政府は、昨年12月に「収束宣言」を出したが、国内はおろか海外でもまったく信用されていない【注1】。
福島第一の原子炉建屋が再び地震に襲われれば、それらが崩壊して、当初の事故より大規模な放射性物質の放出が起こる【注2】。日本は、動きが遅くて、危険な核燃料棒を原子炉から取り出していない。【ロン・ワイデン米国上院議員】
(4月に来日して福島第一原発の事故現場を視察した)ワイデン上院議員は、ヒラリー・クリントンらに書簡を送り、4号機の脆弱性を指摘した。同氏は、また大地震が起きたら、オレゴン州や西海岸まで致命的なリスクを与えるような大惨事となるのではないか、と恐れている。【オレゴン州メディア】
4号機の使用済み燃料が崩壊すれば、最悪の結果を招く。たとえプール自体が倒壊しなくても、冷却システムの損傷や漏水などでプールの水がなくなってしまえば、非常に重大な事態に陥る。【ロバート・アルバレス・元米国エネルギー省長官/使用済み燃料問題の第一人者】
東京電力によれば、4号機建屋は耐震補強工事を施した結果、震度6強の揺れにまで耐えられる。
しかし、それを超える地震が起きた場合、どうなるか。東京近郊では、現在M7クラスの直下型地震の危険性が指摘されている。福島第一原発の直下にも、要注意活断層があることが知られている。
東電の対応は、余りにも遅い。4号機の燃料プールに問題が生じたら、チェルノブイリ以上の大惨事になる。周囲の広大な土地は居住不能になり、その居住不能エリアによって日本は南北に分断される。【アーニー・ガンダーセン・米国スリーマイル島原発事故調査に参加した原子力技術者】【注3】
実際、昨年3月の事故直後、近藤駿介・原子力委員会委員長が菅直人・首相(当時)に対して密かに提出したシミュレーションでは、福島第一が制御不能となり、4号機プールの燃料がすべて漏出した場合、①半径170km以内は強制移住、②同250km以内も非難が必要・・・・との衝撃的な結論が示されていた。①は、岩手、宮城、山形、新潟、群馬、栃木、茨城、千葉、埼玉までの広範な土地が含まれる。②となれば、東京、神奈川、山梨、長野の一部なども避難区域に入ってしまう。3,000~4,000万人もの人々が自宅を捨てて逃げ出さねばならなくなる【注4】。
4号機の燃料プールには、使用済みと未使用のものと、合計1,500本、400トン以上の大量の燃料棒が置き去りになっている。
東電は、まず原子炉建屋に放射性物質飛散防止の巨大な覆いを被せ、ついでプールの底に沈んでいるガレキを撤去、その後来年末から燃料棒を取り出す、と計画している。が、この予定通り進むのか、現時点では誰も断言していない【注5】。
プールの中には事故の影響で大量のガレキが沈んでいる。燃料棒が詰まった「燃料集合体」を吊り下げるラックなどが破損している可能性がある。水中に置いたまま、特殊な容器「キャスク」に収めねばならないが、燃料集合体が破損している場合、専用のキャスクを作り直さねばならない。【小出裕章・京都大学原子炉実験所助教】
高放射線量の環境で、ガレキを除くための設備を作り、安全かつ完全にガレキを撤去した後に始めて燃料棒の取り出しにとりかかるのだ。
核燃料は、ただクレーンを作って引っ張り上げればよい、というものではない。万が一、燃料棒が空気中に露出すれば、近寄った人間が即死するほどの放射線を発するのだ。来年末に燃料棒取り出しにかかる、という東電の見通しは甘いのではないか。【アルバレス元長官】
だが、この極度に困難な作業は、時間との勝負でもある。震災の余震は、今後100年以上続く、という京大防災研究所の研究がある。4号機のプールに燃料棒が残っている間に次の巨大地震が起きたら、一撃で日本は終わる。
