英語と書評 de 海馬之玄関

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再出発の英文法:修飾

2008年05月29日 00時41分33秒 | 英文法の話題

 



[0]修飾
今回のテーマは、「修飾語句の語順」と「修飾語の位置」です。

「修飾」には名詞を形容詞によって限定する「限定的修飾」と、動作や事態についての様相を副詞で説明する「状況的修飾」の二種類があります。「限定的修飾」は、例えば、"red apple"という表現で世界中のリンゴの<集合>の中から「赤いリンゴ」だけを選りすぐるという機能を果たしており、後者の「状況的修飾」とは、ある歌手が歌う場面を「天使のような声で歌う」(状況・様相)というように補足することです。要は、複数の「パラレルワールド」の中から1個の場面を選び出すのが「状況修飾」とも言える。例えば、

Beatiful and misterious Cyndi Lauper sings with seraphic voice as a prostitute does.

(美しくミステリアスなシンディーローパーは天使のような声で娼婦のように謳う)

この例文で"Beatiful and misterious"はCyndiを限定修飾している形容詞句であり、"with seraphic voice as a prostitute does"は副詞句と副詞節による状況修飾。

尚、シンディーローパーは世界に一人しかいないので「限定修飾」というのはすこし奇妙な表現に聞こえるかもしれません。けれども、この例文の話者である「私」のイメージの中には多様なシンディーローパーが存在しており、「私」がここで語っているのは one of the images of Cyndi Lauperなのですから「限定修飾」(多くの同種の<集合>の中からある基準で思考の対象を選び出すこと)と言っても満更論理矛盾ではない。この経緯は上の例文をこう書き換えれば一層明らかになると思います。

The beatiful and misterious singer sings with seraphic voice as a prostitute does. (美しくミステリアスなその歌手は天使のような声で娼婦のように謳う)


●二種類の修飾
・形容詞(句・節)による限定的修飾

・副詞(句・節)による状況的修飾



[1]限定修飾語句の語順
さて、“My Grandfather's Clock♪”の歌詞ではないですが、時計を「大きな」「のっぽの」「黒い」「古い」「木製の」「3個の」「お洒落な」「私のお祖父さんの」「宝の」という9つの形容詞で修飾する場合、英語ではそれらの形容詞(句)をどんな順番に置けばいいのか。何か明確な修飾語句の順序についてのルールがあるのでしょうか。

正直、この「限定修飾語句の語順」はTOEICやTOEFLで出題されたことはおそらくないと思いますが、逆に、ビジネスレターや契約書を英文で作成する際には大いに日本人を悩ませている論点。

而して、これについては次の二つの指針を押さえておけばよい。これらの指針はいずれも大正時代から英作文や英文読解のTipsとして知られてきたもので私の発明ではありません。要するに、明治・大正の頃から私達の先輩方は「(複数の)限定修飾語句の語順」に悩まされてきたという、これは一つの状況証拠かもしれませんね。

▲船乗りの法則
遠く沖合から港に入港してくる船の船員さんから見える(認知され始める)性質の順番に形容詞(句)を並べればよい! 例えば、“My Grandfather's Clock♪”の例で言えば

「3個の」>「大きな」>「のっぽの」>「古い」>「木製の」→時計
☆ただし、冠詞は全ての形容詞の前に置かれます。ゆえに、
the three large lofty old wooden clock

▲重力の法則
話者にとって、より重要と感じられる性質を表す形容詞(句)ほど被修飾語の近くに置かれる! 例えば、

「大きな」<「木製の」<「のっぽの」<「古い」<「お祖父さんの」→時計
☆ただし、冠詞は全ての形容詞の前に置かれます。
☆この例は、ある話者の主観であり<正解>は人により異なることは言うまでもありません。尚、重力は「物の重さ」にかかわらず本来均一であることは言うまでもありませんよぉー。

the large wooden lofty old my-grandfather’s clock
【くどいですが、これはある話者の主観から表現した一例にすぎんません】

「重力の法則」ではしなくも明らかになっているように、(被修飾語の前に置かれる)複数の形容詞句の語順に関しては実は明確な文法ルールがあるとは言えません。しかし、一応、望ましいとされる<相場>みたいなものはある。これについての詳細は『ロイヤル英文法 改訂新版』(旺文社)§118, pp.269-272, 『基礎からよくわかる英文法 改訂新版』(旺文社)p.287を参照していただければと思います。

以下、船乗りの法則と重力の法則に優先する「文法ルール」(いうならば、船乗りの法則と重力の法則の例外を)紹介しておきます。所謂「後置修飾」。


●後置修飾
修飾語句が被修飾語(=名詞)の後に置かれることもある!


