横浜スローライフ -- My slow life in Yokohama

位置情報、地理情報に関するサービス、その他日常生活から思ったことを気ままに記す不定期のんびり日記

Orkney MapServerの販売終了について

2013年10月06日 22時57分24秒 | OSGeo/FOSS4G
 先月末付けで、2004年4月から販売を行ってきた「Orkney MapServer」の販売を終了した。同時期に発売した「GRASS GIS」と共に、オークニーの基盤を作った製品として、私は今でも心から愛している。ご愛用いただいた皆様には、大変感謝している。この場を借りて心からお礼申し上げたい。

 「Orkney MapServer」は、オープンソースの地図配信ソフトウェアMapServerをコアに、空間データベースのPostGISと、関連するライブラリ、さらに日本語によるマニュアルをひとまとめにした、「FOSS4Gスタック」である。これを採用することで、Webサイトで地図を配信することが、大変容易になった。しかも税込9万9800円の価格設定は、それまで商用の類似機能製品が、その数十倍の価格設定であったことから、一種の価格破壊のようにとらえられ、話題を呼んだ。

 2004年のIPA展示会に出展した「Orkney MapServer」

 もともと、MapServerもPostGISもオープンソースなので、そういう意味では”無償”なのだが、「ソースコードからビルドして日本語環境下で問題無く動作する」ところまで持って行くのは、当時はかなり手慣れたエンジニアでないと難しかった。特に、MapServer4.0で言語の国際化対応(私の会社と大阪市大などのチームで実施)がされるまでは、日本では事実上使えない代物だった。結果的に、世界中でもここ日本だけがこの種のパッケージが成立する市場となり、その意味で海外のFOSS4G関連企業からも珍しがられた(うらやましがられた面もある)。

 私は、昔から、そして今でもそうなのだが、地図や位置情報の活用のハードルを下げたいと思って事業を行ってきた。「Orkney MapServer」というパッケージは、そういう思想を体現するものとして市場に投入し、お陰様でユーザーの皆様から良い評価をいただけた。日本のWebGISエンジンではMapServerが早い段階で圧倒的なシェアを誇るようになったのも、この「Orkney MapServer」が起爆剤になったと思われ、私は大変誇りに思っている。反面、商用ベンダーからの恨み節もかなり聞こえてきたりしたのだが、それはユーザーの選択の結果であって、私どもがどうしたからというのではない。

 出荷以来(実は正確な本数を数えていないのだが)数百本出荷されたのではないだろうか。そして、関連する地図データ製品(これも数年前に販売終了した「GIS Datapack」)とあわせて、特に当初は私の会社の売上の重要な部分を占めていた。

 ここ数年、開発メインストリームからダウンロードできるソフトウェアの日本語対応も安定し、またWeb上での日本語化されたドキュメントもいくつか得られるようになって来たこともあり、「Orkney MapServer」は徐々に販売本数が減って来ていた。

 そこで、来年の10周年を迎える前の今回、思い切って、その歴史の幕を閉じることにした。

 念のため申し上げておくが、このことは、オークニーがセールスフォース連携の事業に軸足が移っていることと直結しているのではない。それがあっても無くても、日本国内でのFOSS4Gの普及という歴史的な役割を終えたのだ。オークニーのFOSS4Gへのコミットは、別の形で行っていきたい。