日本裁判官ネットワークブログ

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判例時報(2/21号)にネットのシンポが掲載(昨日の続き)

2012年02月25日 | 瑞祥

 裁判員裁判については,色々な角度からの議論があります。先日のこのブログの「昨日の最高裁判決について」(2・14)にもコメントがいくつも寄せられました。関心の高さを窺わせますが,そんな裁判員裁判について,当ネットワークが昨年7月3日に開催したシンポジウム「裁判員裁判の量刑」の結果が,判例時報(2/21号,判例時報社発行)に掲載されました。
 裁判員裁判には,取り上げるべきテーマが多数あるように思います。その中で裁判員裁判の量刑という一テーマを取り上げたにすぎませんが,裁判員裁判に現実に参加された裁判員や法曹,それに裁判員裁判の研究者のご意見は,とても傾聴すべきもののように思います。法曹だけでなく,一般の方にもわかりやすく,読み応えのある内容になっています。是非ご一読ください。

 印象的な発言はいくつもあるのですが,裁判員経験者の田口さんと,裁判員裁判に取り組んでおられる神山弁護士(日本弁護士連合会の裁判員本部事務局次長)の発言の一部を紹介します。全文は,判例時報(2/21号)を手に取ってお読みください。

【田口】
 私自身が体験した裁判員裁判における評議は,ひとことで言うと,正に「熟議」に尽きます。・・・(中略)・・・認定作業やその順序,法律解釈など適切な進行をしてもらい,ただ一人でも疑問が湧くと,話を元に戻して検討し直すなど,丁寧で細やかな配慮にとても感服しました。そうやって何度も事実認定を繰り返して一つの答えに収斂していきました。議論の内容は言えないんですけれども,例えば,自分の意見を相手が納得するまで説明を尽くす。また,だれかの意見に対しては自分が納得するまで説明を求めるといったように,それらの主張のぶつかり合いが,合議体全員を交えて行われたのです。もちろん裁判官に対しても同様に納得のいく説明を求めて,また逆に理解してもらえるように言葉を尽くします。6人,裁判官入れて9人いれば,似たような考えはあっても最初から同じ考えを持つことは難しいので,それでも言葉の応酬を繰り返していくうちに,だんだんと出口の光が見えてくるんですね。そして,全員の意見を内包した一つの解に結実する論議を私は「熟議」というふうに自分では感じております。
 ある裁判員メンバーが,考え過ぎて頭から煙が出ちゃうよとこぼしていました。また,会社の会議もこの評議のようだったらばどれだけ効率的だろうかとも(笑)。

【神山弁護士】
 裁判員裁判は,我々弁護士にとって,量刑を判断する情状弁護というのは一体何かということを改めて考えさせられる契機になりました。・・・これまでの情状弁護は一体どんなものだったのか。きっとこんなものだったと思います。「被告人には多々有利な事情があります(これをどんどん述べていきます)以上を総合すると,寛大な処分が相当です」。まず有利な事情をできるだけたくさん述べる。そして,それぞれがなぜ有利になるのかという事情は説明をしない。ただ羅列をしているだけで,どうしてそれらを総合するとそういう結論になるのかという理由も言わない。最後の結論も明示をしないことがほとんどでした。もちろん,死刑に対して無期だとか,実刑に対しては執行猶予とかは言いましたけれども,懲役何年という検察官の論告に対しては,何年が相当とは言わなかったはずです。寛大な処分をと言っていたのです。
 ・・・・(中略)・・・
 弁護士は,相当な刑が何であるかについて手がかりを持ちえなかったということになります。したがって,言い方が悪いんですけれども,ともかくこれだけ有利な事情があるから,あとは裁判官よろしくね,と言うしかなかったのです。市民の方が入ってきたことによっていろいろと前提条件が変わりました。 ・・・・(中略)・・・
 そして,どうすれば説得ができるのか。どのように考えれば説得力が増すのかということを弁護士が真剣に考える中で,「情状」というものも進化するんだろうと思います。今日は裁判官がおられるので,裁判官に聞いてみたいところですが,裁判官ですらこれまでは余り情状について真剣に考えていたのかどうか,結局,その相場とかいうものによって,グチャっと決めて,はい何年ということではなかったのか。量刑判断というものは,例えばこういう事情があり,こういう位置づけを持つからというふうに,もっともっと考えていかねばならないのではないか。裁判員裁判になって裁判員の方々が判断するようになったおかげで,情状の進化があり,適切な量刑ができるようになる気がしています。


昨日の最高裁判決について

2012年02月14日 | 

裁判員裁判で無罪とした判決の控訴審が一転して,破棄有罪とした事件について最高裁第1小法廷が2月13日に一審支持の判決を出しました。

控訴審は基本的に事後審であり,破棄するには一審判決が不合理である具体的理由が必要である,その理由が明確ではない控訴審判決は破棄を免れない,としたもので,ある意味では当然ともいえる判決ですが,私は大変感銘を受けました。

ひとつは,第1小法廷には,金築,白木両氏という裁判所を代表する刑事裁判官が在籍し,どちらかといえば保守的と評されていたようですが,裁判員裁判の意義を高らかに評価する格調高い判決を出したことに,時代の変化と最高裁の権威を感じました。

白木裁判官の補足意見は,特に裁判員裁判制度の施行後は,と断ったうえ,高裁裁判官が自分の心証通りに一審判決を変更する,これまでの慣行を強く諫めています。

いわれてみると,私もかつて高裁の裁判官のころに,最終の事実審理であることを考慮して,かなり自分なりの心証を形成して一審判決を破棄していたような気がします。もっとも一審判決が余りにひどいと感じたときだけだと自己弁護していますが。

