【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【蛙&嫁穫りツアー】

2009年12月30日 | オムコイ便り
 おとといの月曜日、記事を書いて投稿しようとするとネットがつながらない。

 直後に届いたAISからのメッセージを開いてみると、「モデム購入後6ヶ月間の無料サービス(毎月500MB)が昨日で終了した」という。

 この2ヶ月間はネットがまったくつながらなかったのだから、実質的なサービスを受けられたのはわずか4ヶ月間である。

 このことはエンジニアにもオペレーターにも伝えておいたはずなのに、まったく融通がきかないというか、いい加減というか。

 追加購入はATMマシンでできると聞いていたのでコールセンターに電話すると、いつまで待っても英語オペレーターが出ない。

 嫌な予感を感じながら日本語サービスを選ぶと、案の定ひどい日本語で、しかも何度も「少々お待ちください」を繰り返すので、本当に頭が痛くなってきた。

 辛抱の末にやっと分かったことは、「セブンイレブンのATMか、(私の預金口座がある)バンコク銀行支店のATMから振り込めば追加購入ができる」ということだ。

 だが、そんな洒落たもの、もちろんオムコイにはない。

 「少々お待ちください。それでは、バンコク銀行の専用電話番号をお教えしますから、そちらの英語の音声案内に従って、口座番号、ATMカード番号、暗証番号、モデムの電話番号、それに希望の金額などを入力して追加購入をお願いします」

 なんだか、面倒くさいなあ。

 それに、追加購入するパッケージサービスの使用期間に関する肝心なポイントが、彼女の怪しい日本語の説明では、ついに最後まで理解することができなかった。

 やれやれ。

 それでも、今日はとりあえずネットをつなぐことだけはできそうだ。

 そう思いつつバンコク銀行に電話すると、その英語の音声案内の音量が低くてまったく聞き取れない。

 携帯の受信音量を最大にしても、同じである。

 バンコク銀行の音声案内では、以前も別件で同じような苦い経験をしたことがある。
 
 これじゃあ、まったくお手上げだ。

 正月休みは、“象の田起こし”で知られるナーキアンに行こうかとも思っていたのであるが、仕入れもあることだし、ネット問題再解決を兼ねてチェンマイで年越しをすることと相成った次第。

 というわけで、今日はチェンマイから2日前の記事を送信します。

      *********************

 昼の12時過ぎに、村に戻ってきた。

 オムコイ郡最高峰(たぶん)、ドイ・ホイジノーにクルマで登ったのである。

 悪路続きで、なんだか船酔いのように足元がゆらゆらしている。

 2,000メートル級(たぶん)の山並みにぐるりと取り囲まれた山頂からの眺望は壮観だったが、なにせ、昨夜はほとんど寝ていない。

 

 竹のベンチに横になって、2羽の鷲が風に乗ったり急降下したりする様を眺めているうちに、うとうとしてしまった。

       *

 山行きが突如決まったのは、昨日の朝である。

 店を開けるものと思って掃除をしていると、家に母親の食事を届けに行っていたラーが魚穫り用の丸網を手に駆け込んで来たのだ。

「クンター、ホイジノーに行こうよ!いま、蛙がいっぱいとれるんだって。甥っ子や従兄たちにも声をかけたから、もうすぐみんな集まってくるよ」

「あんな山のてっぺんで蛙がとれるのか?」

「うん、山頂の手前にいい沢があるらしい。蛙がたくさんとれたら、山で料理してキャンプしてもいいね」

「おいおい、キャンプって3日も店を閉めるのか?正月も休むんだろう?」

「メーヨム(雑貨屋のおかみ)に聞いたんだけど、クリスマスから新年にかけて山奥の人たちは山から降りてこないし、村の金持ちはバケーションに出かけて商売にならないんだって。雑貨屋はまだいいけど、クッティアオ屋は客が来ないのに店を開けるとかえって赤字になるでしょ?年が明けたら、また頑張るから、ね、お願い!」

