それはまた別のお話

観劇とか映画とかの感想文を少しずつ

『中川晃教コンサート2010 HAKUJU HALL』12/24

2010-12-25 | ライブ
「中川晃教コンサート2010 HAKUJU HALL」
~Musical 『THE WIZ』より~

12/24(金) 19:00~21:00 HAKUJU HALL(東京)  L列13
中川晃教(Vocal) / 大坪正(Piano)

終ったときにつくづく思ったことがふたつ。
ひとつは、映画版WIZを予習しておいて良かった…ということ。
もうひとつは、
この人は本当に、希有で素晴らしい歌い手であるということ。

厳かなピアノのソロ『Overture』の後に続き、スタンドマイクの前に立った彼は、
最初の曲からフルスロットルだった。
マイケルがチラついた『You Can't Win』、
原曲よりもかなりハイスピードだった『Ease On Down The Road』、
ドスが効いていてこちらは美空ひばりがチラついた
『Don't Nobody Bring Me No Bad News』。
高い声、低い声、張りのある声、威嚇する声、
ささやくピアニシモと天井を揺るがすフォルテシモ。
ありとあらゆる技術と表情を惜しげもなくひけらかす。

ラス前の『Believe In Yourself』が終わるときに、私は本気で願った。
次の曲が最後ならば、どうか歌い出さないでほしい。
ずっとずっとエンドレスで聞いていたいのに、終わらないでいてほしい。

彼もきっと同じ気持ちだったのに違いない。
始めようとするピアノの音を手で「待って」と制して、空を仰ぎ一息つく。

この日の出来上がりにひとつだけマイナスをつけるとしたら、
「ペース配分を間違えた」ということかもしれない。
去年のライブでの『Home』は本当に良かったから、
今日は「何はなくともこの曲だけ」と期待していた。
しかしここまでで全力を使いきった彼の声は、
私が期待していたような輝きは少し薄れてしまっていた。

でもそれがそれも一つの表現だったんだろう。
ここまでノンストップで、登場人物の若干の台詞以外は
全て歌だけで構築してきた長い長い冒険の旅を終えて、行きついた『Home』。
声が少し上ずっても、これは最高の『Home』だった。
一緒に『WIZ』の世界を旅することができて、感じることができて幸せだった。

エンディングの一音までキッチリと再現してくれた後は、
私はもう「これ以上歌わなくていいから」とまで思った。
アンコールも正直、不要だった。
『WIZ』の世界が閉じた後は、何も要らなかった。


でも。
逆に言えば敷居の高いライブでもあった。

争奪戦だったチケットをなんとか入手し(しかも結構高額なのに)、
1年で最も大事なクリスマス・イヴという日に、東京まで来て(しかも平日なのに)
なおかつ事前に映画の内容を予習してくることを期待され、

カカシなのかライオンをなぞらえたのか、とんと解らない衣装のことは敢えてツッコまず、
「これアップが動画サイトで流れたら話題になるかも」という感じの
もはや百面相と言えなくもない、その歌う表情を正面から受け入れ、

そんな難関を潜り抜けてこないと、この会場の椅子に座ることができない。
その世界が、珠玉のものでなくて他になんなのか。

最後にピアニストの大坪さんが言った言葉が全てだった。
「この人天才だから」。
羨望と若干の諦めが入り混じった言葉を、私たちも同じように理解する。
瑣末なことは目を瞑らなくてはならないけれど、
それでも私たちは最高のクリスマスイブを、ここで迎えることができた。
怒涛のような歌声を浴びながら。






(セットリスト)
1.Overture
2.The Feeling That We Have
3.Can I Go On?
4.He's The Wizard
5.Soon As I Get Home
6.You Can't Win
7.Ease On Down The Road
8.What Would I Do If I Could Feel
9.Slide Some Oil To Me
10. Mean Ole Lion
11. Be A Lion
12. Emerald City Sequence
13. Don't Nobody Bring Me No Bad News
14. Is This What Feeling Gets
15. A Brand New Day
16. Believe In Yourself
17. Home
(アンコール)
きよしこの夜~終らないクリスマス

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『LOVE LETTERS』12/10  中川晃教×神田沙也加(アフタートーク編)

2010-12-11 | 舞台
この日の終演後、アフタートークがありました。
舞台の上の2客の椅子の他にもう2客椅子が運ばれてきて、
演出の青井陽治さんと、司会の方が座ります。

