キンドル出版しました。 こちらから
十一月のある夜、並木正三は新町橋のたもとで一人の少女とぶつかった。その少女を追うように数人の男たちが現れ、少女を無理やり連れてゆこうとする。正三は少女をかばうが、男たちを率いていた浪人は正三を知っていた。ひとまず質屋の娘である少女を預かった正三は店の内紛にからむ騒動に立ち会う羽目になる。
人形浄瑠璃から歌舞伎の作者に戻って間もない正三は、歌舞伎の復興の期待を一身に受けていた。浪人たちとの立会いからヒントを得て、大仕掛けなセリ上げを考案する。
宝暦三年(一七五三)、正三、数え年二十四歳の冬のことである。