京都大学で開かれたシンポジウム「地域発・グローバルベンチャーの可能性」で、午前に講演1本をやった後、午後パネルディスカッションに参加させていただきました。フロアー、檀上問わず自由闊達な議論が行き交う素晴らしい集まりでした。
以下はメモ。
まず共感を覚えるのは、京大イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門のスタッフの方々は、大学で純粋培養のキャリアを積んできたのでもなく、またたんに企業での実務経験があるというのでもなくABCの融合型の国際経験豊富なプロフェッショナル系人材が中心ということです。
午後のパネルで登壇した方々もこのようなタイポロジーの方々が圧倒しています。類は友を呼ぶということなんでしょうか?
僕は、研究部会A「アントレプレナーシップとイノベーション創発」でお話をしてこの部屋にずっといたので、以下は研究部会Aの話が中心です。
***
「アントレプレナーシップとイノベーション創発」というテーマアップ、素晴らしいですね。以前ここでも書いたように、アントレプレナーシップとイノベーション創発を一体のものとして扱うのが世界の趨勢です。
MOTやMBAの一大テーマでもあるイノベーション創発は、アントレプレナー人材によってもたらされるという認識をズバッと言い当てた表題に敬服です。それやこれやで、この表題を見て胸のすく思いがしたしだいです。
さて、午前中の専門部会や午後のシンポは、ほんとうに広いテーマを扱いました。スタートアップスをどう立ち上げるのか、ベンチャー企業が成長するために外部のマネジメント能力や開発リソースをどう活用できるか、VCの支援の在り方、ガバナンス、産学官連携、オープンイノベーション、金融危機の影響、ベンチャーキャピタルの視点からの国際ベンチャー、EUにおける国際ベンチャーなど、など。
***
京都大学準教授の麻生川静男さんのテーマは、イノベーションを巻き起こす科学的人事手法です。
独自に取り組まれている「Synaプロジェクト」についてエッジの効いた濃いお話でした。HRMは僕の専門でもあり、今後のコラボ展開が楽しみです。
午前のセッションでは「イノベーションの新潮流:カオスの縁のソーシャル・アントレプレナーシップ」について報告させていただきました。
不肖松下の顔や腕が真っ黒なのは自転車焼けのためです。ネオン焼けに非ず笑)
日経BP社プロデューサの丸山正明さんは幅広い現場の取材をベースにした報告です。丸山さんは産学官連携をテーマにした著書を何冊もお持ちで技術の中身がよくお分かりです。
ヒット製品に結びつく要素技術を組み合わせる連立方程式にはじまり、オープンイノベーション、R&D戦略・事業戦略・知財戦略の三位一体にまで言及されました。
***
牧野圭裕さん(京都大学産学官連携本部本部長、名誉教授)
京都大学における産官学連携、国際連携、そしてベンチャー支援の取り組みなどを包括的にご紹介いただきました。東京の一等地のみならず、ロンドン欧州事務所をオープンさせたのはさすがです。
***
木谷哲夫さん(IMS部門寄附研究部門教授)
イノベーション・マネジメント・サイエンス(IMS)部門の取り組みについてのプレゼンテーション。日本のベンチャーの弱みとして(1)顧客ニーズの分析から入らない、(2)技術シーズを保有する人がCEOになってしまい機動的な経営ができない、(3)チーム編成、人的資源の活用が下手、との指摘がありました。
***
奥原主一さん(日本ベンチャーキャピタル社長)
ベンチャーキャピタルの視点からの国際ベンチャーに関する事例紹介。販路を求めて海外に進出する事例、日本国内ではそもそも市場がないので海外で起業する事例、広く多様な人材を求めるため海外に出る事例などを紹介いただきました。
2社ほど直接的に知っている会社が登場しました。
***
CambridgeのSimon Learmountさんは、Innovation and Governanceについてです。ざっとまとめるとこんな感じです。
近年、UKの産業はアウトソーシングとオープンイノベーション志向となってきている。この潮流のなかで、InnovationとEntrepreneurshipのエンジンとしてリサーチ・ユニバーシティの役割はますます重要になっている。
しかし、そのガバナンスモデルはAgency modelであって、運営原則、エージェントは明確でない。技術のブレークスルーにはアカデミック・フリーダム、リスクの先取り、イニシアティブが必要だ。政府のファンディングはAccountabilityとコントロールの強化をもたらす結果に終始しがちだ。しかし、本来はInnovationとEntrepreneurshipを増進させるような新しい大学ガバナンスのモデルが必要。
この点をきっちり研究して使えるガバナンス・モデルをデザインしインプリしてゆくことが今後の課題だ。
***
パネルディスカッション:「ベンチャー企業、ベンチャーキャピタルの国際化への取り組み」のモデレーターは麻生川さん。
