kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

聖地には蜘蛛が巣を張る

2023年07月03日 | ★★★★☆
日時:6月23日
映画館:サロンシネマ



イランで起きた娼婦連続殺人事件を取り上げた映画。
よくこんな政治的に際どい映画を作れたなと思ったら、制作はデンマークやフランス、ドイツ、スウェーデンの合作で、ロケ地はヨルダン。監督のアリ・アバッシはテヘラン生まれ。

2000年代、イランの聖地マシュハドで娼婦の連続殺人事件が発生、女性ジャーナリストがその事件を追う。
保守的な土地柄で女性でジャーナリストというだけでハードルが立ちはだかり、まず一人で宿泊することさえ拒否される。
犯人からの犯行電話を受ける同僚ジャーナリストとともに事件を追うが、被害者が娼婦で、さらには犯人が「街の浄化」を声明していることから警察の腰も重い。絶大な権力を持つ聖職者も彼女の訴えには耳を貸さない。

同時進行で犯人の犯行も描写される。犯人は妻子のある退役軍人だが、娼婦を悪とみなして殺意が抑えられず凶行を繰り返す。犯行のシーンがハリウッドとは違って、日本映画のそれっぽくってなかなか痛々しい。

主人公はいくつかの手がかりから犯人像を絞り込み、一か八かの囮調査に乗り出す・・・

この映画の見どころの1つは試練に立ち向かう女性像で、我々の感覚ではなかなかわからない女性差別に立ち向かう。追うべきは犯人だが、周辺環境全てが不利益に働く。

主演ザーラ・アミール・エブラヒミのキリッとした顔立ちが印象的で、特に口回りとアゴのラインはワタシ好み。
犯人も犯罪と自覚しながらも、信念がゆえ凶行が止まらない。時として只ならぬ狂気がにじみ出る。

実際の事件が元になっているので、一応、事件は解決するが、重々しいしこりが残る。それももちろん一方の側からの視点なので、もう一方の側から見れば正義の行いとされるのかも知れない。

宗教が犯罪を起こすわけではないけど、時として社会は犯罪を正当化してしまいかねないという描き方で、多文化についていろいろと思いを巡らせ、ちょっとアラビア語の読み方も学びたくなったので、
評価は★★★★☆。

ところで、原題は本事件の犯人スパイダーキラーから「Holy Spider」。タイトルバックでは街中の街路の明かりを蜘蛛の巣に見立てており、これに「聖地には蜘蛛が巣を張る」とした邦題は見事だと思う。







題名:聖地には蜘蛛が巣を張る
原題:Holy Spider
監督:アリ・アバッシ
出演:ザーラ・アミール・エブラヒミ、メディ・バジェスタミ

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