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爽やかな佇まいでモダンなポップスを歌うシンガー、星野みちるの自主企画イヴェント〈星野みちるの黄昏流星群〉。その第5弾となる〈VIVID SOUND Presents「星野みちるの黄昏流星群Vol.5」〉が、9月7日にリリースされたカヴァー・アルバム『マイ・フェイバリット・ソングス』のリリースパーティを兼ねて開催。Wack Wack Rhythm Bandのメンバーを中心とした“流れ星楽団”をバックに歌うほか、アートディレクターの信藤三雄がリーダーを務め、80年代初頭に2年活動して解散するも2012年に復活を遂げたバンド“スクーターズ”の出演、Perfumeが在籍したアクターズスクール広島の後輩となるアイドル・ユニット“まなみのりさ”や篠崎愛らとのアイドル・グループAeLL.のリーダー経験もある“西恵利香”などがゲスト参加するという、この手のライヴハウスでの公演としてはなかなか豪華な内容。
その主たる目的は、当初は“and more...”とアナウンスされていた出演者にこの2月末にEspeciaを卒業した脇田もなりがオープニングアクトで登場するということ。Especia卒業後は音沙汰なくその動向にヤキモキしていたファンも多かったと思うが、9月に入りソロ・シンガーとして再始動し、11月にシングルを発表することが告げられた。この23日の〈黄昏流星群Vol.5〉で晴れて復活となる貴重なステージを観賞すべく、代官山UNITへ足を運んだ。
◇◇◇
VIVID SOUNDからのソロ・シンガーとしての再出発打診を受け、大阪から上京した脇田もなり。星野みちるを手掛けるはせはじむのプロデュースによるソロ・デビュー・シングルも披露されるとあって、旧体制のEspeciaのファンも多くオープニングアクトに目を注いだ。
冒頭に披露された「IN THE CITY」はディスコ・ポップで、旧体制Especiaとの近似性も感じられるサウンド。インドネシアのバンドでEspeciaに「アビス」を提供したikkubaruのカヴァー「Cloudless Night」を挟んで、最後はファンキーなギターとシンセベースが鳴るもそれほど黒さを感じさせずメロウな雰囲気も含んだミディアム「あのね…」。以前のように突き抜けるような歌唱はあまり見せずにいたのは、ソロ・シンガーとして新たな一面を引き出したいという思惑もあるか。これまではグループとしてのソロ・パートだっただけに、ソロで歌われる叙情的な詞世界は、彼女の言葉や表情がより伝わってくるという意味で新鮮と言えるだろう。
ただ、このオリジナル2曲だけでは判断しづらい、というのが正直なところ。はせはじむプロデュースというところで星野みちる路線を継承あるいは寄り添う形になるのか、シンガーとしての脇田もなりのポテンシャルを強調するスタンスに移行していくのか、しばらくはその動向を見守りたいところだ。
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あっという間に脇田もなりのオープニングアクトが終わり、次にステージインしたのが3人組のまなみのりさ。まなみ(谷野愛美)、みのり(岡山みのり)、りさ(松前吏紗)の3人の名前を繋げたのがグループ名となっている。同郷でアクターズスクール広島の同窓ということもあってか、まなみがロングヘア、みのりが金髪ショート、りさがボブと、Perfumeよろしくしっかりとそれぞれのキャラクターイメージを作っている。TV等では見たことがあるのだが、ライヴは初見。彼女らについては“ライヴでファンがぐるぐる回るキラー・チューンがある”という程度の知識しかなかったが、2007年にインディ・デビューというからもうすぐ10年選手となりヴェテランの域。ヴォーカルワークや歌唱力に強烈なインパクトがある訳ではないが、3人がそれぞれの長所を伸ばし、短所を補うというバランス感覚がいい。ダンスにも時折Perfumeを思わせる“振り”も見え隠れして、先輩の良さを受け継いだトライアングルの妙を感じた。
楽曲は毒気のない爽快なダンサブル・ポップが中心。「ポラリス Episode ZERO」や「真夏のエイプリルフール」を聴くに、アイドルというよりJ-POPとしての純度が高そうな楽曲で、きっかけ次第で広く受け入れられそうな感じがした。
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3番目は西恵利香。2014年9月でアイドル・グループのAeLL.が無期限活動休止となり、ソロ活動に専念しているようだ。彼女は名前は聞いたことがある程度で、楽曲の知識も皆無。Erika.名義でのミニ・アルバム1枚を経て、2015年1月に西恵利香としてデビュー。この日はシングル「MUSICを止めないで」をはじめ6曲を披露したが、何といってもその歌唱力が魅力。いわゆる“アイドル”出身(今もその立ち位置なのかもしれないが)としては群を抜いているといっていい。非常に快活で不純度が限りなく低い声質で、爽快というよりも痛快という印象が強い。80年代の邦楽ポップス(洋楽を意識したファンキーなアレンジなど)やニューミュージックを意識した作風にも合っている。どことなくEPO(とハーフのファッションモデルを足した)を想起させるルックスもあって、この日は星野みちるが「土曜の夜はパラダイス」を披露したが、彼女の方がよりそのカヴァーにハマるような印象も。
まだ主だったヒットはないようだが、調べてみると誕生日が平成元年の1月11日と“1”並びのゾロ目。幸運の持ち主なら……今後の大きな飛躍が期待出来るかもしれない。
