「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの教育論:いじめ問題について考える(3)

2012年10月24日 | 教育




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「いじめ」を考える第一回目は、1年を経た「大津いじめ自殺事件」の現状を取り上げ、第二回目は、「いじめはどうして起きるのだろう」と題して、いじめの心理学的な側面を考察した。

今回の第三回目は、今回のテーマであり、1年を経てもなお原因の究明が為されていない「大津いじめ自殺事件」に関する出来事を時系列でまとめ、この事件から読み取れる具体的な問題点を指摘したい。


ここに載せた事件の経緯一覧は、「教育ひろば~教育情報の総合サイト」および、マスコミで報道されている内容を参考にさせて頂いた。

《「大津いじめ自殺事件」の経緯》

2011年

  • 9月29日 体育祭の昼休憩時間に、加害者が被害者の手足を縛り蹴りつけるなど暴行。複数の生徒が目撃し女性教諭が止める。
     ・9月末頃 被害生徒への暴行を目撃した別の生徒が、いじめを教員に訴える
     ・10月5日 この日も別の生徒がいじめを目撃して教員に訴え、関係生徒を指導。学級担任含めた学年担当教諭が加害生徒・被害生徒の人間関係に気をつけるよう打ち合わせ。
     ・10月8日 加害者が被害者の自室を荒らす。
     ・10月11日 生徒が自殺

    加害者は、被害者の自殺直後、「遺体の一部でも落ちてへんかな」などと現場を徘徊したり、「死んでくれてうれしい」と死亡をからかうようなことを話していたとの複数の記述が、生徒に対するアンケートで判明している。

    また、加害者の母親は、自殺事件を説明する保護者説明会で「うちの子は犯人扱いされて学校に行けなくなった。うちの子が自殺したら、ここにいる保護者や先生の責任ですからね」「いじめのアンケートはデタラメ」などと、自分たちが被害者かのように振る舞って被害者側を中傷した。

    この母親は、仲の良い母親グループ数名とともに「自分の子どもは悪くない」「息子の痛みをわかってやれなかったのは自殺した生徒の両親のはず。うちの子が悪いというのは責任転嫁」などとしたビラを配布した。
  • 11月2日 大津市教委、いじめの存在を認めるが自殺との因果関係は否定。この時点では公表されたいじめの事実はごく一部にとどまっていた。
  • 11月4日 学校の追加調査で葬式ごっこなどの証言あり、この時点では公表せず。

2012年

  • 2月24日 遺族が大津市、加害生徒3人とその保護者を相手取り、計約7700万円の損害賠償を求める訴訟を大津地裁に起こす。
  • 5月 加害者Cが担任教諭に暴行し、小指骨折や打撲・擦り傷等全身に怪我を負わせる
  • 6月12日 加害者Bが転校先の京都府宇治市で、同級生に集団暴行
  • 7月4日 いじめの詳しい内容が報道される。この後連日の報道が続く。

    死亡した生徒への悪質ないじめがあったという同級生の証言が複数ありながら学校・市教委が公表していなかったことが2012年7月4日に発覚し、各マスコミで大きく報道されるに至った。

    アンケートでは、「生徒が自殺の練習をさせられていた」「ハチの死骸やゴミ・紙など異物を無理やり食べさせられようとしていた」「金品を恐喝されていた」「生徒の死後、教室に掲示された生徒の顔写真が、画鋲で穴を開けられたり落書きをされていた」「万引きを強要されていた」「葬式ごっこがあった」「加害者が被害者について『死んでくれてうれしい。でももう少しスリルを味わいたかった』と話していたのを聞いた」など、いじめの実態が次々と明らかになった。しかし学校側は「確認できない」などとして放置し、調査結果も公表していなかった
  • 7月10日 いじめに関する爆破予告などの脅迫状が複数届いたとして、学校を臨時休校に
  • 7月11日 滋賀県警、事件捜査の専従班を結成。同日中に大津市役所と皇子山中学校を家宅捜索。

    滋賀県警大津警察署は当初、生徒の家族からの被害届受理を3度にわたって拒否していが、
    滋賀県警は方針を転換、2012年7月11日付で20人体制の専従捜査班を設置した。滋賀県警は2012年7月11日、大津市教育委員会事務局(市役所内)や皇子山中学校を暴行容疑で家宅捜索した。
  • 7月13日 いじめのアンケート調査結果、同日開催された大津市議会教育厚生常任委員会で公表。調査結果を記した資料は議員や報道機関のほか、傍聴人や希望する皇子山中学校生徒の保護者にも配布された。

