英語と書評 de 海馬之玄関

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再出発の英文法:仮定法(2)

2008年05月28日 18時29分24秒 | 英文法の話題

[3]仮定法の形式と意味
この項では仮定法の具体的な論点について取り上げます。まず次の例文を見てください。

◆Ifの省略
Had I known you were in (the office), I would have reported this incident to you. =If I had known you were in (the office), ・・・・・.(あなたが事務所におられると知っていたら、この事件について報告しましたのに)

Should a system engineer make a crucial mistake, he will be fired from the postion. =If a system engineer should make a crucial mistake,・・・・・.(もし万が一、システムエンジニアが重大な間違いを犯したら、彼はその職を失うでしょう)

◆Ifの代用
In her position, I would have acted in a different way.
=If I had been in her position, ・・・・・.
(私がもし彼女の立場だったら、彼女とは違う行動をしたと思う)

A man of strong will would never give up his dream to become Prime Minister.
=If he were a man of strong will, he would never ・・・・・.
(彼が意思の強い人なら、内閣総理大臣になる夢を諦めることなんかないだろうに)

With your assistance, all of us would get along with this e-learning system.
=If you gave us some assistance, all of us would ・・・・・.
(貴方から幾らかご助力をいただければ、われわれ全員、このeラーニングのシステムを上手く扱えると思うのですが。ご助力は無理ですか? )
cf. 最後の例文では話者は肯定の返事を期待している。よって、条件文にかかわらず any assistanceではなくsome assistanceになっていることに注意してください。要は、「援助がもらえる」ことを半ば予想している表現なのです。


◆仮定法の形式と意味
さて、TOEICやTOEFLの指導をしていて、「仮定法ってなんですか」と受講生の皆さんに質問すると、

仮定法とは、

「if +動詞の過去形→助動詞の過去形+動詞の原形」
「if +動詞の過去完了形→助動詞の過去形+動詞の現在完了形」
の形を取る構文です。


と答えてくださる方が珍しくありません。そのような仮定法の理解からは、上に挙げた「ifの省略」と「if節の代用」は仮定法の例外になるのでしょうね。

けれども、前項で詳しく述べたように、仮定法というのは「どこまでもどこまでも限りなく♪ 述語動詞の形の問題」。ならば、「ifの省略」や「if節の代用」などは実は本来の仮定法の理解にとってはあまり本質的なイシューではなく、つまり、例外でさえない。

けれども、「I could fly to you.」とだけ言われて、このセンテンスの意味がわかるなんてことは英語のネーティブスピーカーでも(会話のコンテクストの理解を共有している間柄、例えば、ごく親しい友人や家族でもなければ、占い師でもない限り)無理です。つまり、「I could fly to you.」とだけ聞いてこれが、

「貴方の所に飛んで行きたい。でも行けない。哀しい!」
←仮定法の「could fly」なのか?

「(先週は時間・費用的に)貴方の所に飛んで行けたよ」
←単なる過去の事実を述べるだけの直説法の「could fly」か?

を確定することはできないのです。ですから、(述語動詞の変化のルールである)仮定法が実際に使われる際には、

If I were a bird, I could fly to you.
(もし私が鳥なら貴方の所に飛んで行けるのに、でも実際には鳥ではないから飛んで行けない。哀しい!)

と、「if+・・・」や「ifの省略」「ifの代用」等々の「条件」を述べる情報と「帰結」を述べる節の仮定法は原則ワンセットで使用されることになる。この「条件」と「帰結」の併用は、日本語の「青によし→奈良」「たらちねの→母」のような「枕詞」的関係と考えればよいかもしれません。いずれにせよ、仮定を述べる帰結節の前にifが導く条件節を置くのが仮定法使用の一般的な形態になっているのです。


逆に言えば、他の代用表現でifが導く条件節がなくとも帰結節の述語動詞が「自分の発言内容が事実だとは思っていない」ことを述べている仮定法であると曖昧でなく伝わる場合には、遠慮なくifが導く条件節は「不採用」になります。

