生垣  ~平成25年6月16日から30日までの法話

2013-06-28 13:32:45 | 法話

「生垣」        6/16~6/30

 さざんかさざんか咲いた道。と、童謡「たき火」を聞くたびに、東京では山茶花(さざんか)の生垣が作られて、寒い季節に花が咲いているのであろうかと、子供心にいつも不思議に感じられたものである。山茶花ではないが、物古りた常盤木(ときわぎ)の生垣は、瑞々しくて実によいし、春は花が咲き風情があるから毘沙門様の御神域を区切るのに相応しかろうと、藪椿を植栽して十年ほどになる。

 椿の生垣といえば、3m(十尺)程もある銀閣寺垣が天下名高いが、昨今の生垣は植木屋によれば五尺ほどの高さに作るという。五尺もあれば目隠しになるが、背丈が高すぎて素人には手入れはできず、本職、即ち植木屋の手を借りることになるから、物入りになる。もともと、生垣は垣根越しという言葉があるように、腰の高さの三尺、もしくは胸の高さの四尺ほどだったのである。

 とまれ、手入れが欠かせないので、高く伸びた境内の生垣の選定が梅雨時の今、行われているのである。刈り込まれた椿の垣根越しに御神域を覗くと、蝦蟆ヶ池の中島には礎石のみ残るのだが、六月十六日地鎮祭が執り行われる。

 翌十七日からは土木工事か始まり、刈り込まれた生垣の成長と相俟って、辯天堂の御修復工事か順調に進捗すれば、師走には辯天様の御移徒、即ち御引越が行われる。

 春には椿の花が咲き、初夏の生垣の刈り込みの季節を迎えるころには、目出度く落慶法要が執り行われるであろう。


解体 ~平成25年6月1日から15日までの法話

2013-06-28 11:29:51 | 法話

「解体」   6/1~6/15

 去る5月24日に御本尊様の御移徒(おわたまし)が無事に済んで、空家になった辯天堂の解体工事が27日から始まった。昨今の古家の解体は、重機で恐し瓦礫を撤去して一丁上がりになるのが殆どである。木材を再利用するよりも、経済的だからというのが理由だか、これも悲しい話ではないか。

 辯天堂はべ辯天様が御住まいになられた御堂だもの、粗末にすることはできない。かくして、棟梁さんに頼んで、部材の番付を付けて丁寧に解体し旧辯天堂の移築を視野に入れ、とある倉庫に仮置きして貰うことにしたのである。

 実はあの大津波で被災した宮城のお寺から、移築の打診はあったのだが、いざを検討してみたものの、復興計画、いわゆる何メートルをするかの住民同士の話し合いさえ纏まらず、再建の目途が付かないため、頓挫してしまったのであった。

 そんなところに、気仙の津波で罹災した御寺の御住職が、御抱えの大工を伴って解体の済んだ翌日に見学に来た。といっても辯天堂はすでにないので、在りし日の写真と解体された材料を見てもらったわけではあるが、新築工事に比べ工費は少なくて済むから検討はしたいというものの、彼の地も被災地のため建築確認等の手続きで、もう少し時間がほしいという。

 因みに、解体した建物は、数年のうちに建てないと木材が動いて組み立てが難しくなるという。かくして、暫く時間があるわけだから、いいご縁があればと思うのであるが、これは辯天様の願いでもある。