官僚的思考・行動様式に関する論述の中から、印象に残ったものを列挙しておきます。
日本社会の宿痾である官僚的思考・行動様式から脱却するためには、まず相手を四法八方から冷静に観察しなければなりません。
●類語辞典から
・手法・姿勢などが官僚的・・・・・役所仕事の ・ しゃくし定規 ・ 形式主義・ 先例主義 ・ 前例(尊重)主義 ・ 事なかれ的 ・ 型通りに ・ マンネリの ・ 血の通わない ・ 誠意のない ・ 形骸化した ・ 「休まず遅れず働かず」
行動パターンなどが官僚的・・・・・手堅い ・ ソツがない ・ 無難を旨とする ・ 融通がきかない ・ 責任のがれ(に終始) ・ 縄張り意識の強い ・ セクショナリズムに基づく~ ・ (強烈な)自己保存本能をもつ ・ 「(あの人達は)組織防衛となると目の色が変わる」
●丸山真男「であることとすること」の註から
・日本では、近代の制度はあらかじめ出来上がったものとして上から降りて来て、我々を規制するものという実感が強い。その発想は徳川時代の考え方と全く同じである。身分社会を与えられその中で分に安んじたように、民主主義も与えられたものであり、現在の状態を維持することが基本的なモラルになっている。さらに、ものごとは一部の役人が決め、その決め方も前例を遵守するという官僚的思考様式〈註)が拍車をかける。
・官僚的思考様式とは・・・権威主義、独善性、秘密主義、形式重視。規則に対する執着、権限の墨守、新奇なものに対する抵抗、創意の欠如、傲慢、上からの命令は絶対である。お役所仕事。
●小室直樹「危機の構造」から
・エリート官僚のタイプこそ現代日本人の理想像であり、ほとんどの日本人とくにエリートと呼ばれる人々の行動様式はこのタイプに造形されつつある。ゆえにエリート官僚の行動様式の長所・短所は同時にまた、ほとんどすべての日本人の行動様式の長所・短所である。
・かれらもルーティン化した現象に対処する場合なら、結構総合的判断もできるし全体の見通しも悪くない。しかし全く新しい現象が自己の守備範囲外に生起した場合には、完全にお手上げとなって、リーダーとしての無責任を暴露するのである。
・このような人びとは、分業の部品としてみる限り最高の部品である。しかしひとたび全体のリーダーとなるや最悪のリーダーとなる。けだし、彼らは限定された分業の遂行者としての視座しか持ち合わせないため、全体的文脈においてすべてのフィードバック(所見)を総合することはできないから、リーダーとしては最悪のリーダーとなる。
・官僚的思考の致命的限界はイマジネーションの不足と視座の限定からくる、新環境の総合的把握能力の欠如である。
●ブログコメ混めお米「官僚的思考についての考察」から
・官僚は無責任です。そして官僚は自分で色々と決めているくせに、その責任をすべて政治家に取らせようとします。
・政治というのは自分の発言に責任を持たなければできない行動です。政治と責任は切っても切り離せない概念です。政治家の対極に存在するのが官僚です。
・日本でなぜ社会運動が敗北し続けるのか、私が最も注目したのは、日本の政治的無関心層の途方もない厚さです。支持政党を聞かれて支持政党なしという人たちは50%を超えています。つまり、日本の国民はみな上下の差こそあっても、本質的には官僚であり、官僚は政治的に活動してはいけない存在だからです。
●「思考停止大国ニッポン 田原総一朗×出口汪」から
・出口 官僚的な優秀さは、前例に従って事を処理する能力であって、前例のない未知のことに対しては、うまく対処できないですよね。そこが限界。
・田原 だから官僚は「できない理由」を説明する天才なんですよ。「新しいことをやれ」と言われても、「できません。なぜならば」と長々と繰り出す。これを徹底的にやられたのが、ミスター年金と言われた長妻昭さん。厚生労働大臣だった頃、彼が何かやろうとしても、官僚はできない理由を言う。早い話がサボタージュですよね。
・出口 あの頃の長妻さんはやつれていましたが、そういう背景があったんですね。だからこそ新しい時代は、前例に沿って行動するのではなく、正解のない問題に挑む力を養うための教育が必要だと思います
●榊原英資「公務員が日本を救う」から
・明治維新の「革命性」の中心的要素である学制と、客観的学力によってのみ社会的上下を決めるという仕組みは、その透明性、公平性において非常に優れたものでした。
学歴メルトクラシーとでも呼べるこのシステムが時代に活力を与え、多くの若者たちが「坂の上の雲」を目指して努力する重要な契機になっていったのです。
・日本の官僚システムの大きな特色の一つはキャリアとノンキャリアにさい然と分かれていることです。こうしたシステムの大きなメリットの一つは、大学卒業生のベスト&ブライテストを採用できるということです。(日本では外国と異なり)優秀な人材を確保するためには、給与以外の待遇面の配慮をせざるをえません。それがキャリア制度です。
・国家にとって本物のエリートは必要です。多くの官僚たちがそれぞれの専門分野の専門家になっています。専門分野を持ちながら幅広い事柄についての見識も深めていくべきでしょう。
