伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

常磐市街地再生整備基本計画素案を読んで

2022年09月20日 | いわき市
 湯本駅前地区には、もともと天王崎団地という市営住宅があった。この団地の老朽化に伴い、市営住宅としての用途が廃止されることになり、跡地の活用などが課題になっていた。課題解決に向け、常磐地区の諸団体なども含めて検討が進められ、合意に至ったのが素案のようだ。

 素案では、湯本駅周辺の人口や観光客の減少、空き地の増加などの現状を踏まえて交流拠点の整備などを方針としながら、課題を解決していくための取り組みを明確にした。

 それによると、駅周辺に、常磐支所や常磐公民館、図書館等の公共施設を集約し近辺にイベントスペースや公園を整備、また、公共交通の利便性と快適性を向上させて交流拠点とするとともに、空き店舗のリノベーションなどによるにぎわい再生事業、温泉神社と常磐支所跡地などを活用した交流拠点整備事業、公民館跡地を活用した事業の策定などを市街地再生の整備事業に位置づけている。

 一読して、なるほどという印象を受ける。

 第1に、常磐地区では、列車や路線バスの発着の拠点となるJR常磐線湯本駅から、支所も公民館も離れた位置にあるため行政サービスの利用に難がある。今後いっそうの高齢化が進行すると、この問題が拡大していく恐れがある。

 公共施設を交通の拠点に集めることによって、行政サービス利用の利便性を高めることになる。また、行政サービス利用者の集中による交流人口(といってどうかは分からないが)の増加が、交流拠点周辺への波及効果をもたらす効果も期待できる。御幸山公園の整備やにぎわい再生事業は、その受け皿の位置づけなのだろう。

 第2に、常磐支所が移転すれば跡地には一定の空間が生じる。そして、現在の常磐支所の位置は、湯本地区に点在する温泉宿のへその位置にあるように見える。



 温泉宿は、湯本地区ひいては本市の観光拠点の1つであることは間違いない。ここににぎわいを作れていない現状にどう対応するかは長年の課題だったろう。基本計画素案は、ここに1つの考えを提示しているように思う。

 先に書いたように、常磐支所が移転した跡地は湯本に点在する温泉宿のへそ、すなわち中心となる。湯本温泉から離れたスパリゾートハワイアンズが、フラダンス等のショーを披露する舞台と室内プール、またその発展的展開をしたイベントをへそ(魅力の中心的要素の意味合いで表現している)として誘客に成功していると考えるなら、湯本地区においても、経営の違いを超えて結束し魅力を創り出し、それぞれの温泉宿に誘客を結びつけていくかが課題となるだろう。

 基本計画素案は、へそに鎮座していた支所を移転することで、その敷地と連続する温泉神社とあわせて1つの広場として活用する活用する考えを提示している。広場をイベント等に利用し街の魅力を創り出すスペースとして活用し、どの宿の利用者も利用して楽しめるようにする。この魅力を温泉宿の誘客の1つの原動力に使用というのだろう。なるほどだ。

 そもそも温泉宿どうしは、競争相手として利益を競いあうライバル関係になる。しかし、基本計画素案は、温泉宿を協働して地域の魅力創り出す関係という考えをベースにしたのだろう。そのための魅力津クッ理出すスペ-スとして、温泉神社と常磐支所跡地に焦点を当てたのだろう。

 温泉宿のへその位置にある常磐支所敷地が温泉神社につながるイベント広場として利用されることで、神社で実施される季節行事に加え、湯本の地域的なイベントを創造する広場として、宿をこえて協働しながらこの場所を利用することができるならば、常磐地区に、スパリゾートハワイアンズといわき湯本温泉郷の2つの軸を据えて観光客を迎え入れることができる。そしてそのことは、本市の魅力を高めることにもつながる。

 基本計画素案には、そのような関係者の願いを読み取ることができるように思う。残りの取り組みは、こうした取り組みの関係で浮上し組み込まれてきたのだろう。

 あくまで私が素案を読んで感じた印象なので分からないが、私自身は、基本計画素案に盛り込まれているのは、合理的な考えに裏付けられているように思う。住民は、この素案をどのように受け止めたのだろうか。

 聞くところによると、この取り組みを進める費用として数十億円以上の規模の公的負担が見込まれるという。その大半は、交流拠点等の整備にあたるらしい。施設整備以外は、民間活力を活用していこうというのだろう。

 すでにずいぶん前に、素案に対する意見募集は終っているようだが、常磐地区、ひいてはいわき市民に役立つ事業計画として練り上げられることを期待したいと思う。


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