燃料プールが倒壊したり、水が漏出したりすれば、燃料棒の金属被覆(ジルコニウム)の温度が上がり、摂氏800度くらいで発火、火災が発生し、放射性物質を撒き散らす。4号機で火災が発生すれば、チェルノブイリの10倍のセシウム137が撒き散らされることになる。【アルバレス元長官】
この爆発的火災がひとたび発生したら、コントロールは全くできない。逃げ出す以外に方法はない。
フクシマの問題は、4号機の危機を軸に、国際的に広がりつつある。4号機の燃料プールが崩壊したら、日本だけの問題で済まなくなっていることを今や世界中が知っている。そして、各国は日本政府に疑いの目を持っている。このままでは自分たちも日本の巻き添えにされる。そんな危機感が燃え広がっている。日本政府はそれに気付いていない。【村田光平・元駐スイス大使】
この4月、村田、小出、アルバレスら日米の識者、72のNGOは、潘基文・国連事務総長および野田佳彦・首相に対して、次のような趣旨の緊急書簡を送付した。
(1)国連は福島第一4号機の使用済み燃料プールの問題を取り上げる原子力安全サミットを計画すべきだ。
(2)同4号機に関して独立アセスメントチームを作り、プールを安定化するための国際的支援をコーディネートし、起こり得る大惨事を防ぐべきだ。
【注1】「【震災】原発>「年内に冷温停止」は虚構 ~地下ダムと石棺が必要~」
【注2】「【震災】原発>倒壊の危険にある4号機」
【注3】「【震災】原発>途方もないフクシマの潜在的リスク ~米国技術者の緊急提言~」「【震災】原発>いまだ収束せず ~米国が恐れる「核燃料火災」~」
【注4】「【震災】原発>250km圏内は避難対象 ~機密文書「近藤メモ」~」
【注5】「【震災】原発>「廃炉」という地獄 ~40年後~」
以上、記事「福島第一原発4号機が「爆発する危険性」をどう考えるべきか」(「週刊現代」2012年6月9日号)に拠る。
↓クリック、プリーズ。↓


福島第一の原子炉建屋が再び地震に襲われれば、それらが崩壊して、当初の事故より大規模な放射性物質の放出が起こる【注2】。日本は、動きが遅くて、危険な核燃料棒を原子炉から取り出していない。【ロン・ワイデン米国上院議員】
(4月に来日して福島第一原発の事故現場を視察した)ワイデン上院議員は、ヒラリー・クリントンらに書簡を送り、4号機の脆弱性を指摘した。同氏は、また大地震が起きたら、オレゴン州や西海岸まで致命的なリスクを与えるような大惨事となるのではないか、と恐れている。【オレゴン州メディア】
4号機の使用済み燃料が崩壊すれば、最悪の結果を招く。たとえプール自体が倒壊しなくても、冷却システムの損傷や漏水などでプールの水がなくなってしまえば、非常に重大な事態に陥る。【ロバート・アルバレス・元米国エネルギー省長官/使用済み燃料問題の第一人者】
東京電力によれば、4号機建屋は耐震補強工事を施した結果、震度6強の揺れにまで耐えられる。
しかし、それを超える地震が起きた場合、どうなるか。東京近郊では、現在M7クラスの直下型地震の危険性が指摘されている。福島第一原発の直下にも、要注意活断層があることが知られている。
東電の対応は、余りにも遅い。4号機の燃料プールに問題が生じたら、チェルノブイリ以上の大惨事になる。周囲の広大な土地は居住不能になり、その居住不能エリアによって日本は南北に分断される。【アーニー・ガンダーセン・米国スリーマイル島原発事故調査に参加した原子力技術者】【注3】
