「それはそうと、もうひとつ話がある。お俊坊の兄者から手紙が参った」
三次のお役は探索ゆえ、やむを得ぬが、お俊坊も三次を亭主にするなら覚悟しておかねばなりませぬぞ」
「そうだすか・・・けど、兄さんはお尋ね者なんかとちゃいます」
「手紙には居場所も名も書いてはおらん。ただ「ちもり」と奥付にある。「ちもり」というのは代筆した男、いや女かもしれぬが、その名ではないかな?名も明かせぬぐらい警戒しておる」
「やっぱり兄者は・・・」お俊の顔が曇った。
「そうよのう」正三も正朔もそれ以上、言うことはできない。この先、どのような展開になるか、このまま何事もなく兄が大坂に戻って来ることができるか、確かなことは今は何一つない。
「そうよのう」正朔がまた、つぶやいた。
「親方、ちがうと言うんだすか?やっぱ兄さんは何か悪事を働いて逃げてると思うてはるんだすか?」
「そんなことない、が、そなたの兄者と話ができれば、何かが分かるかもしれん」
「何かって何だす?お二人の心中に何か隠れたことでもあるんだすか?」
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