    いじめの様子を担任教諭が目撃しながら、この教諭は「あまりやりすぎるなよ」とへらへら笑って声をかけるだけで何もしなかったことが指摘されている。担任は、自殺した生徒がいじめ被害を相談した際「どうでもいい」「君ががまんすれば丸く収まる」と発言して放置したとも指摘されている。事件直後の調査に対して、「いじめの可能性を把握していた」と答えた教師は一人もいなかった。しかし生徒からは、自殺した生徒が担任教諭にいじめ相談の電話をしていたという証言や、別の生徒が担任や校長にいじめを訴えたものの対応されなかったという証言なども出された。

    澤村賢次教育長は2012年7月13日になり、いじめは自殺の要因の一つと言及するも、その一方で「家庭にも問題があるのではないか。裁判で明らかにする」と、まるで家庭に自殺の原因があるかのような中傷をおこなった。

    7月14日になると、担任や学年主任など複数名の教師が、2011年10月上旬頃、いじめの可能性を疑って相談していたことも明るみに出た。

  • 7月14日 藤本一夫校長が記者会見。生徒の生前の2011年10月上旬には被害生徒の異変に気づき関係教員で対策会議をもったことを認めたが、いじめではなくけんかと認識していたと釈明。

    学校側は2012年7月、校内放送で藤本一夫校長が講話。その際「自殺の練習と報道されているのは嘘」と話して責任転嫁し、マスコミ取材には答えないよう口止めを図っていたと生徒からの証言で明らかになった。さらに学校側が遺族に対して事件への口止めを図る念書を書かせていたことも判明した。
  • 7月18日 被害生徒の家族、いじめ加害生徒3人を暴行や脅迫など6容疑で刑事告訴。
  • 8月14日 加害者B、京都府宇治市で同級生への集団暴行に加担した件で家裁送致。

    加害者3人のうちA・Bの2人は事件からしばらくして京都方面に転校した。Bは転入先の京都府宇治市立中学校でも2012年6月、別の生徒への集団リンチ事件を起こし、2012年8月に家裁送致された。
    また皇子山中学校に残ったCは2012年5月、担任教諭に暴行を加え小指骨折や打撲などの怪我を負わせている
  • 8月15日 澤村賢次教育長が暴漢に襲われ負傷。暴漢はその場で取り押さえられて現行犯逮捕。犯行動機については、いじめ事件での対応を不満に思い殺してやろうと思ったなどとしているという。
  • 8月25日 大津市が設置した第三者委員会の第1回会合
  • 10月3日 無関係の人物を「加害者の関係者」かのようにインターネット上で実名を名指して中傷したとして、滋賀県警が東京都内在住の男と兵庫県川西市在住の男の2名を割り出し名誉毀損容疑で書類送検する方針を固めたことが判明。

《「大津いじめ自殺事件」が世論を沸騰させた理由》

この事件が起きた翌年の夏に、いじめの詳しい内容が報道され、「いじめ」の問題や被害者の「自殺」の問題が日本中の人たちの耳目を集めた。

事件発生と詳細な報道の間には相当なタイムラグがあり、被害者側が報道機関に、ことの顛末をリークしたのは間違いないだろう。

自殺を引き起こしたいじめの実態を、家族個人で調べることなど無理であり、真実を究明する姿勢がない学校および教育委員会に対して被害者ができうることは、マスコミを使い世論に訴えて問題解決を図るという選択しか無かったに違いない。

こうした手段に出る他に方法がなかったということが問題で、被害者・加害者・管理責任者間のボタンの掛け違いは、はなはだ修復不能の状態であったことが推察される。

この「大津いじめ自殺事件」の報道が、日本全体の世論を沸騰させた理由は以下の点であったと私は考えている。

第一に、いじめの実態が悪質かつ陰湿であったこと。
第二に、現場の教師の対応が極めて拙かったこと。
第三に、知り得た情報を責任者である学校および教育委員会が隠蔽したこと。
第四に、学校および教育委員会が事実解明に消極的であるばかりか、現在でも解明の障害となっていること。

一番目・二番目の問題だけなら、世論も冷静に「いじめ」について純粋に考えることができただろう。

しかし、第三・第四の事実が明らかになると、世論もかなり感情的に沸騰した状況となり、跳ねっ返り分子の中には、犯罪行為に及んだ者もいた



《責任者の具体的な問題発言》

「いじめ」の後、「自殺」という痛ましい出来事が起き、その適切な対応が各方面に求められたが、そうした経緯の中で、この事件に関する責任者側の問題ある発言が繰り返された

まずは、世論を感情的かつヒステリックなまでに激怒させた関係者の言動から検証する必要があり、具体的に私が問題と感じる関係者の発言をまず取り上げてみたい。

(1)学校が全校生徒に実施したアンケートでは、「一度、先生は注意したが、その後は一緒になって笑っていた」「見て見ぬふりをしていた」など14人の生徒が、教師がいじめを見逃していた可能性を証言している。これに対し市側は5月に大津地裁に提出した答弁書でいつ、誰が、どこでいじめを目撃したのか明らかにするように遺族に要求。さらに「いかなる措置を講じれば自殺を回避することができたか」と逆に説明を求めている。

