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表参道スワマエ商店街会長のひとり愚痴

戦後世相史と『梟の城』

2018年09月15日 | レモン色の町

中日新聞夕刊掲載の「ベストセラーで読む戦後世相史」第5回は、司馬遼太郎の『梟の城』。この作品は、昭和35年に直木賞を受賞している。

 伊賀忍者の葛籠重蔵は、信長が明智光秀に討たれたことで目標を失い隠棲していた。そこへ師匠の下柘植次郎左衛門が訪ね、重蔵の兄弟子である風間五平の探索と大公秀吉の暗殺を命じる。忍者の誇りを取り戻した重蔵は上方へ向かい、伊賀を裏切った五平と壮絶な戦いを展開する。

 司馬は学徒出陣で戦地へいった経験から、天皇への忠義を求められ、ひとたび戦争になれば個人の能力も国家に管理され、簡単に使い捨てにされることを実感していたのではないか。

忠義を重んじる武士をあざ笑い、長い「修行」で身に付けた「技能」を使って、好きに雇い主を選び、自由に生きる司馬の忍者は、主君=天皇 への忠誠を誓う 武士=兵士 を描いており、戦前的な価値観からの解放の象徴だった。

 この作品は、大友柳太郎と中井貴一主演で二度映画化されている。

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