 そういえば、いつもは大繁盛の雑貨屋もこのところ閑散としている。

 まあ、ジタバタしても始まらないか。

 潔くあきらめてクルマを出そうとすると、後部座席にはすでに3男のポーと悪ガキ仲間3人が乗り込み、菓子を手に満面の笑顔だ。

 荷台には、従兄のマンジョーとベッ、甥っ子のジョーとチョッピー、隣家の次男、および大量の焼酎、もろもろの調理用具、ネギその他の野菜、カップラーメンや菓子の山、水タンク、それに炊飯器まで積み込んである。

 途中でもうひとりの甥っ子を拾うというから、総勢11名ご一行様だ。

 これがお決まりの村の行楽スタイルとはいえ、この人数を積んでまたあの悪路を走るのかと思うと、正直うんざりしてしまう。

「みんな、嬉しそうでしょう?まだ、誰も行ったことがないんだよ。これまで行きたくても、他の人のクルマにはなかなか乗せてもらえなかったんだって。でも、今はクンターのクルマがあるから、みんな幸せいっぱいだよ」

「・・・」

         *

 山頂の5キロ手前で、クルマを停めた。

 ここにはわずか2軒のカレン族集落があり、蛙の情報を集めようというのだ。

 集落といっても、崖上と崖下で数百メートルも離れている。

 「沢は崖下に決まっている」

 オフロードの急坂を下ると、粗末な小さな割竹壁の家から、50年配の夫婦、3人の娘(ひとりは赤ん坊を抱いている)とひとりの婿、6歳くらいの男の子、3歳くらいの男の子の計8人がぞろぞろと出て来たので、こちらが驚いてしまった。

 他に、鶏多数、山羊数頭。

 人の良さそうな親爺さんに声をかけると、

「よく来た、よく来た。蛙ならいっぱいいるから、ワシが案内してあげよう。昔は、このあたりにも数家族がいたんだけど、不便な上に暮らしも厳しいから、みんなここを離れてしまったんだよ」

 電気も通っておらず、家の裏の小さなソーラーパネルで30センチくらいの蛍光灯1本分の電力を辛うじてまかなっているのだという。

 

 親爺さんの案内で、小さな山をひとつ超え、さらに転げ落ちそうな急坂を下ると小さな沢に着いた。

 親戚軍団は歓声をあげ、パンツ一丁になって臨戦態勢に入る。

 自らも四つん這いになり、顔を泥だらけにしながらこの軍団を叱咤激励するのがわが嫁である。

 岩をひっくり返し、小さな沼を完全掃討しつつ蛭に血を吸われながら遡ること2時間。

 胴長7センチほどの大物を筆頭に、その成果は20数匹に達した。

         *

 玉ねぎのような色と食味の巨大な茎状のもの、胡椒のような香りのする白い花房などを収穫しつつ家に戻ると、さっそく“トム・ヤム・ゴップ(蛙の唐辛子スープ)”を調理し、焚火を囲んでの大宴会である。

 焼酎の酔いが回った親爺さんが、長女とファラン(欧米人)の豪勢な結婚式の写真を引っ張り出して来た。

 しかし、親爺さん、この娘婿のファランがどこの国の人なのか、仕事は何をやっているのか、家はどこにあるのか、まったく知らない。

 名刺や手紙類をチェックしてみると、ドイツ人の翻訳業者であることが判明した。

「その娘さん、最初は日本人のすごい年寄りと結婚してチェンマイに大きな家を建ててもらったらしい。相手は80歳くらいで、そのとき娘さんは15歳だったって。信じられる?ドイツ人の方は1万バーツの結納金をくれただけで、一度も村に来たことがないんだって。ひどいねえ」

