まだいろいろ書き残しておきたいこともあるように思います。
でも、この未完成感もいいのだろうと考えました。 まだ辞めた実感もありませんし・・・。
このお店、後をやられる方が ほぼ決まりました。来春には新しいオーナーシェフによって装い新たに 素敵なパン屋さんが誕生・再オープンされるでしょう。（名店ドンクでチーフを勤めた経験者ですよ 第１回カリフォルニア・フィグ レシピコンテスト入賞） 嬉しいことです。
ご愛顧頂いた皆さん、応援下さった皆さん、本当にありがとうございました。
拙作「パン屋の気持ち」「パン屋の気持ちⅡ 疾風伝」 閉幕です。
次の夢に向けて 年明けからは 歩き出そうと思います。
家族全員が揃いました。 みんなお店に立ってくれました。開店の日もこうでした。 わざわざ、花束や ワインを届けてくださった方も 沢山いらっしゃって嬉しかった。「美味しいパンを ありがとう、また 元気になったら頼むからね。」と厨房に 声を掛けて下さる方も数名居られて、恐縮でした。
あっと言う間に いつもより多めのパンが売り切れました。 閉店です。
カーテンを閉め切って、厨房で「ポエット 一家のパーテイ」です。 「お父さん、泣かないジャン。」と末っ娘。
女房が挨拶。
「大変だったと思われるかもしれないけど、 お父さんの 夢に 一緒に付きあうことが出来て、感謝してます。 ・・・・・ご苦労様でした。」 と。
３人の娘が 懸命に 涙をこらえていました。
思いもよらぬこの言葉に ほぼ８年前からの このメンバーでの疾風・・・・、本望だと 思いました。
「退職金も、株を売ったお金も みんな使って・・・・・それも たった６年間 好きなことに使い切っただけで、何にも残せずに 家族みんなの為に使わずに、申し訳なかった。」と言ったら、
「ああ、それは お父さんのお金ですから、それで良いんじゃないですか・・・。」
と答えた女房。
ほっと、しました。
「朝市」「秋祭り」などへも ４年目くらいから参加しました。 「埼玉商工会報」に写真入のインタビュー記事を掲載していただいた御礼と 知名度を上げる為でした。が、やはり体力的に厳しくなり 今年はどちらも不参加です。
周辺に 大型スーパーのモールがいくつか誕生し、街中が一段と廃れていくように思えてなりません。 そんな中で 町の商店活性化を目論んでの商工会の企画ですが、さらに工夫していかないと 活性化を促進する役割りを果たせなくなってしまいそうです。どうなっちゃうんだろう洋品やさん、電気屋さん、自転車やさん、金物屋さん・・・・、そんな中で 当方は背筋をぴんと張ってやってきました。 もうちょっと若かったらなぁ～ ・・・とも思います。
地域の方たちも いろいろです。 お店の前を通るたびに こちらを覗き込んで笑みを送ってくれる方、敢えてこちらを見ずにシラッと歩いていく人、皆さん 面白い。
お店の前のバイパスが上下各２車線になり、ドライバーには便利になったのでしょうが、小売店には ちょっと立ち寄る車が少なくなったのかもしれません。近くにあったコンビニ店が 引っ越していったくらいですから。
当店に立ち寄られるお客さんは わざわざ「ポエットのパン」を、ということですから有り難いことです。感謝です。 ごく近隣よりも 少し遠くからいらっしゃる方のほうが多いのは、パン好きの人の パン屋さんだったんだろうと、ちょっぴり嬉しいです。
さあ、閉店まで わずか・・・・・。
当初は 食パンも「胚芽」「玄米」等、毎日やっていましたが、連日の食パン３種類は かなりの身体負担になってきました。 いつ頃からか、角食だけにしましたが、胚芽、玄米とも珍しいことや 特にファンがいらして曜日を限定して 再スタートしました。 それを機に 今の「水曜・スイスロール 木曜・胚芽食パン 金曜・気まぐれスペシャル 土曜・玄米食パン 日曜・極上山食」の曜日限定メニューになりました。 これらには必ず毎週「予約されるファン」の方がいらっしゃいます。作るほうも 気合の入るメニューでした。 
こういったもの同様、例えば「カントリーロールのSさん、リンゴのパイのIさん、べーグルのAさん・・・・」という具合に 来店時には必ず まとめて買っていかれる方も少なくありません。 Yさんなどは 今日も 胚芽食パン８斤と 調理パン類を全種で、６千数百円を買っていかれました。「あんたは 天才よ。 こんな美味しいパンは他にはないのに この後どうしようかね。」と 励ましていただいたばかりです。
こういったポエットファンの方たちで、定番品同様に 「曜日限定」も定着したのだと思います。 ほんとうに あり難かったです。
当初、思い描いていたものより ちょっと不足していたのは「個性的な 数品」です。これらを 少し補ったのが 曜日限定と 焼き菓子類だった・・・・・ら、・・かも・・・と思います。
