はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

台風15号

2015-09-16 00:43:48 | はがき随筆
 8月25日、鹿児島県の薩摩半島近くをかすめた台風15号には驚いた。
 台風の後、出水の特攻碑公園の桜並木を通りかかると、いつも、春は、人々を楽しませていた樹齢50~60年ほどの大木や太い幹が10本ほど倒れたり,折れたりしていた。出水市の中心街の交差点の信号機は、停電らしく機能していない。
 自宅での植物栽培用の小屋も屋根が吹き飛ばされてしまった。
 なんと、ウスバキトンボが私の自動車のワイパーに挟まれ、黒揚羽がビニールの袋の中に隠れていたのにはびっくりした。
  出水市 小村忍 2015/9/15 毎日新聞鹿児島版掲載


桃色吐息

2015-09-16 00:42:42 | はがき随筆
 秋雨前線が、よく活動しています。世間は憲法9条問題で騒がしい? これは考えれば考えるほど、分からなくなります。
 突然高橋真理子さんの咲かせて咲かせて 桃色吐息……とかメロディーが口から出てきました。そしてギリシャのチプラス首相のしたたかなこと。頭をよぎりました。日本政府は真面目過ぎるのかしら。何が何でもと必死になり、国民や有識者が、もの申しても、聞く耳は持っていないのだと感じております。
 平和、これを維持する。本当にむずかしい。存じております。9条解釈、戦争につながらないこと、ただ祈るばかりです。
  鹿児島市 津田康子 2015/9/13 毎日新聞鹿児島版掲載

45年目の絵手紙

2015-09-16 00:41:30 | 女の気持ち/男の気持ち
 かつて私は大隅半島東岸にある小さな中学校の教師だった。先日、45年前の卒業生から還暦同窓会の案内が届いた。担任した45人の生徒のうち3人が早世し、26人が参加するという。
 当日、出水市から集合場所の中学校へ車で向かった。最後の峠のトンネルを抜けると太平洋が見える。ゆっくりと坂を下る。明らかに過疎化が進んでいる。45人中30人が集団就職したのだ、当然だろう。彼らの実家はまだ存在するのだろうか? 泊まる所はあるのだろうか?
 4時間足らずで学校に着き、私と私の家族の人生のスタート地点に立つ。涙があふれ出す。現在の生徒数は7人だという。
 校門で待っていると、次々に教え子たちが集まって来る。
 「先生、誰だか分かりますか」じっと見つめていると中学時代の顔が浮かぶ。
 「あ、ハルキ」
 大自然の中で共に遊び暮らした彼らの名はよく覚えている。が、顔と一致するかが心配だった。生徒同士も同様のようだ。
 「あれは誰?」
 私を遠くから見て問う声。しばらく誰も答えない。
 「先生だがね」
 全員が笑った。
 3人の墓参りの後、宴会場へ。アラ、イシダイ、オウギガニ……。郷土料理を見て驚きの声が上がる。そう、彼らも久しぶりなのだ。ここでも時間は矢のように過ぎた。
 出水にもどってもまだ余韻に浸っている。そうだ、42人全員に絵手紙を書こう。私を育ててくれた彼らに感謝を込めて。
  鹿児島県出水市 中島征士 2015/9/12毎日新聞鹿児島版掲載

大型台風15号

2015-09-16 00:35:46 | はがき随筆
 8月23日に台風15号の情報を見る。出水地方を直撃だ。24日の台風情報でも、進路のど真ん中から出水は逃れようがない。風速50㍍強の大型台風に、居ても立ってもいられず、私は屋根にネットをかぶせた。打ち付けも終えて「来るなら来い」と私は腹を据えた。
 25日の午前2時ごろから4時までは、生きた心地がしなかった。台風が通過した夜明けに庭に出た。屋根瓦が11枚も吹き飛び,雨漏りがしていた。大型台風の直撃にもかかわらず、近所には被害がなく、私の家だけの小被害で済んで、何よりも嬉しい限りである。
  出水市 道田道範 2015/9/12 毎日新聞鹿児島版掲載


元気が何より

2015-09-16 00:34:41 | はがき随筆
 梅雨が明けるや暑い暑い夏になった。老体だから夏バテするのだろうと軽く考えていた。が、ひょっとしたら……と不安な気持ちがよぎった。
 MRI検査で脳腫瘍の再発がわかって愕然となった。再発する前に人生を卒業したかったのに。
 日課のようになっていた夫との口げんかをする元気もなかった。私自身、身も心もすり減るほど苦しんでも、脳腫瘍は居候の分際のくせしてのうのうと大きくなりやがって腹立たしい。
開頭手術ではなくガンマナイフの治療を受けました。もう一度元気になりたい。
  鹿児島市 馬渡浩子 2015/9/10 毎日新聞鹿児島版掲載