同様に、ifの条件節の述語動詞がwere, had +動詞の過去分詞, should +動詞の原形の場合には(仮定法が続くことが明確なので)ifを省略して倒置(述語動詞→主語)にすることも可能です。このifの省略は日常会話では「文語調」で堅苦しい表現とされますが、新聞や論文のタイトルや決めのセンテンスには(字数節約のためもあって)かなり頻繁に使用されるのでTOEFLやTOEICの受験者は注意が肝心でしょう。





[4]仮定法の変形と意味
この記事の冒頭[1]で紹介したように、仮定法には次の4種類がありました。

●TOEFL/TOEICにでるでる仮定法の4種類
(1)仮定法過去(現在の事実と違うことを述べる)
(if+動詞過去形,→助動詞の過去形+動詞の原形 )

(2)仮定法過去完了(過去の事実と違うことを述べる)
(if+動詞過去完了形,→助動詞の過去形+動詞の完了形)

(3)仮定法未来(「もし万が一~の事態になったら」という未来のことを述べる)
(if+should+動詞の原形,→will, 助動詞+動詞の原形)

(4)仮定法現在(要求・命令・推奨・提案を表す動詞の導く節の中で使われる)
(要求・命令・推奨・提案を表す動詞→「目的語になる名詞節」の中の動詞は原形)


くどいですが、復習を兼ねて例文で確認しましょう。語学の力は復習の時間と回数と頻度に比例しますからね。


(1)If I were not busy, I could take part in the open base event at Maizuru. (もし忙しくなければ(海上自衛隊の)舞鶴基地一般公開に参加できるのに:実際には忙しくて参加できなーい!)

(2)If I had not been busy, I could have taken part in the anniversary of National Defense Academy at Yokosuka. (もし忙しくなかったなら横須賀にある防衛大学の開校記念祭に参加できたのに:実際には忙しくて参加できなかった)

(3)If I should not be busy, I will take part in the Fuji Firepower Review of JGSDF(Japan Ground Self Defense Force).(もし、万が一忙しくないようなら陸上自衛隊の富士総合火力演習に参加します:まあ、そんなことはないだろうけど。涙)

(4)Technical Research & Development Institute of Ministry of Defense suggested that each Officer Candidate School student take TOEIC by this time next year. (防衛省の技術研究本部は自衛隊の幹部候補生学校のすべての学生に来年の今頃までにはTOEICを受験してはどうかと提案した。cf. that節の中の述語動詞に注目。時制の一致を受けず現在形になっている?  いいえ、each student は単数形なのに「三人称単数現在のs」がtake について takes part in になっていない。つまり、このthat節の中の述語動詞は原形なのです)

復習終わり。どこまで行っても仮定法はこの4種類ということ。
では次の例文を見てください。


◆条件節と帰結節の形式のずれ
If Mr. Naojuv had eaten all those chocolates, he would be sick now.
(ナオさんがそのチョコレートを全部食べていたら、彼は今頃病気になってるだろう)
[条件節=仮定法過去完了→帰結節=仮定法過去]
[食べなかったのは過去のこと→病気じゃないのは現在のこと]

If Ms. Vanille were not fond of wine, she would not have taken two bottles last Friday.
(ヴァニューさんがもしワイン好きでなかったら、金曜日にボトル2本もいただくことなんかなかったろう)
[条件節=仮定法過去→帰結節=仮定法過去完了]
[ワイン好きなのは過去から現在に続いていること→ボトル2本飲んだのは過去のこと]

「条件節と帰結節のずれという論点」は模擬テスト形式の問題集とかには時々取り上げられている。けれど、実際にTOEFLやTOEICでそうそう出題されるポイントではありません(笑)。このブログ管理者である私は、過去3年近くに渡って全てのTOEIC公開テストを受験していますが、正直、(少なくともこれが正誤を分ける問題は)この間1問も見たことはないと思います。つまり、このポイントはTOEFL/TOEIC対策のためには覚えなくてよい知識なのです。

不要な知識。では、なぜここで取り上げたの?    