最終週に向けてのお店のデコレーション、ちょっとゴテゴテ気味ですが、飾りたいもの全部を 置こうと思います。 もう一つ、何を流そうかということです。そうBGM。このところは フレンチをメインの初冬に暖まる「フレンチ・ポップス」らしきものを中心に 流していましたが、最後はやっぱり・・・・・・・ 「たくろう」でしょう。 このBGMも当初からは色々 変遷。旧友からの贈り物もあれば 昔 買い込んだものの中から選んだりしました。 プレーヤーが、かつて勤めていたP社の ２５枚チェンジャーなので 季節ごとの 好きなCDを揃えていました。
最近になって、自分で 選んだ曲をCDに編集・コピーして 使っていました。
で、最終週は ２枚を流し続けます。 １枚目は 「ファイト/乾杯/言葉に出来ない/永遠の嘘をついてくれ/春夏秋冬/唇をかみしめて」です。各々ライブ版を集めました。最終日は これを一日中流そうかと。
いろんな思いで BGMも流しました。が、自分の好きな曲を流しっぱなしでも良かったんだろうと 今思います。 パン屋にあった、若い人が知っている、元気のある、そんなものをと気を使ったこともありました。
でも、自分の好きなもので ずうーっと やっていても良かったんだ、と思います。
いよいよ、この後５日間を残すのみとなりました。 店内をいろんな物で飾ります。最近習い始めた「油絵」も 描いたもの全てを飾ってしまおうかと思います。
以前から売り場には 珍しい素敵なものが沢山並んでいます。 これらの９０％以上が「ゆめや」さんからの頂きものです。 季節ごとに 本当に可愛らしいものがあり、お客さんからも「何処で買ったの？」とか よく聞かれました。 「ええ、外国製で・・・。」とかなんとか答えています。 
ゆめや（彼女）さんのことについては いわゆる幼なじみ ということだけにしておきます。 彼女のブログ http://blog.goo.ne.jp/yumeya0611 をご覧になって下さい。
並ぶパンたち、香りと 厨房からもれるオーブンのスチーム音・・・、こんな中で わくわく 時にはゆったりと 買い物をしていただく為に お店のセンスが耀きます。 ゆめやさんのおかげで この辺りにはない素敵なお店という評判をいただきました。
開店３年目２００７年夏に「４度目のそけいヘルニヤ手術」をしました。 この病気の原因には 持病っぽい腰痛など腰や、背筋と腹筋などの筋力の低下があるそうです。 私の場合は 腰痛をかばう為の体の使い方に 仕事での「長時間の立ち作業、重いものを えいやっ と動かす瞬間的リキミ」が影響したようです。 もちろん、腹膜がもともと弱いせいもあり、経験者の大半は 何度か繰り返すことも多いそうです。
「パン屋さんて そんなに筋力仕事なの?」と言われたことがあります。 売り場から厨房をご覧になって そうとは見えないのでしょうね。 ミキサーボウル、小麦粉袋、ピールはそのままでも１０ｋ以上ですし、両手で焼き上がったパンの乗っかる天板を運びもします。 
パン屋さんは みんな 腕っぷし 見事です。 この齢になって、マッチョかよ なんて思いましたモン。 滋養強壮ドリンクの愛飲家ですし、腰痛予防を兼ねた 日帰り温泉愛好者になってしまいました。
趣味で家庭でパンを焼く、お菓子を焼く というのと、商売でのパン屋さん、お菓子屋さんの仕事は 随分違います。 机上の資料を眺めながら ああだ、こうだと言っていた仕事が長かった者の体にとっては ちょっと 酷な毎日だったのでしょうかね。
この後、筋肉が衰えるのも 寂しいか・・・・。
体力だけでなく 体の動きも衰え始めたのを感じました。 考えられないタイミングで火傷をしたり、ちょっと動いて 機械の端に頭をぶつけたり、使い慣れた粉の入った箱をひっくり返したり、いつも棚に置くモノを どうしてか冷蔵庫にしまったり・・・・、なんの躊躇もなくオートマチックに済ませていたことが そうなくなりました。「これは、まずい。」
そのうち、砂糖と塩を間違えたりしないかと 思ったりもしました。 これは、仕事への熱意が薄れたわけでも 注意力が落ちたわけでもありません。確信しています。
あと３割ほど多く作ることを続ければ 預金通帳残高欄がマイナスになることはなかったでしょう。３割程度なら もうちょっと、宣伝すれば 作った分だけ売れたとも思います。でも ３割多く作るには 夕方の休み時間を無くし、冷凍生地を増やすことになったでしょう。
これは、お店をやろうとした出発点とは違った方向です。 それはやりません、出来ませんでした。 「そうですね。」と言う女房が 依りどころでした。
頂いたブーケを