歌舞伎蔵(かぶきぐら)

歌舞伎を題材にした小説、歴史的時代背景を主に、観劇記録、読書ノート、随想などを適宜、掲載する。

3閑談

2020-04-04 11:17:08 | 時雨傘

しばらくしてお俊は大坂代官所に呼び出され、正朔、三次を付き添いに出頭した。思いのほか、根掘り葉掘り聞かれることもなく、三人は代官所を出た。その日は正朔の家で骨休みをすることになり、道頓堀の芝居茶屋も休業して正三と正三の妻お由も道頓堀吉左衛門町の正朔の家に集まった。正三は阿弥陀池で臨時に開いていた五八の芝居「宿無団七時雨傘」を見てきたというが、腑に落ちないとばかりで詳しくは話さない。それはともかく鼬川河口の心中事件もお俊の兄の行方がわからないだけで、ひとまず落ち着いて閑談にふけった。