「まず、今日演じてみてどうでしたか」と感想を聞かれるあっきー。
そこには久々にハイテンションなあっきーがいました。
「アンディーを演じている自分が現れて、その自分を見ている自分がいる」
というような話を長々とするんですが、
ごめんなさい、私にはこの発言を文章にする能力がありません…
言いたいことは理解できるんだけど。
「目の前の殺人事件を止められない自分がいるような」との言葉もありました。

沙也加ちゃんの方は「くさい表現だけど、演じられて幸せだと感じていた」と
さらっとまとめて話していました。

この日の二幕は実に感動的で、司会の方も
「何度も見ていて結末も知っているのに、久々に泣けた」とのこと。
沙也加ちゃんは既に舞台の上で頬を濡らし、
あっきーは袖にはけたときから目が真っ赤だったそう。
青井さんはそんな二人を「ここまでやるとは」としきりに褒めていました。

この舞台は稽古は一度だけ行うそうです。
初めてのカップルは、青井さんによるレクチャーのあと稽古をするのだけれど、
今回は2演目なので、一幕を読み合わせたあとに簡単なレクチャーがあっただけらしい。
でもこのレクチャーがとても面白いんだそう。聞いてみたいです。

あっきーはずっと「沙也加さん」と呼ぶのだけれど、
再演だし「沙也加ちゃん」と呼んでほしい、一回「さん」付けしたら一曲歌ってもらうから…という約束になっていたそうです。
でもこの日も「神田さん」とか呼んでました。
「あそこにピアノ用意してありますよ」とも言われていた。
いや~時間があればこの場で歌ってもらっても構わないんですが!

そしてあっきーが楽しそうに話しだす。
「僕ちょっと思ったんです。『メリッサをやってみたい』って。」
これには会場も司会の方も「えぇ~っ」という反応。
「今まで(海外公演も含めて)そういう例はあったんですか?」の問いに
「坂東玉三郎さんと麻実れいさんで、初回はそのまま、2度目は役を変えてみたらどうかと夢想したことがあった」と青井さん。
実現はしていないようですが、面白そうです。
(因みに19thでは中村中さんがメリッサを演じていました)

「では最後にこれからの予定を」と言われ、24日のコンサのことを話し出す。
これがまた長くて、時間が心配になりました。
『WIZ』をテーマにしたライブがやりたいと考えていたけれど、来年が忙しくなりそうだから「今のうちにやっちゃえ」と思ったそうで。
今回の脚本にも「オズの国」が出てきますよね、と青井さんに言われても
これは喰いつきが悪かった。結びついていないんでしょうか。

そして沙也加ちゃんの活動を司会の方が紹介するときに、
「えっ何ですって?もう一回言って下さい」と茶々を入れるあっきー。
強調してもらって宣伝に花を添えよう、という意図はわかるのですが、
「もう~後で話すから!」と沙也加ちゃんに窘められていたのに笑えました。

本編も含めて、ずっと沙也加ちゃんに引っ張られているのが面白かったです。


劇場を出ると、にわか雨が降っていた。天気予報では振るとは言ってないのに。
そういえば、2年前もテアトル銀座を出たら突然の夕立ちに見舞われたことを思い出す。
ちょっと濡れたけれど、気持ちのよい夜を過ごせました。
ありがとう、アンディーとメリッサ。
そして絶妙のタイミングで照明を操作したスタッフの方にも、ありがとう。
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『LOVE LETTERS』12/10  中川晃教×神田沙也加(本編)

2010-12-10 | 舞台
『LOVE LETTERS』20th Anniversary Christmas Special
12/10(金)19:00~ PARCO劇場D列下手

作=A.R.ガーニー 訳・演出=青井陽治
出演=中川晃教×神田沙也加

2年前に観たときは、物語を追うのに精一杯でした。
朗読劇というのを観るのも初めてだったし、
何よりあっきーが突然金髪にしてきたので、
登場の瞬間に会場全体が「!」という雰囲気になってたのも記憶に新しい。
しかもあのときは、本を持つ手が震えるほど緊張していた彼と同じように、
私も緊張してしまって、あまりよく覚えていない。

それでもその時の日記に「リベンジ希望」って書いていたので、
思いの他早く念願かなって嬉しかったです。

にっこりと微笑みながら舞台に登場したあっきーの衣装は、
品のよいツイードのジャケットと白いカッターシャツ、
ベージュのサルエルパンツとビビッドな格子模様のソックスと革靴。
舞台の上には、低いテーブルと2客の椅子のみ。
このセットは初演から20年間殆ど変っていないんですね。