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最後はこのイヴェントの主役の星野みちる。元AKB48ということだが、大きくヒットする以前の第1期ということで、それも今や昔とのこと。彼女を見たのは、2013年10月のタワーレコード新宿店の15周年を記念したライヴ〈タワーレコード新宿店15周年大感謝祭~N/E/W/H/O/T/E/L~〉公演(詳細はリンク先参照)以来か。トークでは“ゆるふわ”というか本人も「イライラするでしょ」と自虐するほどの気ままっぷりだが、ステージでは一変して楽曲の世界へと入り込む歌唱とのギャップが魅力。小西康陽、高浪慶太郎ほか気鋭の制作陣が楽曲提供を手掛け、“渋谷系”あたりを緩やかになぞるような曲風を中心に発表しているが、ただ、彼女の場合は、星野みちるでしか成し得ない“みちるワールド”をどれだけ楽しめるかが、彼女のライヴを満喫する第一歩なのだと思う。
新譜『マイ・フェイバリット・ソングス』から惜しげもなく楽曲を披露し、途中で台本棒読み(しかも背後のスクリーンに映し出される)の侠客芝居を模したと思われる寸劇(最後に袋に入っていた小判、もといハッピーターンをフロアにいる“貧乏な民衆ども”にばらまくというオチ)を挟んで、流れ星楽団をバック・バンドに迎えての二部構成。星野みちると流れ星楽団は手の内を知った仲のようで、星野の“フリ”にもしっかりと応える一方、演奏では一体感ある高いテクニックで歌い手をサポート。かつて共演で披露したことがあるというスクーターズを呼び込んでのモータウンやドゥー・ワップの要素をアレンジに採り入れた「恋するフォーチュンクッキー」、西恵利香が再登場しての星野みちる楽曲デュエットなどヴァラエティに富んだ構成でフロアに和やかながらもホットな心地良い空間を醸し出していく。
そのほか、昭和時代風のアイドルコールを強要(?)する「腰抜け男子にアイラビュー」などでの毒づいたMCもありつつ、歌唱ではスウィートネスと艶やかさを自在に行き来する柔軟性を披露。アイドルらしいキュートな少女性を見せたかと思えば、しっとりとした大人の表情をも兼ね備えたりと、実に猫の目のように変化するステージングは、いつの間にか虜になってしまう中毒性をも秘めているような気がした。
ところで、このライヴ中のバックスクリーンにはサリー久保田によるVJが施されていたのだが、斉藤由貴や南野陽子の『スケバン刑事』時代の映像や「ウォークマン」のCM、『オレたちひょうきん族』の懺悔室の神様の映像など、ヴィジュアル面からも80年代モードを演出。ぽわんとした印象ながらも実は要所要所で計算高かったりする(?)星野のターゲット層を的確に射抜いた戦略を、文字通り背後から援護射撃しているようで、なかなか面白かった。
◇◇◇
<SET LIST>
≪脇田もなり≫
01 IN THE CITY
02 Cloudless Night(Original by ikkubaru)
03 あのね…
≪まなみのりさ≫
01 ポラリス Episode ZERO
02 Darkness
03 桜エトランゼ
04 真夏のエイプリルフール
≪西恵利香≫
01 MUSICを止めないで
02 予感
03 常花
04 Morning Sun
05 private dance
06 サマーパーティ
≪星野みちる #1≫
01 インターステラー
02 星間連絡船~Night Voyage~
03 私はシェディー
04 SWEET 19 BLUES(Original by 安室奈美恵)(*1)
05 夏なんだし
06 SUMMER CANDLES(Original by 杏里)(*1)
07 い・じ・わ・る・ダーリン
08 ワンダランド
09 この道で
10 土曜の夜はパラダイス(Original by EPO)(*1)
≪寸劇≫
「みち松三度笠」
出演:星野みちる、まなみのりさ、西恵利香、長野文夫(VIVID SOUND社長)
≪星野みちる #2≫ (順不同)
01 私がオバさんになっても(Original by 森高千里)(*1)
02 ずっと一緒さ(Original by 山下達郎)(*1)
03 You Love Me
04 ピーベリーを見つけたら
05 腰抜け男子にアイラビュー
06 彼のアイリッシュ・セッター
07 恋するフォーチュンクッキー(with The Scooters)(Original by AKB48)(*1)
08 ディスコティークに連れてって(with 西恵利香)
09 恋のファンフェアー(with 西恵利香)
≪ENCORE≫
10 天国のキッス(Original by 松田聖子)(*1)
11 マジック・アワー
※(*1): song from album『マイ・フェイバリット・ソングス』
<MEMBER>
星野みちる(vo)
SPECIAL GUEST:
西恵利香(vo)
まなみのりさ(vo)
脇田もなり(vo)
友情出演:
ロニーバリー(The Scooters)(vo)
ビューティー(The Scooters)(vo)
信藤三雄(The Scooters)(tambourine)
流れ星楽団:
小池久美子(Wack Wack Rhythm Band)(as)
Tomoko(Wack Wack Rhythm Band / sloppy joe)(tp)
三橋俊哉(Wack Wack Rhythm Band)(ts)
伊藤寛(Wack Wack Rhythm Band)(key)
山下洋(Wack Wack Rhythm Band)(g)
後藤正成(SCAFULL KING, WUJA BIN BIN)(bs,fl)
岩渕尚史(sloppy joe)(b)
原gen秀樹(ds)
福田恭子“おきょん”(perc,cho)
サリー久保田(VJ)
◇◇◇
◇◇◇
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