* june typhoon tokyo *

脇田もなり＠HMVコピス吉祥寺【インストア】

ライヴ

2019-07-13 23:59:55

　足りなかった自信を武器にし始めた、飛躍の嚆矢を体感。

　7月31日に『I am ONLY』『AHEAD!』に続く3rdアルバム『RIGHT HERE』のリリースを控える脇田もなりが、アルバムに先駆けて7インチ・シングル「エスパドリーユでつかまえて」を発表。7月9日よりその発売を記念したフリーのインストア・ライヴが展開されているなか、13日のHMV record shop コピス吉祥寺でのステージにギリギリで足を滑り込ませて観賞してきた。

　ふわふわと揺蕩うようなラップ風歌唱の導入が印象的な「ディッピン」を皮切りに、5曲で約30分。メインディッシュとなるのはもちろん、シングル収録の2曲。「エスパドリーユでつかまえて」は一十三十一作詞、Dorian作曲というリゾート感を意識した作り。曲調の路線は、サマーブリーズな一十三十一マナーではあるものの、そこへ彩り鮮やかな表現力の振幅も携えてきたヴォーカルによって、新たな“脇田もなり”像を提示。衣装やメイク、ルックスのトータルバランスなどを含め、大人の色気を上品に醸し出すモードへと突入した感もあるが、直接的に声色でそのムードを作るというよりは、詞世界や楽曲性を加味した上でささやかな艶というアクセントをつけていて、ナチュラルな成長を感じさせた。その表情には落ち着きと仄かな色気が窺える。

　一方、カップリングの「FRIEND IN NEED」は作・編曲、プロデュースをおなじみの冗談伯爵の新井俊也が担当。軽快なダンス・グルーヴが敷かれた踊れる曲で、新井らしいソフィスティケイトなソウルポップ然とした作風が印象的。本ステージでも披露した「LED」のベクトルに寄り添いながら、2019年版脇田もなりというフィルターを通した瑞々しさが発露している、といえばいいだろうか。

　個人的に初めて聴いたのが配信限定の「PEPPERMINT RAINBOW（SWINGIN' BIGBAND VER.）」。リミックス名よろしくスウィンギーなビッグバンド・ジャズ風のアレンジの洒脱な曲だが、オリジナルの「PEPPERMINT RAINBOW」がニュージャックスウィング作として効いていただけに、自身の嗜好からするとやや微妙に思えるところも。ただ、自身の嗜好というところを除いても、スウィングジャズなアレンジというアイディア自体は妙案だと思えるが、歌唱とトラックとのマッチングがピンとこなかった。何が腑に落ちないのかという思いが頭を過ぎりながら終盤にスローダウンしたアウトロを迎えて、ハタと感じたのは、原曲の歌唱テンポがこのリミックスアレンジだと微妙なのかなと。アウトロのテンポ（意図的にビッグバンドのステージのエンディングのイメージでテンポを落としたのかもしれないが）やそれに近いテンポで本編もややラフ気味に歌ったとしたら、よりスウィング感とこのところ垣間見られてきた艶が巧くフィットするのではないか。とはいえ、あくまでも初聴きの第一印象でしかないので、今後聴く回数が増えると、その印象も変わるかもしれない。

　リリース記念フリーライヴは翌14日の渋谷・HMV record shop 渋谷と錦糸町・タワーレコード錦糸町の2回で終え、いよいよ3rdアルバム『RIGHT HERE』リリース・プロモーションへと本格的に入っていく。同アルバムのリリースツアーは8月下旬の金沢から名古屋、大阪、福岡を経て、9月23日の東京・CLUB QUATTROがファイナル。今作は幾度もディレクションを重ねて仕上げた自信作と自ら口にするだけの充実と確信が宿っているのだろう。もしかしたら、あまり気づいてはいないが、試行錯誤の上に重ねた飛躍的な成長の途中というものを、今は見ているのかもしれない。足りなかった“自信”が武器になれば、ギアはさらに上がる。

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＜SET LIST＞
01　ディッピン
02　FRIEND IN NEED　（*）
03　LED
04　PEPPERMINT RAINBOW (SWINGIN' BIGBAND VER.)
05　エスパドリーユでつかまえて　（*）

※（*）song from single「エスパドリーユでつかまえて」

＜MEMBER＞
脇田もなり（vo）

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