軽妙な触媒的トークで熱くなりがちなパネラーを小気味よくモデレートされていました。Global Literacy for Cosmopolitansを講じていらっしゃる麻生川さんのウイットが光っていました。
一本松正道さん(ルネッサンス・エナジー・インベストメント社長)、瀧本哲史さん(京都大学、エンジェル投資家)、八尋俊英さん(経済産業省新規産業室長)、須賀等さん(丸の内起業塾長、タリーズコーヒージャパン㈱特別顧問、国際教養大学客員教授)と不肖松下です。
実はこのメンバーはそれぞれの立場で深い経験と高度なイクスパティーズをお持ちの方々ばかりでして、すでにメールによる議論が1週間前くらいから盛り上がっていました。このような特設加速レーンもクリエーティブなパネル・ディスカッションには必要なのですね。
さて、須賀さんには以前、僕が自分の会社を創業したばかりの頃に親しくアドバイスを頂いたことがありました。その須賀さんを紹介していただいたのが、松田修一先生(早稲田大学ビジネススクール教授、日本ベンチャー学会会長)でした。こういうところで再会するとは、いやはや世の中狭いものです。
麻生川さんとは旧知の中ですし、瀧本さんとは共通の友人がいることが分かりました。こういった出会いや再会が、またお互いの人生の新しいページに繋がってゆくのですね。
フロアーからも活発な意見、質問が寄せられ活気に満ちたパネルでした。とても刺激的な議論を楽しませていただきました。
どなたか、このパネル・ディスカッションのメモをアップしていただけるとうれしいのですが。
***
最後のクロージング・リマークスは、日本ベンチャー学会会長の松田修一先生。いつものようにパワフルで的を得たお話しぶり。
今回のキリンとサントリーの経営統合は始まりの始まり。日本独自の垂直統合的な巨大企業は今後激変に見舞われる。縦型総合企業から専門水平企業への換骨奪胎がいよいよ始まる。
1960年代から2010年代までを俯瞰してモノづくり産業のトレンドを分かりやすくレビューいただき、今後のアジェンダを浮き彫りにしました。
***
懇親会では京都のベンチャー企業に就職するというガッツ溢れる学生さん達やいろいろな方々と美味しいワインで歓談。帰りは、松田先生と京都駅までタクシーで。道が混んでいて車中、松田先生とは久しぶりにゆっくりお話する機会が持てました。
以下はメモ。
まず共感を覚えるのは、京大イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門のスタッフの方々は、大学で純粋培養のキャリアを積んできたのでもなく、またたんに企業での実務経験があるというのでもなくABCの融合型の国際経験豊富なプロフェッショナル系人材が中心ということです。
午後のパネルで登壇した方々もこのようなタイポロジーの方々が圧倒しています。類は友を呼ぶということなんでしょうか?
僕は、研究部会A「アントレプレナーシップとイノベーション創発」でお話をしてこの部屋にずっといたので、以下は研究部会Aの話が中心です。
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「アントレプレナーシップとイノベーション創発」というテーマアップ、素晴らしいですね。以前ここでも書いたように、アントレプレナーシップとイノベーション創発を一体のものとして扱うのが世界の趨勢です。
MOTやMBAの一大テーマでもあるイノベーション創発は、アントレプレナー人材によってもたらされるという認識をズバッと言い当てた表題に敬服です。それやこれやで、この表題を見て胸のすく思いがしたしだいです。
さて、午前中の専門部会や午後のシンポは、ほんとうに広いテーマを扱いました。スタートアップスをどう立ち上げるのか、ベンチャー企業が成長するために外部のマネジメント能力や開発リソースをどう活用できるか、VCの支援の在り方、ガバナンス、産学官連携、オープンイノベーション、金融危機の影響、ベンチャーキャピタルの視点からの国際ベンチャー、EUにおける国際ベンチャーなど、など。
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京都大学準教授の麻生川静男さんのテーマは、イノベーションを巻き起こす科学的人事手法です。
独自に取り組まれている「Synaプロジェクト」についてエッジの効いた濃いお話でした。HRMは僕の専門でもあり、今後のコラボ展開が楽しみです。
午前のセッションでは「イノベーションの新潮流:カオスの縁のソーシャル・アントレプレナーシップ」について報告させていただきました。
不肖松下の顔や腕が真っ黒なのは自転車焼けのためです。ネオン焼けに非ず笑)
日経BP社プロデューサの丸山正明さんは幅広い現場の取材をベースにした報告です。丸山さんは産学官連携をテーマにした著書を何冊もお持ちで技術の中身がよくお分かりです。
ヒット製品に結びつく要素技術を組み合わせる連立方程式にはじまり、オープンイノベーション、R&D戦略・事業戦略・知財戦略の三位一体にまで言及されました。
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牧野圭裕さん(京都大学産学官連携本部本部長、名誉教授)
