kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

ザ・キラー

2024年01月06日 | ★★★★☆
日時:2024年1月5日
映画館:八丁座

2024年最初の映画はデヴィッド・フィンチャー監督のネッフリ製フィルムノワール。

映画は主人公の殺し屋”ザ・キラー”のモノローグで始まる。彼はパリでの狙撃仕事を請け負い、街に溶けこみながらストイックにその瞬間を待つ。
そして、パリから隠れ家のあるドミニカに戻るとそこは何者かに襲撃されており、居合わせた恋人は袋叩きにされ、重傷を負っていた。
復讐に燃える彼は関係者をたどりながら、事件の真実に迫っていく。

原作はフランスのグラフィックノベルらしく、章立ての物語はパリからドミニカ、ニューオリンズ、フロリダ、ニューヨーク、シカゴと舞台を変えながら淡々と進む。主人公が裏社会の非情な人間なので先の展開が予想できないのだが、どんどん感情移入してしまう。

計画通りやれ
予測しろ、即興はやるな
やるべきことをやれ
誰も信用するな
対価に見合う戦いだけやれ
感情移入するな、感情移入は弱さだ
弱さは無防備になる

とかなんとか念じながら、証拠を残さないよう細心の注意を払い、常時指紋隠滅用のスプレー(尿素?)を持ち歩き、いくつもの偽名とパスポートを有し、全米何か所かの貸倉庫に秘密基地を持っている。

人探しにせよ侵入にせよ公的な手段は取れない身なので、なかなかアナログな手段も使いながら目的を達成していく。今の映画、やたら「椅子の男」がモニター上でなんでもやってくれて全然面白くならないのだが、前述の日常描写を含めこういう細かい描写や行動の積み重ねにはワクワクさせられてしまう。「ジャッカルの日」しかり「アウトロー」しかり「ジョン・ウィック」しかり殺し屋・一匹狼映画には大切な要素なのだ。

この主人公像にピッタリなのがミヒャエル・ファスベンダー。(今はマイケルと表記されるが、そこは昔からのミヒャエルにこだわりたい。)
元々、感情表現の薄いキャラクターが多い(なんだかんだと彼の映画は割としっかりと観ている)が、ちょっとがっちりめの体格とも相まって無口な殺し屋役に違和感がない。さらに日々目立たないよう、やたら地味なファッションというのも好感が持てる。

サスペンスものが多いフィンチャー監督の演出も手慣れたもので、いい感じに先読みできない緊張感を高めてくれるし、転々とする都市でのロケもそれぞれの街が持つ空気感を醸し出している。(半分くらいは行ったことないけど)

謎解き要素は薄いが質の高いサスペンス・スリラーとして
評価は★★★★☆。






題名:ザ・キラー
原題:The Killer
監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:マイケル・ファスベンダー、ティルダ・スウィントン、チャールズ・パーネル

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