ロシア的感覚ではよくあることですが、
謎の和風喫茶「Tea Club」での夜の演奏会は、
その日のお昼前になって電話一本でなくなったそうで。
仕事がなくなった代わりに?!、手配してくださったのが、
「猫劇場」の観劇。
学生さんの案内で、片側7~8車線もある大通りを歩いていくと、
猫の絵の看板が掲げられたとある建物の前に、
シッポにぼんぼりをつけてもらったロバさんと女の子が立っている。
どうやらここらしい。
学生さんが慣れない英語で一生懸命説明してくれたところによると、
今日は新作の上演日。
舞台に出演する猫はぜんぶ劇場オーナーの飼い猫で、
息子も役者の一人として出演している、家族経営の猫劇場。
ホワイエの壁にかかった絵も入り口のドアの取っ手も、ぜんぶ猫。
こだわってるけど、サーカスに出ていたほかの動物たちとくらべると、
猫って、楽しそうに芸をやってるようには見えないのがやや残念。
まぁでも、サーカスといい、バレエといい、この猫劇場といい、
小さいときから、週末は家族でこういう場所に来て舞台を楽しむ文化が、
この国では、しっかりと根づいているんだなぁ。
The 11th International “Heart of Japan” Music Festival
“The forgotten Melodies of Old Nagoya”
これが一応、今回の公演の正式タイトル。
会場となったラフマニノフホールは、
チャイコンの会場として有名な音楽院大ホールに隣接する、250人くらいのホール。
白と水色を基調にした客席の天井には大きなシャンデリアがひとつ。
なんとも上品なホールで、師匠もお気に入り。
公式サイトはこちら ⇒ http://www.mosconsv.ru/english/page.phtml?4003
去年はここが取れなくて、ゲストハウスの裏手のホールで公演。
公式サイトに載っていないホールもいくつもあるみたいだし、
学内の使用電力もここだけは自家発電だとか、
とにかくおそるべし、モスクワ音楽院。
コンサートスタッフ兼務で直前までひとりバタバタだったヒイラギ、
今年は6曲の演奏プログラムのうち2曲に参加。
これといって大きな失敗もなく、演奏の出来にはまずまず満足。
ロシアの聴衆は、眉間にシワ寄せてじぃーっと聴き入る感じ。
休憩時間には、三味線片手に客席に下りていった解説の先生の周りが、
あっという間に黒山のひとだかり。
一昨年の公演に来てくれた小さな女の子を連れた若いお母さんが、
音楽院のポスターを見て、チケットを買ってまた聴きに来てくれた。
こちらの人はみんな本当に興味津々で来てくれるから、
日本で出る舞台よりも、嬉しいし、がんばり甲斐がある。
公演旅行の中日にメインコンサートが無事に終了して、
あとはほとんど師匠のお世話係状態。
めでたし。
明後日のコンペの準備から始まって、
来週の連続講座の講師対応と受講者募集の配信、
不在の間のメール応答の設定と、チーフと先生への申し送り。
スタッフ用のプログラムと舞台図面のファイナル版の印刷と、
図書館納本用の博士論文の印刷・製本の手配。
ついでに、生協でデジカメ用のマイクロSD購入。
午前中にざっとここまで片づけて、早退して稽古場へ。
パスポートとビザ、それに、新調した三絃ソフトケースの受取り。
帰りに、思い出せる限り片っ端から昨日やり残した買い物。
絶え間なく動いている割には、夕方ごろからヒイラギ名物、鼻歌が復活
つい昨日まで、急須にインスタントコーヒー入れちゃうぐらい壊れてたとは思えない。
もうひと息。
12時間後には、リムジンのなかで爆睡できてるハズ。
<本日のぬらりひ川柳>
「雑用に 確認すなる 博士だね」 ぬ
ぬらりひクン、「すなる」って気に入ってるみたいだけど、
一体どこで憶えてきた言葉かな?
