Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

映画 『国道20号線』

2009-06-07 09:26:39 | その他
東京で綺麗なもん着て美味い酒飲んでたって、おまえの田舎はこんなもんだろうと、
一皮剥いてべろんと広げて見せられたような、そんな映画だ。

開始2分で、ぐいぐいと引き込まれる。
かっこいい街ではなく、たんなる中途半端な田舎の話。
イケメンでもクールでもなく、全然いけてない連中がのた打ち回る現実だ。

定職にもつかず、その日暮しでギャンブルとシンナーに溺れる主人公のヤンキー。
もう救いようがないほど迷走しているのだが、よくみると彼だけではない。
他の登場人物も、やはり出口の無い迷路の中で喘いでいる。
その迷路は現実には迷路ではなくて、東京までつながる一本道の国道沿いのことだ。
そこにはいつ頃からかしらないが、パチンコやサラ金、フランチャイズのチェーンばかり
が流れ着き、上辺の華やかさだけは充実している。
でも、日本中が同じ景色になってしまい、そしていつの間にか迷路が出来てしまった。
ラストは意見が分かれるだろう。逃走か、たんにラリってるだけか。
あるいは、迷路からの脱出か。

地域にも寄るだろうが、地方出身者というのは、たいてい見聞きしたことのある話だろう。
進学であれ就職であれ、みんな何らかの形で脱出してきているはずだ。
中学の同期が100人いれば、60人くらいは都市に出て行くわけだから、そりゃ地方は
寂れるわけだ。仕事でも遊びでも、新しく生まれるものなんてたかがしれている。

僕自身、心の底には「おまえは田舎に何もしちゃいないじゃないか」という後ろめたさ
のようなものがある。それが映画に引き込まれた理由だ。
そういう意味では、本作で描かれる20号線沿いは、今の地方の原風景であるとともに、
そういった地方出身者の原罪の姿でもある。

見終わってふと気づいた。
この映画はどこかイージーライダーに似ている。
監督に聞いてみたらニヤリと笑っていたので、意識はしていたのだろう。


現在、VoiceWaveにて富田監督との対談を放送中。

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2 コメント

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Unknown (井戸)
2009-06-09 17:21:49
わたしは地方出身者どころか地方者そのものですが、この話題は重い。
なにより、そのどうしようもなさ加減が。

その上で、ロードサイドに繁殖するあの情景が同じまま続くかというと、
それもないんじゃないかというのが地方にいるものの実感ですよ。
ネットと安価/無料な宅配網があのような商形態をそのままのさばらせるとは思えない。
自分は合理的な選択の結果、わざわざロードサイドの店に行くことをやめましたよ。
結局、答えは"ゼロ成長"だの"そろそろゆっくりしよう"ではなく先に進むしかない、ということでしょう。

田舎者は映画見に行けなくて残念。
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Unknown (めるめる500☆)
2009-06-09 21:10:26
ロードサイド型業種の多くは、非正規従業員で成り立っている業態なのも問題ですね。

こういった業態の存在の前提となる非正規雇用。雇用規制論者はどう考えているんでしょうか?
(製造業に関しては、雇用規制が強くなれば海外移転すれば良いだけですから問題ないでしょう。)
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