kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

ワルシャワ蜂起

2023年12月03日 | ★★★★☆
映画館:広島市映像文化ライブラリー


1944年のワルシャワ蜂起を描いたドキュメンタリー映画。日本初上映は2015年、東京でのポーランド映画祭のようだが、当時は当然未見。
ワルシャワ蜂起のドキュメンタリーと言えば、NHKが放送した「ワルシャワ蜂起・葬られた真実~カラーでよみがえる自由への闘い~」があり、それと似たような映画かと思えば、全く違うアプローチの映画。

ワルシャワ蜂起中に撮影された映像をを時系列に再編集しているが、まず、よくこれだけの映像が残されていたなと驚嘆する。蜂起への協力を呼び掛ける自由ポーランド軍や戦時下の結婚式、燃え上がる市内、徘徊するヘッツアーなどまで記録されている。それがカラーライズされ、迫真さを増している。

さらに、この映像を撮影した国内軍映画班の兄弟がいたという架空の設定があり、物語はこの兄弟の会話で進められる。
さも現場にいたような会話で蜂起の血だらけの実態が生々しく語られるという展開なのだが、こういった演出はあまりないので、これがドキュメンタリー映画と言ってよいのかと悩ましくなる。

確かにWW1のドキュメンタリー映画「彼らは生きていた」でも後録したセリフをかぶせているが、それらはどこかに記録されたものがベースとなっているので、そういった点では完全にオリジナルで書き起こされたものではない。

だが、この監督、ヤン・コマサは「ワルシャワ44 リベリオン/ワルシャワ大攻防戦」を撮った監督と知り、さらに本作上映前のウルシュラ・スティチェック・ボイエデさん(広島大学・学術博士)のレクチャーを聴いて、この手法を取った理由も何となく分かる気がした。

ソ連による解放後、共産政権下ではワルシャワ蜂起は一部の反動勢力による攻撃と位置づけられ実質、なかったこととされていたらしい。(この辺のソ連側の心情は一大国策映画「ヨーロッパの解放」でもさらりと触れられている。)

そのため、ワルシャワ蜂起が公に話せるようになったのはソ連崩壊後で、記念博物館が完成したのも2004年と今世紀に入ってから。

「ワルシャワ44 リベリオン/ワルシャワ大攻防戦」もミュージックビデオ風の場面があり、今の観客に受け入れられるためにはこういった演出もありなのかと思ったが、本作でもこれまで「なかったこと」に封印されてきた歴史に改めて日の光を当てるためには単に映像を綴るだけでは不充分だと判断し、こういった作劇方法になったのかも知れない。

ドキュメンタリー映画としては平坦な出来だが、その背景に考えさせられるという点で
評価は★★★★☆。

残念ながらこの手の映画はなかなかソフト化や配信されないので、次回、見られるのはいつのことやら。






題名:ワルシャワ蜂起
原題:WARSAW UPRISING/POWSTANIE WARSZAWSKIE
監督:ヤン・コマサ
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