京都大学における産官学連携、国際連携、そしてベンチャー支援の取り組みなどを包括的にご紹介いただきました。東京の一等地のみならず、ロンドン欧州事務所をオープンさせたのはさすがです。
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木谷哲夫さん(IMS部門寄附研究部門教授)
イノベーション・マネジメント・サイエンス(IMS)部門の取り組みについてのプレゼンテーション。日本のベンチャーの弱みとして(1)顧客ニーズの分析から入らない、(2)技術シーズを保有する人がCEOになってしまい機動的な経営ができない、(3)チーム編成、人的資源の活用が下手、との指摘がありました。
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奥原主一さん(日本ベンチャーキャピタル社長)
ベンチャーキャピタルの視点からの国際ベンチャーに関する事例紹介。販路を求めて海外に進出する事例、日本国内ではそもそも市場がないので海外で起業する事例、広く多様な人材を求めるため海外に出る事例などを紹介いただきました。
2社ほど直接的に知っている会社が登場しました。
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CambridgeのSimon Learmountさんは、Innovation and Governanceについてです。ざっとまとめるとこんな感じです。
近年、UKの産業はアウトソーシングとオープンイノベーション志向となってきている。この潮流のなかで、InnovationとEntrepreneurshipのエンジンとしてリサーチ・ユニバーシティの役割はますます重要になっている。
しかし、そのガバナンスモデルはAgency modelであって、運営原則、エージェントは明確でない。技術のブレークスルーにはアカデミック・フリーダム、リスクの先取り、イニシアティブが必要だ。政府のファンディングはAccountabilityとコントロールの強化をもたらす結果に終始しがちだ。しかし、本来はInnovationとEntrepreneurshipを増進させるような新しい大学ガバナンスのモデルが必要。
この点をきっちり研究して使えるガバナンス・モデルをデザインしインプリしてゆくことが今後の課題だ。
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パネルディスカッション:「ベンチャー企業、ベンチャーキャピタルの国際化への取り組み」のモデレーターは麻生川さん。
軽妙な触媒的トークで熱くなりがちなパネラーを小気味よくモデレートされていました。Global Literacy for Cosmopolitansを講じていらっしゃる麻生川さんのウイットが光っていました。
一本松正道さん(ルネッサンス・エナジー・インベストメント社長)、瀧本哲史さん(京都大学、エンジェル投資家)、八尋俊英さん(経済産業省新規産業室長)、須賀等さん(丸の内起業塾長、タリーズコーヒージャパン㈱特別顧問、国際教養大学客員教授)と不肖松下です。
実はこのメンバーはそれぞれの立場で深い経験と高度なイクスパティーズをお持ちの方々ばかりでして、すでにメールによる議論が1週間前くらいから盛り上がっていました。このような特設加速レーンもクリエーティブなパネル・ディスカッションには必要なのですね。
さて、須賀さんには以前、僕が自分の会社を創業したばかりの頃に親しくアドバイスを頂いたことがありました。その須賀さんを紹介していただいたのが、松田修一先生(早稲田大学ビジネススクール教授、日本ベンチャー学会会長)でした。こういうところで再会するとは、いやはや世の中狭いものです。
麻生川さんとは旧知の中ですし、瀧本さんとは共通の友人がいることが分かりました。こういった出会いや再会が、またお互いの人生の新しいページに繋がってゆくのですね。
フロアーからも活発な意見、質問が寄せられ活気に満ちたパネルでした。とても刺激的な議論を楽しませていただきました。
どなたか、このパネル・ディスカッションのメモをアップしていただけるとうれしいのですが。
***
最後のクロージング・リマークスは、日本ベンチャー学会会長の松田修一先生。いつものようにパワフルで的を得たお話しぶり。
今回のキリンとサントリーの経営統合は始まりの始まり。日本独自の垂直統合的な巨大企業は今後激変に見舞われる。縦型総合企業から専門水平企業への換骨奪胎がいよいよ始まる。
1960年代から2010年代までを俯瞰してモノづくり産業のトレンドを分かりやすくレビューいただき、今後のアジェンダを浮き彫りにしました。
***
懇親会では京都のベンチャー企業に就職するというガッツ溢れる学生さん達やいろいろな方々と美味しいワインで歓談。帰りは、松田先生と京都駅までタクシーで。道が混んでいて車中、松田先生とは久しぶりにゆっくりお話する機会が持てました。
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