坂本龍馬、中岡慎太郎、大村益次郎、横井小楠、佐久間象山……幕末から維新にかけて、志半ばにして暗殺者の凶刃に斃れた人たちだ。しかも、そのいずれもが「下らない」人物に殺されている。
大村を襲撃した神代直人(こうじろ・なおと)は、その最たる人物だろう。ただ狂信的に攘夷を唱えていた神代は、上海で西洋列強に清国が蹂躙されているのを目の当たりにした高杉晋作が、単純攘夷論の姿勢を改めると、その命を狙い続けた。
大村の暗殺は、彼と対立していた薩摩藩士・海江田信義に扇動されたとも言われているが、襲撃現場に残された「斬奸状」には、国民皆兵制度など近代化を推し進める大村への反感が殺害の理由としてつづられていた。
司馬遼太郎は大村を主人公にした「花神」、高杉の生涯を描いた「世に棲む日日」で神代について、無思想で洞察力も皆無の狂信者と断じているが、こうした手合いに大村のような優れた合理主義の実践者が殺されたことは、その後の日本にとって大いなる損失だった。龍馬暗殺の最有力犯とされる見廻組の佐々木只三郎、横井を手に掛けた上平主税も、神代と似たり寄ったりの人物であり、こんな下司の手にかかって命を落とした龍馬、大村、横井らは死んでも死にきれない思いであの世へ旅立ったに違いない。
先週末からつまらぬ輩のために無駄な時間を費やされた。最初は問われたことに答えるのも誠意だと考えて対応していたが、ある人からまさに「神代直人」というほかないこの人物の「正体」を知らされ、一切相手をしないことに決めた。
つまらないとはどういう意味か? 神代ら暗殺者たちは日本、あるいは世界にとって有用な人材を「狂信」という名の熱に浮かされて刃にかけ、大いなる損失を生じさせた。凶刃に倒れた時点でも、龍馬や大村、横井らが歴史に大いなる足跡と業績を残したのに対し、神代らは何も残さなかった。私にコメントをお寄せいただいた「神代サン」も、それと同様、いやそれ以下の存在だということだ。
高杉が肺結核のために夭折したのもまた、日本の歴史にとってはたいへんな損失だったが、それでも神代のようなつまらない人物の手にかからず、第二次長州征討で幕府軍を打ち破って回天への道筋をつけ、短いなりの「天寿」を全うしたのは何よりだった。
私は高杉を見習い、「神代直人」の相手はしないことに決めたのだ。そして、高杉や龍馬の分も長生きして、少しでも世の中に貢献できる生き方を全うしたいと考えている。
花神〈上〉 (新潮文庫) 司馬 遼太郎 新潮社 このアイテムの詳細を見る |