海は僕の恋人である。様々な困難に疲れ果てたとき、心の安穏を求める時、何も言わずに大きな愛で包んでくれる。海ほどに偉大な愛と優しさを感じたことがない。静寂の海、限りなく透明なブルー、妖精のような白い波、黄金に沈む夕日、鏡のような水面に映る月の顔、早朝の清涼な波風、海は生きている。遠い、遠い昔、山幸彦の妻となった海神の娘の豊玉姫のお家は、深い深い海の底にある竜宮城である。豊玉姫は、日本建国の祖、神武天皇のおばあちゃんだ。人の命は海から誕生した。生命の全てが、人類の全てが、青い水しぶきの中に生きている。僕は海に行くのではない。海に帰るのである。