昭和少年漂流記

破壊、建設、発展と、大きく揺れ動いた昭和という時代。大きな波の中を漂流した少年たちの、いくつかの物語。

風に揺れる蛹 ⑪

2017年06月17日 | 日記
左隣の就活生が、ふと顔を上げる。露わになった横顔は少女の趣き。朝の光を受ける頬は艶やかで、鼻先には若々しい自信を覗かせている。 頬に思わず、えくぼを探す。が、見当たらない。光を浴びているからかもしれない。 首を少し上げる。老眼鏡を外す。霞む目をこする。もう一度老眼鏡をかける。気になる頬を凝視する。やはり、えくぼは見当たらない。 かつて確かに目にした久美子のえくぼ。あれも、陰影の中に見た錯覚だ . . . 本文を読む