今日は勤労感謝の日。
元日やお盆に仕事することはあっても、
この日だけは、いわゆる「仕事」も、家事やら雑用も含め、
とにかく、「やらなきゃいけないこと」は、しない日。
社会人になってから、それが自分のなかの決め事だったのだけど。
まずは朝一番に大掃除。
海外にでかける前には必ず大掃除をする。
万にひとつ、二度と帰ってこなかったとき、みっともなくないように。
博士論文の残骸だけは年末の大掃除まで取っておくとして、
オペラ『MACBETH』の残骸を片づけて、
たまりにたまった古新聞を袋に詰めてゴミ置き場へ3往復。
片づいたところで、いざ買出し。
よく考えたら、必要なものを全部買ったらひとりでは持ちきれない。
ブーツにコート、大きな買い物ばかりで、繁華街と家を2往復。
あとはどうにか明日、と、ひと息ついて時計を見ればもう7時前。
夜のうちに家の中でやるべきことは、
舞台図面の仕上げと、そろった物の荷造りと計量と・・・
一日中「やらなきゃいけないこと」尽くしの勤労感謝の日。
あ、リムジン予約しなくちゃ。
<本日のぬらりひ川柳>
「そのデスク 応答すなる 持ちこたえ」 ぬ
どういう意味なのかなぁ・・・
オペラ『MACBETH』公演が無事終了。
前夜、博士論文のあれやこれやに一気にカタをつけた勢いのまま、
翌朝10時に楽屋入りしてから、夜9時過ぎの終演まで、
怒涛の勢いはノンストップ。
打ち上げは失礼してまっすぐ帰宅しても、家に着いたのは夜11時前。
2時ごろまでかかって、ロシア公演向けの翻訳仕事を仕上げ、
久しぶりに7時間ほどは眠って、今日は最終リハーサル。
午後いっぱいリハーサルと諸々の最終確認をして、
夜は、これまた久しぶりにオペラ『AIDA』の稽古にフル出席。
こちらも来週からはいよいよマエストロ指導、という最終確認。
明日一日で旅支度を完了して、
明後日一日で一週間分の仕事を前倒しで片づけて、
一年ぶりの極寒のモスクワへ出発だ。
何かやっては燃え尽きて、知恵熱出して寝込むのが常のヒイラギ。
すでに2回ぐらい知恵熱のチャンスを逃してる気がする。
<本日のぬらりひ川柳>
「あの光 取れたころには おめでとう」 ぬ
ありがとね、ぬらりひクン。
博士論文の最終審査結果の書類。
「ごくろうさま。おめでとうございます」の言葉とともに、
5人の審査員の署名欄が、一つ、またひとつ、埋まっていく。
一歩、また一歩、光に向かって踏みしめて歩くような、
最終審査プロセス最後の一日が終わった。
とにもかくにも、『AIDA』に支えられて、持ちこたえた気がする最終局面だった。
(稽古は放棄しっぱなしのわりに)
最終審査会に向けてのラストスパートでは、
第1幕の「Su! del Nilo al sacro lido」をエンドレスで聴きながら、
とにかく結果を掴み取って帰ってくるのだと自分を奮い立たせた。
第2幕の凱旋の歌を、胸を張って歌うのだと、それだけを考えた。
午後6時28分、すべての署名欄が埋まった書類を、
コース主任の先生に提出し終わった。
大きく息をひとつついて仰いだ空はとっぷりと暮れていた。
昨日は、スパルタ修士課程以来の極限状態。
博士論文の最終修正を完了して、
修正対応書と2000字の論文梗概を作り直して、
ファイナル版を6部、印刷・製本して、
審査員全員に明日中のアポを取りつける、
というところまでを何があってもやり遂げなければならない状態で迎えた、
連続講座の開催当日。
まっすぐに立ってじっとしていることができない程度にふらっふら。
夜10時前にやっと最後の審査員をつかまえてアポを取れたころには、
その先生の顔もはっきり見えない程度に意識朦朧。
夜10時過ぎに先生とチーフに晩御飯をおごってもらうまでの間、
じつに14時間にわたって食事抜きで学内を駆けずり回りつづけた。
「ずいぶんやせちゃったんじゃないの?」
心配そうに両側からのぞきこむ先生とチーフの言葉を思い出して、
しばらくぶりにハイテク体重計に載ってみる。
結果は、
「カラダ年齢=18歳」
う~ん・・・喜んでいいのか・・・
18歳って、こんなに不健康なの?