・官庁は行政の手足であり、また中心でもあります。与党が反官僚などということはありえないことです。当然官僚をうまく使って政策を実現していかなくてはなりませんし官僚もそれにていこうするとも思えません。
・事務次官は会社で言えば社長であり、CEОです。大臣は代表権のある会長に相当しますが、執行のトップつまり執行のトップ、つまりCEОは事務次官です。
・政治家と行政官の役割ははっきり区別できますすし、またすべきです。行政官は特定分野のプロになっていくべきです。単なるビューロクラート(事務官僚)ではなく、テクノクラートになることを目指すべきです。
●高橋洋一「官愚の国」から
・行政の世界では、新しい問題について対応することはあり得ない。すべて定型的問題である。官僚には定型的な問題への対応能力が求められ、それ以外のことはまったくする必要がない。いや対応できない。したがって官僚に「未曾有の問題」についての解決策を求めても、求めるほうが間違っている。
・普通の国は「政治的な即応性のある官僚」すなわち政治任用ポストを増やすことで、仮に官僚が独走、暴走したら政権交代することともに葬り去られる仕組みを作っている。日本の場合は、政治家と官僚が完全に分離されるため、いつも行政上の責任をとるのは政治家であり、官僚は一切責任を負わない。
・多くの先進国では、官僚は地味な仕事をする職分であって、クリエイティブな分野は民間に任せる。
<所感>
・上記の論述を読みながら、官僚的思考・行動様式を考察する場合、世界に共通する官僚的思考・行動様式とは異なる、日本独特の歴史と制度という背景を勘案しなければいけないということが判りました。
日本社会の宿痾である官僚的思考・行動様式から脱却するためには、まず相手を四法八方から冷静に観察しなければなりません。
●類語辞典から
・手法・姿勢などが官僚的・・・・・役所仕事の ・ しゃくし定規 ・ 形式主義・ 先例主義 ・ 前例(尊重)主義 ・ 事なかれ的 ・ 型通りに ・ マンネリの ・ 血の通わない ・ 誠意のない ・ 形骸化した ・ 「休まず遅れず働かず」
行動パターンなどが官僚的・・・・・手堅い ・ ソツがない ・ 無難を旨とする ・ 融通がきかない ・ 責任のがれ(に終始) ・ 縄張り意識の強い ・ セクショナリズムに基づく~ ・ (強烈な)自己保存本能をもつ ・ 「(あの人達は)組織防衛となると目の色が変わる」
●丸山真男「であることとすること」の註から
・日本では、近代の制度はあらかじめ出来上がったものとして上から降りて来て、我々を規制するものという実感が強い。その発想は徳川時代の考え方と全く同じである。身分社会を与えられその中で分に安んじたように、民主主義も与えられたものであり、現在の状態を維持することが基本的なモラルになっている。さらに、ものごとは一部の役人が決め、その決め方も前例を遵守するという官僚的思考様式〈註)が拍車をかける。
・官僚的思考様式とは・・・権威主義、独善性、秘密主義、形式重視。規則に対する執着、権限の墨守、新奇なものに対する抵抗、創意の欠如、傲慢、上からの命令は絶対である。お役所仕事。
●小室直樹「危機の構造」から
・エリート官僚のタイプこそ現代日本人の理想像であり、ほとんどの日本人とくにエリートと呼ばれる人々の行動様式はこのタイプに造形されつつある。ゆえにエリート官僚の行動様式の長所・短所は同時にまた、ほとんどすべての日本人の行動様式の長所・短所である。
・かれらもルーティン化した現象に対処する場合なら、結構総合的判断もできるし全体の見通しも悪くない。しかし全く新しい現象が自己の守備範囲外に生起した場合には、完全にお手上げとなって、リーダーとしての無責任を暴露するのである。
・このような人びとは、分業の部品としてみる限り最高の部品である。しかしひとたび全体のリーダーとなるや最悪のリーダーとなる。けだし、彼らは限定された分業の遂行者としての視座しか持ち合わせないため、全体的文脈においてすべてのフィードバック(所見)を総合することはできないから、リーダーとしては最悪のリーダーとなる。
・官僚的思考の致命的限界はイマジネーションの不足と視座の限定からくる、新環境の総合的把握能力の欠如である。
●ブログコメ混めお米「官僚的思考についての考察」から
・官僚は無責任です。そして官僚は自分で色々と決めているくせに、その責任をすべて政治家に取らせようとします。
・政治というのは自分の発言に責任を持たなければできない行動です。政治と責任は切っても切り離せない概念です。政治家の対極に存在するのが官僚です。
・日本でなぜ社会運動が敗北し続けるのか、私が最も注目したのは、日本の政治的無関心層の途方もない厚さです。支持政党を聞かれて支持政党なしという人たちは50%を超えています。つまり、日本の国民はみな上下の差こそあっても、本質的には官僚であり、官僚は政治的に活動してはいけない存在だからです。
●「思考停止大国ニッポン 田原総一朗×出口汪」から