『調査権もなく学校に介入することさえできない一般人に対して、「いつ、誰が、どこでいじめを目撃したのか明らかにするように」と要求することは、学校の責任放棄の何物でもない。およそこの言い回しは、行政側についた弁護士の浅薄な知恵だろうが、この要求を自らに課すことが責任者の立場であり義務であるはずが、すっかりとそのことが頭から抜け落ちていることが、今回の事件の問題点を鮮明に浮き彫りにしていると私は断言したい。すなわち、いじめを増加させ凶悪化させる原因が、子どもを取り巻く者の責任感や対応や認識に起因するのではないかと、多くの人たちが疑い始めたということだ。』

(2)越直美大津市長が、いじめと少年の自殺には関連があると認めて、遺族と補償交渉に入りたいと涙ながらに語ったが、教育長の沢村賢次氏は『家庭の問題もあるのでいじめが自殺の原因だとは断定できない』などど語った。

『この沢村氏の発言こそが、最も人々を驚かせ強烈な反感を買った元凶であり、教育者としてあるまじき発言と言えよう。息子を亡くして悲嘆に暮れる家族に対して、推測の域で今回の自殺が家庭問題を原因とするかのような被害者家庭に対する誹謗中傷は、被害者の家族を鞭打つような発言であり、責任放棄と自己保身に徹する沢村氏の言動は許されないと私は考える。また、下記の校長の発言も、校長に対し詳細な指示を出したと考えられる沢村氏の意向をくんだ隠蔽発言と常識で考えれば断定でき、そうした点を考慮すれば沢村氏は極めて問題ある人物だと断言して差し支えないだだろう。』

(3)藤本一夫校長が校内放送で「自殺の練習と報道されているのは嘘」「報道には嘘が含まれている」と話し、生徒に対してマスコミ取材には答えないよう口止めをしたという。

事実の究明を目指すべき校長が、複数の生徒が証言した内容を完全に否定し、生徒達の発言を嘘扱いしている。生徒に対し権力を行使できる立場の大人が、「自殺の練習を含め、今後一切しゃべるな!」という発言は生徒を恫喝するに等しい発言で、これも許される範囲を大きく逸脱している。この事件に関連して生徒に対して本来話すべき内容は、沢村教育長の隠蔽工作に流されることなく、教育者として正義感を持って、事実究明に真摯に向き合う内容でなければならなかった。例えば、「私たち教師は、事件に関して知り得たさまざまな事実、そしてこの事件に対して対応してきた取り組みを、今まで隠し続けてきましたが、まずそのことを皆さんに深くお詫びしたい。最も大切なことは、今回の事件の真実がどうであったのか、このことを知ることが最優先されなければなりません。~君の死を無駄にせず、二度とこのような悲劇が繰り返されないよう今後に役立てるために、私たち教師や教育委員会に遠慮することなく、生徒の皆さんが見たり聞いたりしたことを、包み隠さず勇気とそして正義感を持って語ってくれることを願っています。」といった話を生徒にすべきだったと私は考える。』

それが教育者以前に人間として、生徒の前で示す姿勢だった。


 《「大津いじめ自殺事件」から見えてきた具体的問題点》

「大津いじめ自殺事件」の経緯や関係者の発言から見えてきた、今後の「いじめ」対策を考える上で熟慮すべき具体的問題点について挙げてみよう。

(1)子供たちに接点を持つ周囲の大人の、「いじめ」を感知する能力が充分だったのか。


(2)「いじめ」が認識された後の、教師および学校全体の対応が適切だったのか。

(3)自殺事件後の学校・教育委員会・所轄の警察・加害者保護者の対応は適切だったのか。

(4)事件の事実隠蔽が発覚しった後の世論は、「いじめ」防止に対して充分機能する方向性を示し得たのか。

(5)いじめを受ける子どもといじめを行う子どもを含めたすべての子どもに対して、「生きる力」「相手を思いやる感性」を養成する社会的システムは充分だったのか。



今後の「いじめ」防止と「いじめ発覚後」の対策、および「イジメ被害者」に対する対応、そして「いじめによる自殺・自傷行為」の回避対策など、早急に対策を講じ実施に向けた努力が求められる。

そのためにも、真相究明は不可欠かつ急務な課題であるが、何人たりともそうした努力のじゃまをする権限は無く、速やかに今回の事件の真実を明らかにしてもらいたい。

次回は、以上5点の問題点について、もっと深く考察してみたい。


以下のブログを、順を追って読んでいただくと、「大津いじめ自殺事件」の概要が理解されやすく、興味ある方はご覧いただきたい。

マッキーの教育論:いじめ問題について考える(1)

マッキーの教育論:いじめ問題について考える(2)

マッキーの教育論:いじめ問題について考える(4)





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