<本日までのぬらりひ川柳>
11/15「あの理由 更新したら 光かな」 ぬ
11/16「この博士 公演される インプット」 ぬ
はてな。
今日は朝6時起きで、いよいよ最後の関門、最終審査会だった。
ない時間をひねり出して最終審査会に集まってくださったのはありがたいけど、
なんの因果か、“ほぼ徹”続きのトドメの試験が朝9時開始。
頭痛にめまいの絶不調で、ずらり居並ぶ5人の審査員の口頭試問に臨む。
博士論文の修正箇所の説明から、質疑応答、
前夜2時ごろに急遽メールで指示のあった、語学試験の試問まで、
寝不足で男みたいなガラガラ声でしどろもどろ答えること1時間。
「じゃあ、ヒイラギさんはちょっと退席してください」と言われてから、
デスクに戻って待つこと1時間。
これってちょっと、イヤ~な長さの時間。
先生から「ちょっと部屋まで来て」と呼び出され、
ハイそこに座って、と言われたときには、ほとんどロシアンルーレット気分。
「じゃあこれで“合格”、と。それでね、・・・・・・」
最後の最後に審査員から出たコメントを反映した修正を完了して、
5人の審査員のところにもう一度説明に回って、
確認の署名と押印を全員分、今週中にもらってきて、と言いながら、
「審査員主査」欄に署名・押印してくれているコース主任の声が、
ほとんど働いていない頭のなかを、ぐ~るぐ~る回る。
・・・ていうか、先生、いま「今週中」って言いましたよね?
今日は水曜日で、今週っていうのは金曜日までのことですよね?
修正のボリュームと、先生方のスケジュールの詰まりかげんと、
50数時間という限られた猶予。
“ほぼ徹”はまだ続くのか・・・
金曜の夜には、廃人と化して入院してるかもしれないな。
創造とは、1パーセントのひらめきと、
そのひらめきに、思い通りの形を与えることのできる、99パーセントの技術。
1パーセントのひらめきは、
気の遠くなるほどの時間と、そのなかでの膨大なインプットと、
そして、努力だけでは得られない完全なセレンディピティから生まれる。
250枚にのぼる壮大な〝作品〟の創造のために、いったい幾度、
1パーセントのひらめきに出会うための思考の長旅が重ねられてきただろう。
光が見えてきた。
この光を、必ずこの手につかんでみせようと思う。
<本日のぬらりひクン♪>
生後2ヶ月で初めての川柳を詠んでくれた。
記念に、日記に書いておこう。
「やり方を思考されたし期限かな」 ぬ
ふ・・・深い。
さすがヒイラギ家のペット。
一番の難関の教授との面談をどうにかクリア。
まぁでもだいぶ頑張ったよね、よくなってるし、とは言ってもらえたけど、
まだまだ先生の目から見れば論理矛盾だらけらしい。
何事も感性で判断してしまう右脳人間だからなぁ・・・
「試験前日までに必ずここだけは直すこと!」という条件つきで、
最終審査会を再延期しない方向で、了承してくださった。
最後の砦を越えたと分かって、急転直下で最終審査の日が決まった。
今日から3日間のうちに、「ここだけは」と言われたところを修正する。
自分の〝作品〟に対する最後の意地。
この3日間に入っていた予定をすべてキャンセルするだけで、
昨夜から今日のこの時間までかかった。
これはこれで、自分の仕事や周囲の人たちに対する責任と意地。
いやはや。
いかんいかん、ブログ書いてる場合じゃなかった。