はい。それは「条件節と帰結節の形式のずれ」が仮定法を理解する上で実に便利だから。つまり、仮定法というのは「自分の発言内容が事実だとは思っていない」場合に述語動詞の形が変化するルールということがここに如実に表れているからです。

だから、「仮定法過去は、「if+動詞過去形,→助動詞の過去形+動詞の原形」の構文だ」などは受験参考書的な「公式」にすぎず、実際の英文法のルールがそんなチャート式の「公式」もどきに拘束されるいわれはない。

従属節(=条件節)にせよ主節(=帰結節)にせよ、あくまでも「自分の発言内容が現在の事実に反すると思っていれば」その述語動詞は仮定法過去になり、「自分の発言内容が過去の事実に反すると思っていれば」仮定法過去完了になるのです。

仮定法プロパーの話しはこれくらいにします。そして、最後に、「自分の発言内容が事実に反する」かどうかに関して、TOEFL/TOEICの重要論点を一つ一緒に学習しておきましょう。次の例文を見てください。


◆even if と even though の違い
She will keep a positive way of thinking even if her TOEIC score was below 470.
She keeps a positive way of thinking even though her TOEIC score was below 470.

この2文の意味はどう違うのか?   

will keepとkeepsの違いを無視すれば、どちらも「TOEICスコアが470点を下回っていたにもかかわらず、彼女はポジティブ思考を維持している」ではないのでしょうか? しかし、この二つのセンテンスには実は大きな違いがあるのです。

畢竟、even if が「スコアが実際に470点を下回っているかどうか」不明であるのに対して、even though の場合は必ず「彼女のスコアは470点以下」になる。よって、

She will keep a positive way of thinking even if her TOEIC score was below 470.
(TOEICスコアが470点を下回ったかもしれないが、それでも彼女は前向きに進むだろう)
→She is praiseworthy, isn't she?
(健気!)

She keeps a positive way of thinking even though her TOEIC score was below 470.
(TOEICスコアが470点を下回っていたにもかかわらず、彼女は全然前向きだぜ!)
→She is Yamato-Nadeshiko, isn't she?
(撫子Japan!)





<確認演習>
この記事で説明したことを確認しておきましょう。


▼例題1:
If it < > for wide range of experience in Cambodia in 1992, Japan Ground Self Defense Force could not have got such positive reputation regarding its reconstruction and humanitarian assistance in Iraq.

(A) had not been
(B) have not been
(C) has not been
(D) were not


訳:1992年のカンボジアで得た広範な経験がなかったとすれば、我が優秀で勇敢なる陸上自衛隊がイラクにおける人道復興支援でかくも高い評価を得ることはできなかったでしょう。
正解:(A)
説明:「if it were not for ~」は「~がなければ」という仮定法過去の構文。例題の「if it had not been for~」は「~がなかったとすれば」という「if it were not for ~」の仮定法過去完了版の構文です。復習になりますが、Ifを省略した場合には倒置が起こり、「Were it not for・・・」「Had it not been for・・・」の語順になります。


▼例題2:
< > Japan Self Defense Force, Japan could not maintain its sovereignty.
(A) Except for
(B) On account of
(C) Unless
(D) But for


訳:自衛隊が存在しなかったら日本はその主権を維持することはできないだろう。
正解:(D)
説明:「~がないならば」「~がなかったならば」は「But for ~」や「Without ~」を使って表現できます。


▼例題3:
It’s about time we < > an amendment to the constitution.
(A) have moved
(B) had moved
(C) moved
(D) would have moved


訳:憲法改正を提案してもよい時期だ。
正解:(C)
説明:It is (about) time (that)の後には、動詞の過去形を述語動詞とする仮定法過去の節が続きます。


▼例題4:
Although Mr. Minamide knows nothing about law, he speaks < > an expert.
(A) like he being
(B) as if he were
(C) even if he were
(D) as though being


