4月になってからYahoo!の地図のデザインが一新された。
まず、小・中縮尺図に残っていたアルプス時代のベースマップが消滅し、ゼンリンのものに替えられた模様だ。その影響もあるのか、中縮尺図における道路網のメリハリが失われている。また、道路が混み合っているところでは潰れてしまっている。自社制作を止めることによるコスト削減を優先した結果だろう。
次に、アルプス時代からの特徴とも言えた、市区町村や町大字による色分け表現が無くなった。GoogleMapsのような一様な色調になり、視覚的な「ジオコーディング」ができなくなったのはとても痛い。検索窓に住所文字列を入力すれば正確な位置が出るから、もうそういう色分けは不要と判断したのかもしれない。
さらに、これもまたアルプス時代からの特徴であった道路幅、線号(ラインの太さ)の絶妙なバランスが低下し、建物色わけによるメリハリ感も低下した。おまけに施設注記の情報量が特に中縮尺図で激減した。
高い視覚的なダイナミックレンジと豊富な情報量を特徴としたアルプス社の地図は、今回のデザイン変更によって自らそれに終止符を打ったと理解できる。GoogleMapsの”見た目改善”程度のデザインであるし、情報量の点ではマピオンの方が多い(いずれもゼンリンのデータを使用)。今までYahoo!地図が卓越していた部分が大きく失われている。
思い起こせば、中学生の頃から私は市販の地図表現に不満を持ち続けていた。唯一”許せる”レベルにあると思っていたのが、「ビジネス愛知88」というアルプス社の地図表現だったが、それでも不満でいっぱいだった。それがあったので、大学時代にその会社でアルバイトができる機会が得られたことが心からうれしかった。そこで仕事を手伝ううちに、自分の不満が地図デザインのどの部分から発生しているのかがわかるようになってきた。それは色使いという素人にもわかる要素に加え、線の太さや線種、文字の書体と級数、記号のスタイル等のミクロな設計によって出来上がっていることを知り、満足のいく仕上がりを実現することの困難さを実感した。
当時のアルプス社は地図デザイン面では改善著しく、先進性にあふれていた。最新の地図デザインを見るたびに、私の不満が一つ一つ解消していく、そんな夢の時代だった。90年代前半、地元の名古屋近辺の1/12500~1/20000クラス、1/70000クラスの図面は、私の不満がほぼ解消されて完成度を高めた。新しい地図帳が出版される際には、しばしば私は印刷工場に行って色調の指示をするために立ち会った。特にグレーの色はインクの調合と印刷機の調子による視覚的変化が大きいので神経質になった。そういう時を過ごし、私はその地図を愛するようになった。
実は、私は今度のiPadの発売時に、Yahoo!の地図を表示するのを楽しみにしていた。iPadは地図帳に最適なデバイスだ。高精細の液晶は紙地図に匹敵する表示品質を提供するので、スクロールも良いが、昔ながらのページをめくる地図帳をiBookStoreで販売してくれたら買っちゃおうと思っていた。それだけに、iPad販売直前のこのデザイン変更は悲しい。せめてさらばと言わせてほしかったが、ネットの地図は紙地図と違って手元に残らない。愛していた地図が消えてしまった。
まず、小・中縮尺図に残っていたアルプス時代のベースマップが消滅し、ゼンリンのものに替えられた模様だ。その影響もあるのか、中縮尺図における道路網のメリハリが失われている。また、道路が混み合っているところでは潰れてしまっている。自社制作を止めることによるコスト削減を優先した結果だろう。
次に、アルプス時代からの特徴とも言えた、市区町村や町大字による色分け表現が無くなった。GoogleMapsのような一様な色調になり、視覚的な「ジオコーディング」ができなくなったのはとても痛い。検索窓に住所文字列を入力すれば正確な位置が出るから、もうそういう色分けは不要と判断したのかもしれない。
さらに、これもまたアルプス時代からの特徴であった道路幅、線号(ラインの太さ)の絶妙なバランスが低下し、建物色わけによるメリハリ感も低下した。おまけに施設注記の情報量が特に中縮尺図で激減した。