椅子に座るとすぐ、あっきーはテーブルの上に置いてあったコップの水をゴクゴクと飲む。
飲み干すかと思ったらちょっとだけ残す。
(アフタートークで「残すところが僕らしい」と言っていたような)
それを見て沙也加ちゃんは「時間ないんだけど」という仕草。
そして胸をトントンと叩き、深呼吸をして徐に本を開く。

でも二人が「素」だったのはここまでで、
幼いアンディーがメリッサの誕生日パーティに招待されたお礼の手紙を読み始めると、
すうっと物語の中に取り込まれる。

2年前のあっきーは、何故か読んでいるうちにだんだん下を向いてしまったのだけど、
今度は読み進めるうちに持っている本がだんだん上に上がってくる。
そのときだけ、会場に響く声色が少し変わってしまうのだけれども、
その分、物語の運びが加速度を増していきました。

アンディーは一言で言えば「ヤな奴」で、
メリッサは、可愛らしく強かで奔放で繊細で、そして実に健気。
2年前は、沙也加ちゃんの真直ぐな取り組みもあって、私はメリッサに肩入れした。
空気を読めずデリカシーの欠片もないアンディーに、
メリッサは何故そこまで魅かれてゆくのか?
他にもっと頼るに値する男はいなかったのか?
舞台上のメリッサに駆け寄って「コイツだけは止めた方がいいよ」って
忠告したくなったぐらい。

一幕最後で、アンディーは長い手紙を書く。

…自分は手紙を書かずにはいられないのだ、とにかく書くのが好きなんだ。
手紙を自分の手で書く、どこからでもない、自分の中から湧いてくるものを。
手紙がぼくなのだ。たった一人のぼく。…

アンディーから「自分の許には何も残さずぼくの全人格を送る」と
強制的に手紙を押しつけられるメリッサが、
「私を手紙地獄から出して!」とまで言っているのに。
そこまではっきりと自分を理解しているのか、彼は。

ラストで彼は死んでしまったメリッサの母親に向かって、また長い手紙を書く。
そこで彼はどんなにメリッサが大切だったかを語るのだけれど、
それは全て「自分」のためだ。
書かないと、これから生きてはいけないのだ、彼は。
照明が暗く暗くなっていくのに反比例するように私の涙は夥しくなっていったけれど、
それは最後に「ありがとう」と言い切るメリッサに感情移入したのではなく、
アンディーが余りに哀れで悲しかったからだと思う。
そんなアンディーを、私は目の前で手に取るように感じることができた。

再び照明がついて、二人はまたにっこりとご挨拶。
あっきーが左腕を腰に当てると、
沙也加ちゃんはその腕に飛びつくように腕をからませて、
下手の袖へはけていった。
前日の組み合わせのカップルも同じようなことをしていたらしいから、
ここまでが演出なのかな。


若い二人の組み合わせだからか、
2年前とは違ったアンディーとメリッサに会えてよかったです。
続くトークショーでも、演出の青井さんが「30代になる前にもう一度…」と
呟いておられました。
そのときは、きっとまた全然別のアンディーとメリッサなのだろう。
このカップルに会えて、私も幸せでした。
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「SAMURAI7」12/05(日)大千秋楽

2010-12-05 | 舞台
『SAMURAI7』12/05(日)ソワレ 青山劇場 1階N列下手サブセンター

本日、大千秋楽。
数多く観ているわけではありませんが、私が見た中で一番よかったです。
今日がDVD収録だったら良かったのに…

この日のマチネ(前楽)はアドリブネタ満載だったようですが、
ソワレは大した寄り道なしにサクサク進みました。
心なしか台詞もテンポアップしてて、長くなるであろうカテコ用に時間を残したのかな。

一幕のギャグパートも、みんな「まとめ」に入ってました。
ヘイハチは、ツッコミのお姉さんに「23回ありがとうございました」って丁寧にお辞儀。
ウキョウ様はテッサイに向かって「今までいろいろゴメンね」って謝ったりしてGJ!
(このウキョウ+テッサイのパート、いろいろパターンがあった模様…
ここだけでいいから全回観たかったよ~)

正直、初日は「…大丈夫かっ?」といろんな意味で手に汗握りましたが、
日に日に進化していく役者の演技、殺陣のスピード、どれも見応えがありました。
ファンの欲目かここまではずっとウキョウ目線で見ていたけれど、
やっとこさ7人側から感情移入できた…というか。
まあこの回は唯一の後方席で、全体を見渡すことができたのもよかった。
2幕のあっきーソロのとき、舞台では全員が踊っているのに初めて気づく(大遅)
カンベエ殿のダンスなんて滅多見られないし、もっと見とくべきだった!