実際、昨年3月の事故直後、近藤駿介・原子力委員会委員長が菅直人・首相(当時)に対して密かに提出したシミュレーションでは、福島第一が制御不能となり、4号機プールの燃料がすべて漏出した場合、①半径170km以内は強制移住、②同250km以内も非難が必要・・・・との衝撃的な結論が示されていた。①は、岩手、宮城、山形、新潟、群馬、栃木、茨城、千葉、埼玉までの広範な土地が含まれる。②となれば、東京、神奈川、山梨、長野の一部なども避難区域に入ってしまう。3,000~4,000万人もの人々が自宅を捨てて逃げ出さねばならなくなる【注4】。
4号機の燃料プールには、使用済みと未使用のものと、合計1,500本、400トン以上の大量の燃料棒が置き去りになっている。
東電は、まず原子炉建屋に放射性物質飛散防止の巨大な覆いを被せ、ついでプールの底に沈んでいるガレキを撤去、その後来年末から燃料棒を取り出す、と計画している。が、この予定通り進むのか、現時点では誰も断言していない【注5】。
プールの中には事故の影響で大量のガレキが沈んでいる。燃料棒が詰まった「燃料集合体」を吊り下げるラックなどが破損している可能性がある。水中に置いたまま、特殊な容器「キャスク」に収めねばならないが、燃料集合体が破損している場合、専用のキャスクを作り直さねばならない。【小出裕章・京都大学原子炉実験所助教】
高放射線量の環境で、ガレキを除くための設備を作り、安全かつ完全にガレキを撤去した後に始めて燃料棒の取り出しにとりかかるのだ。
核燃料は、ただクレーンを作って引っ張り上げればよい、というものではない。万が一、燃料棒が空気中に露出すれば、近寄った人間が即死するほどの放射線を発するのだ。来年末に燃料棒取り出しにかかる、という東電の見通しは甘いのではないか。【アルバレス元長官】
だが、この極度に困難な作業は、時間との勝負でもある。震災の余震は、今後100年以上続く、という京大防災研究所の研究がある。4号機のプールに燃料棒が残っている間に次の巨大地震が起きたら、一撃で日本は終わる。
燃料プールが倒壊したり、水が漏出したりすれば、燃料棒の金属被覆(ジルコニウム)の温度が上がり、摂氏800度くらいで発火、火災が発生し、放射性物質を撒き散らす。4号機で火災が発生すれば、チェルノブイリの10倍のセシウム137が撒き散らされることになる。【アルバレス元長官】
この爆発的火災がひとたび発生したら、コントロールは全くできない。逃げ出す以外に方法はない。
フクシマの問題は、4号機の危機を軸に、国際的に広がりつつある。4号機の燃料プールが崩壊したら、日本だけの問題で済まなくなっていることを今や世界中が知っている。そして、各国は日本政府に疑いの目を持っている。このままでは自分たちも日本の巻き添えにされる。そんな危機感が燃え広がっている。日本政府はそれに気付いていない。【村田光平・元駐スイス大使】
この4月、村田、小出、アルバレスら日米の識者、72のNGOは、潘基文・国連事務総長および野田佳彦・首相に対して、次のような趣旨の緊急書簡を送付した。
(1)国連は福島第一4号機の使用済み燃料プールの問題を取り上げる原子力安全サミットを計画すべきだ。
(2)同4号機に関して独立アセスメントチームを作り、プールを安定化するための国際的支援をコーディネートし、起こり得る大惨事を防ぐべきだ。
【注1】「【震災】原発>「年内に冷温停止」は虚構 ~地下ダムと石棺が必要~」
【注2】「【震災】原発>倒壊の危険にある4号機」
【注3】「【震災】原発>途方もないフクシマの潜在的リスク ~米国技術者の緊急提言~」「【震災】原発>いまだ収束せず ~米国が恐れる「核燃料火災」~」
【注4】「【震災】原発>250km圏内は避難対象 ~機密文書「近藤メモ」~」
【注5】「【震災】原発>「廃炉」という地獄 ~40年後~」
以上、記事「福島第一原発4号機が「爆発する危険性」をどう考えるべきか」(「週刊現代」2012年6月9日号)に拠る。
↓クリック、プリーズ。↓



