或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

佐伯祐三(5)

2006-02-22 06:13:07 | 300 絵画
今日は再度パリに渡った第2次渡欧時代、1927年の作品の紹介。佐伯が再びパリの地を踏んだのがこの年の8月。水を得た魚のように精力的に絵を描きます。もともと早描きだったので、一日に数枚とか、そんなペース。ただ友人に宛てた手紙の中にも“死”という文字がよく出てきて、死への不安や恐怖が通奏低音のように奏でられていたんじゃないかと思います。

画風も1925年の第1次渡欧時と比べると、線の使い方に特徴が。つまり跳ねるような、やや荒い筆致。そして線自体もすっきりした直線から、微妙な湾曲、不安定な曲線が目立ってきて。彼が最後の乱舞を始めたのが伝わってきます。一般的には1925年の作品の方が親しみやすいと思うけど、個人的には1927年の方が好きですね。その退廃的な匂いが。

この年の代表作が、下の写真の「ピコン」、「レストラン」、「テラスの広告」。線のうねりがなんとも言えない雰囲気を醸し出してます。洒落てますね。やはりパリですね、佐伯は。これらに加えて、個人的なお気に入りが上の写真の「バーの入口」。なんか扉を開けるとジャズが聴こえてきそう。実物を見た時に絵の前で釘づけになったのを憶えてます。

それで佐伯はパリに到着してすぐ、住居の世話をしてくれた薩摩治郎八の夫人、千代子と出会います。彼の日記の中に「巴里中探しても、あんなに美しい人はいません」という言葉が。これがこの後、頭の上がらない妻の米子との関係をいっそう複雑にしていく。なんかめぐり合わせがねえ。運命なのかなあ。ドラマでも見るように破滅の世界に陥ちていく佐伯。本人もそれを望んでいたかのように。

ところで「ピコン」というのは“Amer Picon”というリキュールの名前で、絵の中にあるのはそのポスター。彼が描いたパリの街角の風景にこういったポスターを多く見かけます。これについては”お酒“つながりを発見したので次回紹介しますね。

ピコン(1927年)レストラン(1927年)テラスの広告(1927年)

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5 コメント

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素敵~ (emii)
2006-02-22 07:45:20
なんだか、雰囲気のある絵ですね。

すごく、素敵~♪

この方の絵は初めて見たと思います。。
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コメントありがとう。 (ハンコック)
2006-02-23 06:59:09
おはようございます。

そう言ってもらえると嬉しいなあ。

確かによくあるのとは違いますよね。



彼の絵は密かに人気があるんですよ。

波乱万丈で短命の人生もドラマチック。



実物をみると写真以上に感動しますよ。

どこの美術館にも1枚ぐらいはあるので、

いつか鑑賞してみて下さいね。
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Unknown (ワルツ)
2006-02-23 11:39:29
上の絵のあまりの素晴らしさに、息が止まりそうになりました。

今まで、佐伯祐三の絵、オシャレだなっていう感じでしか思っていたのですが、ハンコックさんのお陰で、マイブームになりそうです。

ハンコックさんの書かれてる佐伯祐三の過去記事も、帰ったら(出先です。笑)ゆっくり読ませていただきますね。

絵葉書とかもまた買ってみよ。
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Unknown (とど)
2006-02-23 21:22:04
やっぱりパリ在住時の方が圧倒的にいいですね。

渋めのトーンの中にも、差し色のように鮮やかな色彩があって、ハッとさせられます。

曲線にかろやかさが感じられるのも、素敵ですね。
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おはようございます。 (ハンコック)
2006-02-24 07:14:15
>ワルツさん

早描きだったのでイマイチの作品も多いんです。

それとかなりムラがあったように思うし。

天才と狂気は紙一重という見方もできますね。



おっしゃるようにお洒落な雰囲気がありますよね。

でもね、時代を考えると、なにせ1927年ですから。

当時これを描いていたというのが凄いなって。

最近よく思います。



練馬や和歌山みたいな特別展がまたあるといいですね。



>とどさん

やっぱりね、パリのもんですね。全然違う。

どこにこんなセンスがあったんだろとホント脱帽です。



確かに鮮やかな色がいいですね。その色合いが。

ピコンは和歌山で初めて見たんだけど赤がまぶしかった。



曲線は確かにかろやかさを感じさせますね。この年は。

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