『女信長』のときも同じ感想を書きましたが、
それぞれの役者が、それぞれの持ち味を最大限に発揮した舞台でした。
求められるものを過不足なく提供する。
この「過不足なく」が大事なのに、最初はそのバランスが崩れていたのかも。
後半はあっきーに引き摺られるように凄味が出たのが見事でした。

カツシロウの三浦くんは、文字通り目がキラキラでお肌ツルツルだし、
キュウゾウのニッシー(最早ニックネーム)は、
クールな役柄とカテコの饒舌さのギャップに惚れちゃったし、
カンベエの雅也さんの隙のなさはもう惚れ惚れするし、
他のキャストの方にも語りたいこと一杯。

あっきーがこの舞台に出演しなかったら、きっと一生観ることがなかった役者さんたち。
出会えてよかったです。
2週間の間に情が移った、と思えばそれまでだけれど。

でもきっと、「女子」なら思うよね。
やっぱり結婚するなら優しそうなゴロベエかな…
でも愛人として囲われるならカンベエ殿だろうし…
キュウゾウとデートしたら皆に羨ましがられるだろうし…
そうそう、カツシロウのようなヘタレな後輩がいたら、
お局様として叱り飛ばしつつも可愛がっちゃうかも…
劇場からの帰り道、そんなことをつらつらと考えながら明日への元気を貰えるような、
そんな作品でした。
以上!
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「SAMURAI7」12/01(水)マチネ

2010-12-01 | 舞台
『SAMURAI7』12/01(水)マチネ 青山劇場 1階F列センター

本日は貴重な平日マチネ。
ご夫婦連れ、そしてあっきーファンが多いように感じました。
なので今日のレポは他の方にお任せ
…にしたいけれど、もう手持ちチケは楽の1枚だけなのでつらつらとメモ書き。

全体として凄みが増しておりました。
殺陣がスピードアップした分、台詞部分はタメが入る。
キュウゾウさんが進化してたなぁ。
死に際にカツシロウに語る台詞が迫力があり、こと切れる間際が泣かせました

そしてアドリブ率はますますアップ。
海猿ネタ、行ってみヨーカドー♪などがポンポンとテンポ良く出てきます。
ウキョウさま唯一のアドリブどころは一幕ですが、
「テッサイ、その帽子…」のあと無言…
テッサイが「はいっ?」って焦るのなんの(やるならやれ!)

正直言うと私は「内輪ネタ」や「中の人ネタ」がちょっと苦手。
笑えるしファンは嬉しいとは思うけど、せっかくの舞台なんだから、
板の上ではずっとカツシロウやキュウゾウでいて欲しいのですが。

それを考えるとゴロベエさんのダジャレは日替わりで常に新ネタで、
毎回レベルが高くて感心してしまう。
今日のダジャレは「明治天皇が、目いじってんのー」
整いましたネタは、
「橘大五郎とかけてオーデコロンととく。
その心は『たいしゅう(大衆/体臭)』を惑わせます」
でした。
あっきーネタはもう出てしまったのかなー。

そして、シノが「おはスタ」に出ていたヒデミだと本日初めて知る(遅)
去年まで息子と一緒に毎日見ておりました。大人っぽくなりましたね
ついでに兼ねてからの疑問ですが、コマチ役が双子のどちらだかがわからない
アマデみたく劇場のどっかに名前出していないのでしょうか。

(本日のウキョウさま)
出だしから声にドスが効いている。
ルイヴィトン場面は
ジュテ・ジュテ・ステューニュを上手から流れるように(誰かに教わってるか?)
幕間の前説で、
「ウキョウさま~という掛け声が小さいと、ウキョウの歌も音量が小さくなります。大きければウキョウさまは最後にずーっと音を伸ばします」
ファンのツボを押さえた説明ありがとう。

この土日から「降臨」との噂が飛び交っていましたが、
確かに何かが降りてきていました。
「人間ってずるいよねぇ」後の一人語りの狡猾さ。
キララに自らを斬らせた後に聞く
「ぼくが人間だったら、愛してくれた?」の神々しさ。
右手が細かく震え出し、左手の指が衣装をせわしなく握り始めたのを見ると
こちらの掌にもじわりと汗が滲む。
ただこういう言い方は語弊があるとは思いますが
とても緻密な計算を感じました。
「何かが降りてきている」と言うよりも「何かを降ろしている」というような。
他の役者さんファンからは「この場面の一人語りが長すぎる、後ろで立っている4人を考えろ」と言われちゃったけどね

残りの公演も事故も怪我もなく、無事に楽を迎えられますように。
以上!
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