典型的ケースは次の通り。
(1)something/anythingの修飾
(2)不定詞の形容詞的用法と長めの分詞句による修飾
(3)関係代名詞と関係副詞による修飾

something/anythingの修飾と不定詞の形容詞的用法の例
Please give me something to drink.(何か、飲み物をくださいな)
Ms. Rui saw something white.(ルイちゃんは何か白い物を見た)

短めと長めの修飾語句の位置
Let’s look at the sleeping baby.(その眠っている赤ちゃんを見てみようじゃないですか)
Look at the baby sleeping in the cradle.(揺りかごで寝ている赤ちゃんです)

関係代名詞による修飾
Ms. Totdjo wrote an article that would become very famous soon after upload.
(トッドジョー女史はアップロード後すぐに有名になった記事を書いた)





[2]状況修飾語句の位置
今度は「状況修飾語の位置」について一緒に考えましょう。具体的には「副詞(句)の位置」。副詞の位置はTOEFLやTOEICでも時々出題される論点。その出題頻度は大相撲に喩えれば幕内下位か十両の上位。でも立派な関取(=重要論点)であることは間違いありません。しかも、正解を見極めるためのルールは全部で4個(細かく数えても10パターン)くらいしかなく、ルールを覚えれば1問5秒でクリアできる、日本人受験者にとっては美味しい論点でもあります。

普通、TOEFLやTOEICの文法・語彙問題の解答時間は1問30秒以内が目安。ならば、1問5秒でクリアできるそんな楽勝問題が6問もあれば25秒×6問=150秒、10問あれば25秒×10問=250秒(各々約2分~4分)の余裕ができる。これ、制限時間内に他の受験者よりも更に4問~8問解答できる余裕ができるということ。これは大きいです。

そのような有利な状況を作るためにも、頻出問題を中心に一つでも多くの楽勝問題(例えば、主語と述語動詞の人称と数の一致、不定詞と動名詞を目的語に取る他動詞、完了形と「係り結び」の関係にある前置詞(例えば、since last yearとくれば述語動詞の時制はhave lived)、「節の前には接続詞」「句の前には前置詞」の構文原則・・・)を増やしましょう。それが、あなたの「勝ちパターン」につながること請け合いです。

以下の説明については、このブログ「英語と書評 de 海馬之玄関」の推奨英文法参考書(?)『基礎からよくわかる英文法 改訂新版』(旺文社)、『ロイヤル英文法 改訂新版』(旺文社)を参考にしてください。


●頻度を表す副詞と否定の副詞

・数量的に明確に頻度を述べる副詞
→文頭か文末
Our company has a general meeting of stockholders twice a year.
(我が社は株主総会を年に2回開催する)

・漠然と頻度を述べる副詞/否定の副詞
→述語動詞がbe 動詞の場合はその直後
→述語動詞が「助動詞+動詞」の場合には助動詞と動詞の間
→述語動詞がbe 動詞以外の動詞(一般動詞)の場合にはその直前
Our meetings are sometimes canceled at the last moment.
(時々、会議が開催間際になって中止になってしまう)


●頻度以外の述語動詞を修飾する副詞

→自動詞の直後
→他動詞の場合には目的語の直後
(ただし、that節とかの長い目的語の場合には動詞の直後)
→述語動詞が「助動詞+動詞」の場合には助動詞と動詞の間

He walked slowly. (彼はゆっくり歩く)
He has already arrived at Tokyo. (彼はすでに東京についている)
I’ve come to meet other National Defense Academy students.
(他の防衛大学生に会うために来ました)
不定詞の副詞的用法も自動詞/他動詞を修飾する場合はこの語順をとる。
ただし、不定詞は「助動詞+動詞」の場合にも自動詞/他動詞を修飾するケースと同様になります。


