語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【経済】円安で貧乏になりゆく日本 ~スタグフレーション~

2014年09月07日 | 社会
 円安が日本に与えた影響を最も端的に示しているのは、1人当たりGDPの国際比較だ。IMFのデータによると、14年において、日本の値はアイルランドの79.8%、アメリカの69.4%しかない。
 こうなった大きな理由は円安が進んだことだ。事実、11年には、日本はアイルランドの93.4%、アメリカの92.7%あった。世界の中で、日本は急速貧しくなったのである。
「これは為替レートの変化による計算上の変化にすぎない」という人がいるかもしれない。しかし、そうではない。円安になれば海外から買うものの価格が上がり、これまでのようには買えなくなる。また、海外に旅行すれば、これまでのような高いホテルには泊まれなくなる。右の数字は、現実の生活水準の変化を表している。
 5月の家計調査によれば、世帯当たり実質消費は前年同月比で8.0%の減少となった。勤労者世帯の実収入の前年同月比は、名目0.4%の減少、実質4.6%の減少だ。これには消費税増税の効果も含まれているが、円安で物価が上昇したことの影響が大きい。
 電気料金の上昇は、原子力発電から火力への移行の影響もあるが、大半は円安によるものだ。これは、消費者物価指数(全国)の「電気代」の推移を見ると分かる。すなわち、大震災前の11年1月を基準とすると、円安が始まる前の12年8月までの間に、10.4%上昇した。これは、火力発電シフトにより燃料輸入が増加したことの効果だ。しかし、14年5月までの期間では、29.8%上昇している。12年8月以降、燃料輸入量が格別増加したわけではないので、この時点以降の電気料金の上昇は、円安による輸入額増加が電気料金に転化されたことの結果だ。
「デフレ脱却」ということの実態は、こうしたことなのである。つまり、経済活動が活性化するのではなく、所得や消費が減少しているのだ。日本はスタグフレーションに突入しつつある。 

□野口悠紀雄「スタグフレーションに突入しつつある日本 ~「超」整理日記No.720~」(「週刊ダイヤモンド」2014年8月9・16日合併号)から引用
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