高い視覚的なダイナミックレンジと豊富な情報量を特徴としたアルプス社の地図は、今回のデザイン変更によって自らそれに終止符を打ったと理解できる。GoogleMapsの”見た目改善”程度のデザインであるし、情報量の点ではマピオンの方が多い(いずれもゼンリンのデータを使用)。今までYahoo!地図が卓越していた部分が大きく失われている。
思い起こせば、中学生の頃から私は市販の地図表現に不満を持ち続けていた。唯一”許せる”レベルにあると思っていたのが、「ビジネス愛知88」というアルプス社の地図表現だったが、それでも不満でいっぱいだった。それがあったので、大学時代にその会社でアルバイトができる機会が得られたことが心からうれしかった。そこで仕事を手伝ううちに、自分の不満が地図デザインのどの部分から発生しているのかがわかるようになってきた。それは色使いという素人にもわかる要素に加え、線の太さや線種、文字の書体と級数、記号のスタイル等のミクロな設計によって出来上がっていることを知り、満足のいく仕上がりを実現することの困難さを実感した。
当時のアルプス社は地図デザイン面では改善著しく、先進性にあふれていた。最新の地図デザインを見るたびに、私の不満が一つ一つ解消していく、そんな夢の時代だった。90年代前半、地元の名古屋近辺の1/12500~1/20000クラス、1/70000クラスの図面は、私の不満がほぼ解消されて完成度を高めた。新しい地図帳が出版される際には、しばしば私は印刷工場に行って色調の指示をするために立ち会った。特にグレーの色はインクの調合と印刷機の調子による視覚的変化が大きいので神経質になった。そういう時を過ごし、私はその地図を愛するようになった。
実は、私は今度のiPadの発売時に、Yahoo!の地図を表示するのを楽しみにしていた。iPadは地図帳に最適なデバイスだ。高精細の液晶は紙地図に匹敵する表示品質を提供するので、スクロールも良いが、昔ながらのページをめくる地図帳をiBookStoreで販売してくれたら買っちゃおうと思っていた。それだけに、iPad販売直前のこのデザイン変更は悲しい。せめてさらばと言わせてほしかったが、ネットの地図は紙地図と違って手元に残らない。愛していた地図が消えてしまった。
>ネットの地図は紙地図と違って手元に残らない
そうですね、今更ですが深い言葉ですね。
と聞いて、慌ててYahoo!地図を見に行きました。
色分け、意外と便利だったんですよね。住所が「○○町」までしか分からないときに、どのあたりなのか調べるときなどは、Google MapよりもYahoo!地図を使っていました。
色分け表現がMapionに生き残ったのは、不幸中の幸いでした。
たしか、郊外にいくにつれて縮尺が小さくなっていく市街地図帳を最初に出したのは、アルプス社だったと思います。面白そうだ、と買いに行ったのは、高校生の頃だったか。
わたしは東京育ちでしたが、それがアルプス社の地図との出会いでした。
住所から位置を探すだけが、デジタル地図ではないと思うのですが…。
一目見て「○×社の地図だ!」っていうのが・・・
地図表現も知的財産だと思うのですが、とっても残念です。
iPhoneのY!地図というアプリでは、まだ以前のデザインの地図が見られます(4月10日現在)。どう比べても、以前のデザインの方が機能的でした。地図の個性を失ったら、その個性を評価していたユーザーを失います。個性がいらないのなら、検索と一体化されているGoogleが一人勝ちするのですが、実際にはそうなっていないことが、地図には個性があって、それが評価されていることの証明です。
アルプスは、私のキャリアの中核をなしています。徐々に人も変わり、経営母体が変わり、位置づけも変わっていくので仕方ないことではあり、別に口出ししたいとは思いません。進化することは歓迎ですが、明らかに劣化するのでは悲しいです。
Yahooがやらないのでしたら、どこか他の地図会社に働き掛けてでも存続させたいですね。