
正直追いかけている者にとって
両者の真の気持ちは分からない。
特に…罪を犯すものの気持ちは…。
犯罪者か…。
あ~あ。
刺激が欲しい。
刺激が。
もうかったるいし
桜を拝んで東京に帰るとするか。
捜査に関しては
“よく分かりませんでしたね~”
とかなんとか誤魔化せば良い。
「はぁ~」
ため息ついて、ふっと我に返る。
BGMが『サウナ室』内に心地よく流れていたのに気づく。
♪古いアルバムめくり ありがとうってつぶやいた
いつもいつも胸の中 励ましてくれる人よ
晴れ渡る日も 雨の日も 浮かぶあの笑顔
想い出遠くあせても
おもかげ探して よみがえる日は 涙(ナダ)そうそう
一番星に祈る それが私のくせになり
夕暮れに見上げる空 心いっぱいあなた探す
悲しみにも 喜びにも 想うあの笑顔
あなたの場所から私が
見えたら きっといつか 会えると信じ 生きてゆく
晴れ渡る日も 雨の日も 浮かぶあの笑顔
想い出遠くあせても
さみしくて 恋しくて 君への想い 涙そうそう
会いたくて 会いたくて 君への想い 涙そうそう♪
良い歌だ。
「殺すか」
ん?
「うん。
そうだね。
奴は色々知りすぎたよね」
んん?
「とりあえず
明日奴のアパートへ行こう。
奴はまだそこにいる」
んんん?
ワシ1人じゃなかったのか?
まさに“志村!後ろ!後ろ!”みたいな
後方から複数の声が。
「『トン吉』兄さんとこの病院
最近“肉”の“出荷量”少ないんじゃないのか?
どんどん殺っちゃって流してもらわないと
このご時勢厳しいんだから
うちもシノギがキツイし」
「だよね~!
了解!
今月は脳神経外科の強化月間にしちゃうわ~!
妊婦は少子化で少ないケド
ジジババは多いからね~!
高齢化社会だし!
でもやっぱ“腐りかけ”より“出来立て新鮮”なほうのが
美味いんだけどね~!
高値が付くし。
ま、いいや。
質より量で勝負といきまっしょ!
だから『チン平』んとこの『みたらし組』も
どんどんうちに患者、流しちゃってよ~!」
「『カン太』
あの『猫田』さんとこの屋台の売り上げはどうなんだ?」
「順調さ~。
問題ないさ~!
それより“ダシ”の注文が半端ね~もんで。
兄さん
あの冷凍保存してる“ゾンビ達”
そろそろ流してくれさ~」
「だよね~!
了解!」
なんなんだ?この会話は?
振り向けない。
振り向いちゃいけないような感じの会話だ。
ま、たとえ振り向いたって
見えないんだけど。
「最近東京のマスコミが
うちらの周りうろうろしているらしいな」
「警察の犬も何か嗅ぎ付けているみたいよ~。
ちょいちょいうちに来てるみたいだしね~」
「殺るさ?」
「厄介なのはまずい。
適当に泳がせとけ」
!!!?
犬山の全身から
一気に汗が噴出す。
「こんなちまちました仕事は今のうちだけだ。
そのうち俺ら『陽罵琉』3兄弟の名を
ここ沖縄の地に大々的に知らしめて
完全支配してやる」
「支配って!
なんだか凄いね~!」
「ここは米軍のものじゃないさ!
うちら島んちゅぬものさ~!」
病院?
『ヤンバル』?
3兄弟?
ゾンビ達?
屋台?
ダシ?
んんんんんんんんんんんんんんんんん~~~???
『サウナ』の扉が開き
「社長」
「おう?」
「来客です」
「おう」
うつむく犬山の横をすり抜け
全身刺青の男『みたらし組組長・次男の陽罵琉チン平』が
『サウナ室』から出て行った。
んんんんんんんんんんんんんんんんん~~~???
後に続き『ヤンバル病院院長・長男の陽罵琉トン吉』
『那覇公設市場内肉屋店主・三男の陽罵琉カン太』
も退室。
んんんんんんんんんんんんんんんんん!!!
ほっほっほっほっほっほ!!!
犬山の足元は
汗とよだれで水溜りが出来ていた!
興奮のあまり立ち上がり
拳を握り締め頭上に突き上げながら高らかに笑う老犬!
「わっんわんわんわんわんわんわんわん!!
わおーーーーーーーーーーーーん!!」
大量の汗を飛び散らせながら
犬山は
『みたらし組』が経営するここ『島んちゅぬ湯』の『サウナ室』にて
脱水症状で倒れ
救急車にて『ヤンバル病院』に搬送されたのだった。
救急車の車内で犬山は
終始にんまり般若の様な青白い笑みを浮かべ
♪会いたくて 会いたくて
犯罪者への想い 涙そうそう♪
と
さっきながれていたBGMを
ハミングで繰り返していたのだった。
その頃
ウシ男は
犬山がいない事に気づき
途方に暮れていた。
「あれれ…?」
♪パララ~ララ
パラララララ~~~♪
街に夜鳴きの音(ね)が響く。
めけめけ~。
『らーめん放浪記』つづく。
(注)この物語はフィクションです。
登場する人物、建物、団体名等はすべて
架空の物です。
写真。黒猫バッヂ。
茅ヶ崎の作家さんものだそうっす。
帽子に付けて!
にゃー!