訳:南出氏は法学のことはほとんどなにも知らないのに、まるで専門家のように話ている。
正解:(B)
説明:as if/as though + 仮定法で「あたかも~であるかのごとく」の意味になります。


▼例題5:
I was very tired yesterday. Otherwise I < > to the open base at Atsugi with Mr. Riviere.
(A) had gone
(B) went
(C) would go
(D) would have gone


訳:昨日は超疲れていた。そうでもなければ、リビエールさんと自衛隊厚木基地の基地祭に行っていただろう。
正解:(D)
説明:otherwiseという副詞は前の文意を受け、「さもなければ」という意味でif節の代わりをすることができます。例題は過去の事実に反する仮定であり、空所が置かれたセンテンスの述語動詞は仮定法過去完了形を選ぶことになります。

▼例題6:
Even if the sun < > in the west, Mr. Minamide would not change his mind.
(A) would rise
(B) were to rise
(C) would raise
(D) were to raise


訳:たとえ太陽が西から昇っても、南出氏は意見を変えないでしょう。
正解:(B)were to rise
説明:「Even if + S + were to do ~」 で未来の事柄に対するありえない一般的な仮定を表します。ちなみに、「太陽が昇る」「円が上がる」のはrise, 「高いところに持ち上げる」「公定歩合(official discount rate)を上げる」「プライムレート(最優遇貸出金利:prime rate)を上げる」のはraiseです。尚、仮定法と普通の条件を述べる構文(条件法)の違いを以下の例文で確認しておきましょう。

Even if there are no appointments scheduled during the sales representative’s shift, the sales representative must remain at the business office to make a contribution toward franchisees in the vicinity for the full 8-hour shift.(たとえ、訪問販売員の勤務シフトの時間帯に訪問の予定が皆無であったとしても、訪問販売員は8時間の勤務シフトの時間帯は営業所にとどまり、その近隣のフランチャイズ店に貢献をなさなければなりません)


▼例題7:
If the shrine priest had got somewhat academic perspective on the constitution, he < > to such a stupid fancy as “ Nullification Doctrine on the Constitution of Japan” today.

(A) would not have assented
(B) would not assent
(C) will not have assented
(D) will not assent


訳:その宮司さんがかって幾らかでも憲法学を体系的に学んだことがあったならば、現在、彼が「憲法無効論」などという馬鹿げた妄想を支持することもないでしょうに。
正解:(B)
説明:条件節と帰結節の仮定法の形式がずれているパターンです。帰結節の最後、文末のtodayがヒントです。よって、条件節は「If + S + had got」の仮定法過去完了(過去の事実に反する仮定を述べる形式)、そして、帰結節は「would + V-原形」の仮定法過去(現在の事実に反する仮定を述べる形式)になります。

尚、仮定法は「歴史的事実」や「一般的な真理」「現在も変わらない事実・習慣」を述べる従属節と同様に「時制の一致」の適用を受けません。例えば(JSDFOはJapan Self Defense Forces Officerの短縮形(abbreviation)ですが)、

I wish I were a JSDFO.(自衛官であればどんなにいいだろうと思う)
Two years ago, I wished I were a JSDFO. (2年前、自衛官であればどんなにいいだろうと思っていた)

歴史的事実が時制の一致を受けないこと(主節の情報より前に起きた出来事の叙述なのに、主節の述語動詞が過去形であっても従属節の述語動詞が過去完了形になることなく過去形のままであること)については下記の例文を参照してください。

We learned that the Constitution of Japan was newly established and independently enacted without the former constitution, with using it, that is, using the Constitution of the Empire of Japan as a ritual for the constitution-building process.

(私達は、日本国憲法は、憲法制定のプロセスにおいてその儀式の式次第に旧憲法を、すなわち大日本帝国憲法を使用しつつも、旧憲法とは無関係、かつ、全く新しく制定されたことを学びました)
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