●文全体を修飾する副詞

→文頭及び助動詞の前または文末(文末の場合は、「,副詞」が正書スタイル)

Fortunately, she was not seriously injured.
(幸いにも彼女のけがはそう重たくなかった)

Opening the safe, she took out an application package.
(彼女は金庫を開けて、コンピューターのアプリケーションソフトを取り出した)
分詞構文も原則、文頭か文末に置かれます。


●複数の副詞の配列

→時間や場所を示す副詞(句)は単位の小さい(範囲の狭い)ものから順に並べる
→異種の副詞(句)の配列は、手段→場所→状態→時間の順

The Senator came home by taxicab safely yesterday.
(その上院議員は昨日無事に帰国した)


Beatiful and misterious Cyndi Lauper sang with seraphic voice in front of us as a prostitute does yesterday.

(美しくミステリアスなシンディーローパーは昨日天使のような声で娼婦のように我々の前で謳った)







<確認演習>
この記事で説明したことを例題で確認しましょう。

▼例題1:
Yasukuni Shrine < >.
(A) twice a year annual festivals holds
(B) twice a year holds annual festivals
(C) holds twice a year annual festivals
(D) holds annual festivals twice a year


訳:靖国神社の例大祭は年に2回行われる。
正解:(D)
説明:twice a year, once a year などの、「数量的に明確な形で頻度を述べる副詞」は文頭か文尾に置かれる。靖国神社の例大祭は4月と11月に行われます。また、靖国神社がお盆にちなんで戦歿者246万6千余柱の「みたま」を慰めるために行っている御霊祭は7月。都営新宿線九段下駅から3分。機会があれば是非、散華された英霊の御霊に感謝の誠を捧げに行きましょう。


▼例題2:
< > of our project will have been done by this weekend.
(A) Two third
(B) Two three
(C) Two thirds
(D) Two and thirds


訳:我々のプロジェクトの3分の2は今週末までに終わっているだろう。
正解:(C)
説明:thirdにはもともと「三番目」という意味と「三分の1」という意味があります。而して、「3分の2」は「third が2つ」(= two thirds)と考えましょう。


▼例題3:
Ms. Stellar has been looking for a < > bag.
(A) large brown leather
(B) leather large brown
(C) brown large leather
(D) large leather brown


訳:ステラ姫は大きな茶色の革のカバンを探しています。
正解:(A)
説明:限定修飾する複数の形容詞の語順の問題です。<船乗りの法則>と<重力の法則>を加味した場合、標準的・相場的なその語順は、[冠詞類:冠詞/人称代名詞/名詞の所有格]→[数量]→[主観的判断(fine, lovely, nice など)]→[大小]→[年齢/新旧]→[色]→[材料/出所]になります。


▼例題4:
My mother-in-law bought < >.
(A) a big red car
(B) a red big car
(C) red a big car
(D) red big a car


訳:義母は大きな赤い車を買った。
正解:(A)
説明:複数の限定修飾語句の順序は「大小」→「色」の順。『ロイヤル英文法』から引用すれば、
[冠詞類]→[美醜→大小→形状→性質→新旧→色彩→固有→物質]の順番になります。

these two beautiful small square heavy new blue French wooden jewel boxes
(これらの二つの美しい小さい四角の重い新しい青いフランス製の宝石箱)


▼例題5:
Is there < > this weekend?
(A) free anyone
(B) anyone free
(C) anyone who free
(D) anyone is free


訳:今週末暇な人はいますか?
正解:(B)
説明:~one, ~body, ~thing の形をした不定代名詞を限定修飾する形容詞句は後置されます。


▼例題6:
< > came to see the anniversary of NDA at Yokosuka in November.
(A) Thousands of people
(B) Thousands people
(C) People of thousands
(D) Thousands-people


訳:11月、横須賀にある防衛大学校の開校記念祭には何千という人が訪れた。
正解:(A)
説明:漠然と数が多いことは thousand, hundredに「s」をつけて表します。尚、防衛大学校(National Defense Academy)の学園祭は例年11月の第2土曜日・日曜日です。

http://www.nda.ac.jp/index-j.html


▼例題7:
Yasuko Sawaguchi, one of the most famous actresses in Japan, < > has already arrived at London to discuss the North-Korean problem with Ms. Fukufuki.