夕顔の花

2015-09-16 00:32:29 | はがき随筆
 隣家の鉢植えに夕顔の花が見事に咲いている。大輪の白いアサガオを思わせる。
 子供の頃、田舎の家の垣根にも咲いて、それが大きなスイカのような実をつけたのを思い出した。母から、これがカンピョウになるんだと教わったものだった。
 源氏物語で、光源氏に愛された「夕顔」がはかなくうせていくくだりや、粗末な家の垣根に咲く夕顔の楚々とした白い花の姿が、懐かしく思い出された。
 誰も住んでいない故郷の、埴生の宿には、今ごろ千草が生い茂っていることだろう。
  鹿児島市 下薗英俊 2015/9/10 毎日新聞鹿児島版掲載

風鈴 

2015-09-16 00:25:05 | はがき随筆
 自室に、チリン、チリンと風鈴の音が聞こえる。今時分に毎年、妻が軒先に下げる。
 結婚した頃、義母に「軟らかくいい響き」と言ったら「短冊が古いから取り換えて、絵でも描いて使っていい」と頂戴した。早速、短冊を作り、表に「地道にこつこつと」、裏に「着地が大事」と書いた。
 あれから四十数年。緑の生け垣を通り抜ける風に、変わらぬ音色。懐かしい音に、地道に歩んだ人生を振り返り、終の時をきちんと着地したいと思う。今年は亡き義母が言った短冊に絵でも描こうかな。風鈴は今日も蝉と鳴き合っている。
  出水市 宮路量温 2015/9/9 毎日新聞鹿児島版掲載

祖母の手仕事

2015-09-16 00:16:29 | はがき随筆
 齢96歳、長寿に生きるのは高い雲の上にたたずんでいるかのよう。幼少期、祖母は小柄で色白、気品の人。針仕事に精を込めていた。縮緬の生地でちゃんちゃんこをこしらえた。手には星の数ほどしわが寄り、型紙なしの勘と知恵が働く。夏は祖母の額の汗が光にまぶしく、ときに手を休めて深呼吸。カエデのような手で汗を拭いてあげる。澄んだ目は潤み、しわだらけの顔から美しい笑みがこぼれた。「ありがとう」。出来上がったちゃんちゃんこの袖に手を通すと「べっぴんさんよ」と祖母が言う。変身したね。感無量。かわいいネ。ありがとう。
  姶良市 堀美代子 2015/9/8 毎日新聞鹿児島版掲載

うれしさも

2015-09-16 00:12:37 | はがき随筆
 毎月1遍ずつ投稿する。10年後、なんと120編の創作になる。いま120編創作しろと言われても、無理難題で投げ出してしまう。やはり継続して思考しながら、愉しみながら投稿する。生きがいも生じてくる。今月はどんな題材で創作するか。新鮮味も感じてくる。
 1日1㌻の日記励行。こっちの方は苦にもならず、時間設定もなく自由気ままに書く。老齢か、同じ内容のものもあるが、気にせずコツコツと書く。
 投稿も自由に実践。没も気にせず、毎月の継続の力も生き方に必要であろう。今月も投稿できたこと、うれしさも生じる。
  鹿児島市 岩田昭治 2015/9/7 毎日新聞鹿児島版掲載

ブルーベリー

2015-09-16 00:12:02 | はがき随筆
 友は上場高原にブルーベリーの果樹園を持ち、今が収穫だと言う。さすが高原。涼しい風が吹き、ヒグラシが鳴いて広々とした大地は気持ちがいい。
 若木は摘むのに程よい高さ。300本の木は品種もいろいろ、枝々に赤い実、そして濃い青紫色に白粉をおびた完熟実は、さわるとぽろりと落ちる。つい口に入れた。甘さと程よい酸味がいい。アントシアンが豊富な実は目にいいそうだ。
 かごいっぱいに摘んだ実のジュースやジャムへの加工の仕方を聞きながら、高原を下りた。友は春にもおいで、ブルーベリーの花が美しいと言う。
  出水市 年神貞子 2015/9/6 毎日新聞鹿児島版掲載