 ラーの通訳を聞いているうちに、なんだか頭が痛くなってきた。

 すると、ラーが一番若い娘を指差して、「あの子は、いま17歳だっていうから、ジョーのお嫁さんにどうかしら?」と言い出した。

 おいおい、そんなお手軽な選び方でいいのかよ。

 もちろん、冗談半分なのだが、それを耳にした酔っぱらい親戚軍団が騒ぎだし、ジョーとその娘を一斉に焚き付け始めた。

 初めジョーは逃げ回るだけだったが、思いもよらぬ展開に急速に酔いが回ったらしく、いつの間にかその娘に近づいて、照れくさそうに焼酎のぐい呑みを差し出した。

 おいおい、17歳の初対面の娘に、いきなり焼酎の献杯かよ。

 まだ、まともに口もきいていないじゃないか。

 ハラハラして見守っていると、その娘もまんざらではないらしく、かなり離れ気味ではあるものの、携帯でしきりに音楽を聴きつついつの間にかジョーの隣りに座っている。

 なんだかホッとした途端、こちらも急に酔いが回ってきた。

 家の中の炉端に引っ込んで横にはなったものの、毛布一枚敷いた固い割竹床の上とこの大騒ぎの中ではなかなか眠れるわけがない。

        *

 5時に目覚めると、まだ宴会は続いている。

 驚いたことに、親爺さんも若いもんと一緒に夜明かしをしたらしい。

 ひと足先に起きていたラーが、耳もとで囁いた。

「このお父さん、ジョーのことがすっかり気に入って、すぐにも娘を嫁にもらってほしいって言い出したんだよ。昨日の今日なのに、いったい何考えてるんだろう」

「・・・」

※このところ、同じような手順で撮影し圧縮した写真でもアップできないことがあります。今日の写真もなぜかアップできないので、また改めてトライしたいと思います。

☆応援クリックを、よろしく。
タイ・ブログランキング 人気ブログランキングへ




 

 

 

 

 

コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【冬の水浴び】 | トップ | 【波乱は起きるか?】 »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Sriracha)
2009-12-31 01:34:34
オムコイの正月の様子のレポート期待しています 10年もブログ期待しています
80歳 (シンシン)
2009-12-31 06:09:01
私の知り合いのチェンマイ在住日本人老人も数年前にカレン族の若い嫁さんを貰いましたがその後彼女に捨てられました。

その老人は80過ぎている元医者でチェンマイに来る前はバリ島に家と嫁さんを持っていたそうです。

あちこちで騙されても懲りない人はいますね。

話しは変わりますが私のアドレス駄目でしたか?
今は携帯電話のメールは迷惑メールが多いためpcからの受信拒否設定をしてるのでyahooメールを使ってます。
クンター様はメールは何を使ってますか。
教えて下さい。
Unknown (なかちゃん)
2009-12-31 18:50:04
クンター様
はは!(^^)ラーさんらしいですね、最後の台詞は..。

クンターさん!今年も色々と御指導御鞭撻、また楽しいお話の数々本当に有難う御座いました。また来年も宜しくお願い致しますね!(^^)
奥様共々良いお年をお迎えください。
良いお年を! (クンター)
2009-12-31 20:01:17
Srirachaさん

 今年はチェンマイで年越しをしますので、ご期待には添えませんが、わが村では特別な新年の行事はなく、朝からひたすら焼酎を飲みまくります。
 では、来年もよろしくおつきあいください。

    *

シンシンさん

 私もYahooアドレスを持っているので、大丈夫だと思います。チェンマイに戻られるときは、ぜひご連絡ください。

    *

なかちゃん

 こちらこそ、いつも愉快なコメントをいただき励まされ続けた1年でした。来年も、ぜひ愉快なやりとりが楽しめたらいいですね。お会いできる日を、心待ちにしております。
 パクチー、大好物でしたよね?
御縁 (案山子。(名古屋市在住46歳))
2009-12-31 20:46:13
甥っ子のジョー君、はじまして「案山子。」です。
あなたの働きぶり、誠実さはクンター様から色々伺っております。
写真拝見しました。
なかなかかわいい娘さんじゃないですか。
縁というのは不思議なものですヨ、
年をとればとれるほど感じます。
おっと、クンター様ほどではありませんが。
村の皆様、来年も楽しみにしております。
クンター様、ラー様、お体に気を付けて、良いお年を。

追伸:今年は10月に仕事でプラチンブリーに行ったんですよ。
良縁に期待 (クンター)
2010-01-01 13:00:17
案山子さん

 ジョーおよび村の衆にまでメッセージをいただき、ありがとうございます。娘の親爺さんがしきりにラーに電話をかけてきますが、ジョー自身も「話が早すぎる」と苦笑いしています。
私としては、いい縁がめぐってくるよう祈るだけですが。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

オムコイ便り」カテゴリの最新記事