isorokuのこころの旅路

遊行期に生きる者のこころの旅路の記録です

スウェーデンから何を学ぶか(4)

2011-02-26 14:31:45 | Weblog
スウェーデンから学ぶべきことは、経済・福祉・環境問題にとどまりません。安全保障問題についても貴重な示唆が存在していると思います。
「スウェーデンの防衛政策」というキーワードで検索したところ、三重大学人文学部児玉克哉教授の論文「スウェーデンの防衛政策の一考察 : 非挑発的 防衛理論の実践」を発見しました。大変啓発される内容でしたので、ポイントと思われる部分を最小限引用します。

●非挑発的防衛
・二つの世界大戦で隣国の惨劇を垣間見たスウェーデンは、国民にも一般兵役義務や民防義務を課し、高度の新鋭兵器、軍艦、軍事用車両、航空機などの量産を行ない、近代的なな軍装備を保有している。
・中立の立場を戦時の非常時にも、軍事力を含めた「総合的防衛政策」によって守っていこうというのが、スウェーデンの基本的な防衛方針である。
・非挑発的防衛理論とは、一言でいうならば。「より精密な対空防御システム、反撃ネットワークの形成、対戦車兵器の装備などによって、防御のみに徹し、仮想敵国を決して挑発させたり、脅かしたりするようなことのない軍事防衛」のことである。

●結びにかえて
・スウェーデンほど平和主義の国としてのイメージを内外に徹底しえた国は少ない。・・・しかし、GNPの3~4%を防衛費に注ぎ込み、また国民が大きな異論なく一般兵役義務、民防義務に服し、国の軍事計画を支持している。
・日本との決定的差はいったいどこから生じているのだろうか。決定的な差は政府に対する信頼感が存在しているからであろう。
・福祉にしても防衛にしても、国家が信頼できうる国家であるかどうかがポイントとなる。情報公開が徹底され、社会正義が高いレベルで達成された民主主義こそ、スウェーデンの防衛政策の前提となっているといえよう。


<所感>
・以前尖閣衝突事件を巡って小生の所感として「安全保障の在り方についても、平和ボケから目覚めて白紙の状態から構想しなおす必要があるようです。 現行憲法の前文にある『平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した』という内容は、中国の覇権主義的な行為や北朝鮮の理不尽な事実を見る限り、修正せざるをえないのではないかと思われます」と書きましたが、現行憲法の見直しのためには、スウェーデンの防衛政策からいくつかの示唆が得られると思います。

・もちろん歴史的条件や地理的条件の違いから機械的に参考にすべきではありませんが、本質的な要素の見直しという視点に立てば、自国の立場を非常時にも、軍事力を含めた「総合的防衛政策」によって守っていこうというスウェーデンの防衛政策の考え方は大いに参考になると思います。21世紀の日本は、第二次大戦の経験を踏まえて賛同してきた九条の呪縛から脱却することを考える時期に来ているように思われます。


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4 コメント

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Unknown (すみれ)
2011-02-27 10:15:38
スウェーデンの移民問題は実際どうなっているのでしょうか?
日本も移民受け入れ政策を行おうとしていますが、異文化共生について緊急に学ぶべき問題だと思います。
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スウェーデンから何を学ぶか(4) (isoroku-hitoshi)
2011-02-27 15:16:07
移民問題は一筋縄ではいかない難問ですね。小生は今のところ意見がまとまりません。
岡沢憲芙先生著「スウェーデンの政治」東京大学出版会2009年3月刊を読むと、次の叙述がありました。参考にしてください。
・普遍主義型福祉国家の在住外国人政策の問題点は、在住外国人に対して寛大過ぎることにあるかもしれない。スウェーデンで提供されるサービスの量と質は国際比較すれば群を抜いている。
・経済が不如意になれば、ナショナリズムを先導旗に仕立てた《排除の論理》が登場する可能性がある。
・中央では寛大であろうとしても、負担を強いられるのは地方である。雇用機会と住宅の不足が不満の導火線となる可能性がある。
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Unknown (児玉克哉)
2011-02-28 11:20:10
有り難うございます。非攻撃的防衛を日本の状況にあてはめた本「新発想の防衛論」【大学教育出版)もあります。参考にしていただけると幸いです。
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スウェーデンから何を学ぶか(4) (isoroku-hitoshi)
2011-02-28 14:10:37
児玉先生 コメント有難うございます。早速
アマゾンで発注しましたが、在庫が一時的に無いため、取り寄せに時間がかかるようです。
日本の防衛政策について素人ながら真剣に学んでいきたいので、今後ともよろしくご指導のほどお願い申しあげます。
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