(A) have already arrived at
(B) already have arrived
(C) has already arrived at
(D) already has arrived


訳:最も有名な日本の女優の一人である沢口靖子さんは、フクフキさんと北朝鮮問題を討議すべくすでにロンドンに到着した。
正解:(C)
説明:述語動詞が「助動詞+動詞」の場合には、原則、副詞はその助動詞と動詞の間に置かれます。尚、arriveは自動詞であり「~に到着する」という場合には前置詞が不可欠。「~に到着する」「~に話をする」系の動詞の自動詞・他動詞の区別は初級レヴェルではありますが(逆にそれだけ)TOEICの必須論点です。

自動詞:arrive at, get to, speak to, talk to
他動詞:reach, visit, tell,


▼例題8:
Make sure your baggage is < > secured before driving.
(A) properly
(B) fully
(C) easily
(D) wrongly


訳: 車を運転する前に、荷物がきちんと置かれているかを確認しなさい。
正解:(A)
説明:be 動詞と過去分詞の間に置かれる副詞が求められる。fully は「十分に」、easily は「容易に」、wrongly は「悪く」の意味の副詞。この問題では語順の形態論からは解答することができず、センテンスの意味から最適な選択肢を選ぶしかありません。


▼例題9:
Cooking vegetables in < > water significantly reduces the amount of residual pesticides.
(A) boil
(B) boiled
(C) to boil
(D) boiling


訳:沸騰したお湯で野菜を茹でると残留農薬の量は大幅に減らせます 。
正解:(D)
説明:このセンテンスの情景は湯が沸騰している状態なので boiling water。尚、boiled water は I'd like a pot of boiled water. 「沸騰させられた(沸きたての)の湯を下さい」のようにその時点では沸騰していない状態を表します。ということは、レストラン(restaurant)などで I'd like a pot of boiling water.とboiling water を使うと「携帯コンロなどで沸騰している状態のポット」が運ばれてくるかも、です。


▼例題10:
< > audience did not leave the stadium for a long time after their favorite soccer team won the Women's World Cup.

(A) Exciting
(B) Excite
(C) Excited
(D) Excitement


訳:ひいきのサッカーチームが女子ワールドカップで優勝を決めたあと、興奮した観客は長いこと競技場を離れませんでした。
正解:(C) Excited
説明:excited と exciting は分詞から派生した形容詞で、よく混同されるもの。もともとの動詞は excite 「興奮させる」という他動詞ですから、excitedには「興奮させられた」と受動の意味を持っています。つまり、excitedは「人間が興奮させられる」こと。それに対して、exciting は exciting game 「興奮させる試合」のように「物が人を興奮させる」場合に使います。


▼例題11:
Students have to read < > by tomorrow.
(A) a 600 pages long case book
(B) a case book 600 page long
(C) a 600 page long case book
(D) a case book 600 pages long


訳:学生は明日までに600ページの判例集を読まなければならない。
正解:(D)
説明:高さや長さなどを表現する場合、単位などを示す形容詞の前にどのくらいのボリュームであるかを表す語句が置かれることがあります。他方、それらの語をハイフンでつないで「a 600-page-long case book」という形もあり、TOEIC受験慣れしている方の中にはこの形と混同したケースもあるかもしれませんね。

確認! 数詞と名詞をハイフンでつなぎ、「数詞-名詞」で年齢・時間・数量などを表す形容詞句ではその名詞に「s」は付けません。four-hour meeting, fifty-dollar bill, a 28-year old office lady など。

 

 

 

※尚、「修飾」に関しては弊ブログの記事「英文読解 one パラ道場:英語教材として読む安倍談話」
の中の次の解説もご参照いただければ嬉しいです。

▽頻出形容詞の語順の確認-- TOEIC・TOEFL受験者必須
▽副詞の位置-位相差問題
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/157a43e89d959f133ffaafb2b746d44b

▽nearly-程度の程度問題
▽関係代名詞? 接続詞?
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/9bbdc7a6708c23d34a60813c00079c42

 

 

媛蹈鞴五十鈴媛命

 

 

 

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