裁判員裁判が改めて控訴審の在り方を刑事訴訟法の原則に戻るよう促しているようです。

裁判員裁判制度は,証人中心主義という本来の刑事訴訟を回帰させたように,計り知れないエネルギーを「持っている」のではないでしょうか。

                                                                   何も持っていない「花」

 


今夜、横浜地裁判事が誘拐される

2012年02月11日 | チェックメイト

土曜ワイド劇場(テレビ朝日系列で夜9時から)
法医学教室の事件ファイル「判決の報酬!!誘拐された裁判長」

http://mobi.tv-asahi.co.jp/pr/i/20120211_21522_02.html

サスペンスドラマには珍しく、重要人物としてに裁判官が登場しますが、判決を逆恨みされて誘拐される役みたいです。(チェックメイト)


「ゴーヤ大作戦の後日談」(その2)

2012年02月03日 | ムサシ

1 昨年夏に関東地方のある裁判所に出張の仕事ができ,その日の夜は司法修習生時代からの友人である弁護士と約20年振りに再会し,友人の奥さんと3人で酒食を共にした。その際その友人は血糖値が高く,体調不良だと言ったので,肥満体の私が血糖値(だけ)は堂々たる正常値であることを説明し,その理由はゴーヤジュースであるとして,その飲用を勧めた。

2 最近偶然彼に会う機会があった。そしてとても嬉しい後日談を聞いた。彼はその後熱心にゴーヤジュースを飲んでおり,服薬でもうまく調整できなかった血糖値がどんどん改善されて,正常値に近くなり,体調もすっかりよくなったというのである。昨年夏にはもう弁護士を辞めることも考えて,会社の顧問を辞めたりして仕事を減らしていたのであるが,また頑張る気になって,惜しいことをしたというのである。今はまた仕事を増やす努力をしていると話していた。とても嬉しい話である。

3 私もその後も熱心にゴーヤジュースを飲んでおり,血糖値は正常値である。もう1年半を超えて継続しており,多くの友人に教えたり,医師である友人にも勧めた。昨年は,冬はきっとゴーヤを売っていないと考えて,冬に備えて秋に大量に買い溜めをして,所定の大きさに切断して,自宅や事務所の冷凍庫をゴーヤだらけにしたので,きっと事務員も困っていたに違いない。しかし昨年はゴーヤがブームになっていたので,冬でもどの店でもゴーヤを売っていた。沖縄では冬でもゴーヤが収穫できると聞いたような気がする。そこでこの冬は油断して買い溜めをしなかったところ,ゴーヤブームが去ったらしく,入手が困難になってしまった。一時期青くなって後悔もしたが,必死に探し回った成果として,やっとのことで冬でもゴーヤを販売している店を見つけた。一安心したが,どうやら一工夫が必要だということになった。「そこでムサシは考えた」のである。

4 私は,ゴーヤ1本を8等分して,1日1切れ使うので,1本で約1週間分ということになる。そこでゴーヤを4本買ってきて,1回分の大きさに切断したもの1か月分を冷凍保存しておくのであるが,月初めと中頃の月2回,1回に2本ずつ買い足すのである。この作戦は見事に成功している。ゴーヤを売っている店は家族以外には教えないことになっている。

5 私は毎週1回,土曜か日曜の朝,テレビの前にまな板を持ち出して,「ながら族」になって1週間分のゴーヤジュースの材料を作るのが習慣となっている。ゴーヤ8分の1,リンゴ8分の1,バナナ4分の1(バナナは2本使用する)をほどよい大きさに切ってラップに包んで冷凍しておくのである。8回分が製造できることになる。これで毎朝名人芸のごとく自分で短時間でゴーヤジュースを作ることができる。牛乳300CCを使う。コップ2杯になるが,オリーブオイルとゴマオイルを少量加えて,朝食として全部飲む。それにヨーグルト大さじ3杯が朝食である。(ムサシ)


お役所仕事

2012年02月02日 | 

先日こんな経験をしました。

あるホームレスの被告人の国選弁護を担当しました。被告事件は罰金求刑があり,判決日に釈放されることが確実でしたが,帰るところが無ければまた再犯になりかねない,ということで判決前に生活保護申請をしてみよう,ということになりました。

知り合いの不動産業者に安い家賃の住宅を紹介して貰い,その住宅のある市役所に申請しようとしたところ,ホームレスをしていたところを管轄する別の市役所に当座の費用や権利金等を出して貰うための申請をしてほしい,との指導がありました。

そこでその市役所に行きましたところ,ホームレスでもテントを張るような定住状態でない場合は,現在地あるいは相談地で申請を受け付けるはずだ,と頑張ります。

地方財政が厳しい折から,できるだけ負担を減らすための対応と思われましたが,そのとばっちりが被告人にきたのではたまりません。

私はどちらでもよいから,市役所同士で話をつけて欲しいと申し入れましたところ,担当者が電話で約30分間やりあった末,結局当座の費用をホームレス地の市役所が,その後の生活保護費は居住地の市役所が出すということになりました。

二カ所の市役所を行ったり来たりの状態で,裁判所に判決言い渡し期日の変更を申請するなど,疲れましたが,言い渡し後は被告人は無事に新住居に住めようになり,大変喜んでもらえました。

しかし,明日の生活費も無い人たちを惑わせるような,お役所の妙な縄張り争いはやめてもらいたいものです。

                                                寒空を行ったり来たりして風邪をひきそうになった「花」