・出口 官僚的な優秀さは、前例に従って事を処理する能力であって、前例のない未知のことに対しては、うまく対処できないですよね。そこが限界。
・田原 だから官僚は「できない理由」を説明する天才なんですよ。「新しいことをやれ」と言われても、「できません。なぜならば」と長々と繰り出す。これを徹底的にやられたのが、ミスター年金と言われた長妻昭さん。厚生労働大臣だった頃、彼が何かやろうとしても、官僚はできない理由を言う。早い話がサボタージュですよね。
・出口 あの頃の長妻さんはやつれていましたが、そういう背景があったんですね。だからこそ新しい時代は、前例に沿って行動するのではなく、正解のない問題に挑む力を養うための教育が必要だと思います
●榊原英資「公務員が日本を救う」から
・明治維新の「革命性」の中心的要素である学制と、客観的学力によってのみ社会的上下を決めるという仕組みは、その透明性、公平性において非常に優れたものでした。
学歴メルトクラシーとでも呼べるこのシステムが時代に活力を与え、多くの若者たちが「坂の上の雲」を目指して努力する重要な契機になっていったのです。
・日本の官僚システムの大きな特色の一つはキャリアとノンキャリアにさい然と分かれていることです。こうしたシステムの大きなメリットの一つは、大学卒業生のベスト&ブライテストを採用できるということです。(日本では外国と異なり)優秀な人材を確保するためには、給与以外の待遇面の配慮をせざるをえません。それがキャリア制度です。
・国家にとって本物のエリートは必要です。多くの官僚たちがそれぞれの専門分野の専門家になっています。専門分野を持ちながら幅広い事柄についての見識も深めていくべきでしょう。
・官庁は行政の手足であり、また中心でもあります。与党が反官僚などということはありえないことです。当然官僚をうまく使って政策を実現していかなくてはなりませんし官僚もそれにていこうするとも思えません。
・事務次官は会社で言えば社長であり、CEОです。大臣は代表権のある会長に相当しますが、執行のトップつまり執行のトップ、つまりCEОは事務次官です。
・政治家と行政官の役割ははっきり区別できますすし、またすべきです。行政官は特定分野のプロになっていくべきです。単なるビューロクラート(事務官僚)ではなく、テクノクラートになることを目指すべきです。
●高橋洋一「官愚の国」から
・行政の世界では、新しい問題について対応することはあり得ない。すべて定型的問題である。官僚には定型的な問題への対応能力が求められ、それ以外のことはまったくする必要がない。いや対応できない。したがって官僚に「未曾有の問題」についての解決策を求めても、求めるほうが間違っている。
・普通の国は「政治的な即応性のある官僚」すなわち政治任用ポストを増やすことで、仮に官僚が独走、暴走したら政権交代することともに葬り去られる仕組みを作っている。日本の場合は、政治家と官僚が完全に分離されるため、いつも行政上の責任をとるのは政治家であり、官僚は一切責任を負わない。
・多くの先進国では、官僚は地味な仕事をする職分であって、クリエイティブな分野は民間に任せる。
<所感>
・上記の論述を読みながら、官僚的思考・行動様式を考察する場合、世界に共通する官僚的思考・行動様式とは異なる、日本独特の歴史と制度という背景を勘案しなければいけないということが判りました。
官僚には政治責任がない。
>・田原 だから官僚は「できない理由」を説明する天才なんですよ。「新しいことをやれ」と言われても、「できません。なぜならば」と長々と繰り出す。これを徹底的にやられたのが、ミスター年金と言われた長妻昭さん。厚生労働大臣だった頃、彼が何かやろうとしても、官僚はできない理由を言う。早い話がサボタージュですよね。
官僚は金を得るために、意思を政府に売り渡した者たちである。
。・出口 あの頃の長妻さんはやつれていましたが、そういう背景があったんですね。だからこそ新しい時代は、前例に沿って行動するのではなく、正解のない問題に挑む力を養うための教育が必要だと思います
正解は、政治家が自分で作ればよい。そのために選挙がある。
官僚は、置かれた地位によって政治判断のために必要な情報収集力は抜群と思います。
そして、情報の分析・問題析出・解決策立案能力については、日本では前例がないが欧米に前例がある場合も含めて、前例がある場合にはかなり優秀と思います。しかし、欧米にも前例がない場合には全く無能です。そして、政治責任は立場上全く負えないし、また負う意志も全くありません。
それなのに、日本では法案の大半は官僚の立案に依存しています。
政治家は責任から逃げられません。しかし、情報の収集・分析・問題析出・解決策・立案を行うシンクタンクを
もっていません。そのため自分で政策をつくることができずに、官僚に頼らざるを得ません。
政治家と官僚の役割で問題なのは、情報の収集~立案を官僚に頼りながらも、責任者として官僚の原案を取捨選択、あるいはヒントにして次元の違う成案を構想し、決断し、官僚を使ってその肉づけを実現する知的能力、組織的能力を政治家がもっていないことにあると思われます。