或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

ステーションワゴン

2006-06-29 06:33:00 | 540 モノ
先週、これまで長年乗ってきたステーションワゴンを廃車にしました。最近はあまり乗ってなくて、近所の駐車場に置きっぱなし。初回登録が平成7年だから、11年以上も乗ったんだ。長かったなあ。これだけ長いと、十分にモトを取ったっていう気持ちになれる。だからかなり満足。でも愛着があったから、手放すとなるとちょっぴり寂しかった。

基本的にワゴン車が好きですね。荷物がたくさん積めるし、運転感覚は乗用車と変わらない。でも最近はミニバンに押されて人気がないらしい。それとこの時代のデザインは直線が多くシンプルで自分の好み。最近はやたら小洒落たつもりの曲線が多くてどうも。まあこれも時代の流れかも。

上の写真は昨年の夏、娘が友達と山陰へキャンプに行った時のスナップ。完全に車が被写体。当時記事にしましたが、実は現地で急に車が動かなくなって。連絡を受けて広島から駆けつけ、JAFのレッカー車に載せる前に撮影。ひょっとしてこれが今生の別れになるかもしれないと思って。結局安く修理できたので、その後も乗りましたけど。

思い返すと、この車はもっぱらアウトドアで活躍。当時オートキャンプが流行り始めた頃。各地で車専用のサイトが整備されて。けっこう頻繁に行きました。せいぜい2泊3日で、設営したらすぐ撤収のドタバタが多かったけど。昔は子供のためにと思ってたけど、結局自分が一番楽しんでいたかなあ。

最近は子供が大きくなったので、家族では全く行きません。子供が仲間と行く時のキャンプ用品無料レンタル屋に徹してます。いっぱい揃えたから。なんか昔が懐かしい。年をとってから、海辺で1ヶ月ぐらい、のーんびりやってみたいですね。


山頭火

2006-06-27 06:45:27 | 600 グルメ
日曜日に社労士の模擬試験を受けた時、昼食を食べに行ったのがラーメンの「山頭火」。歩いてすぐなので、TACに模試で来た時はいつもここ。正直言って、お気に入りじゃないけど嫌いでもない。

調べると、北海道の旭川が本店。そういう味には思えないけどなあ。これまでに塩、醤油、味噌と全種類食べたけど、数あるラーメンの中でも、良くも悪くもかなり洗練されてるって印象。何年か前に東京の渋谷店に行ったけど、息子も名古屋の義理の甥も、イマイチって顔してました。なんか味にキレがないし、どうもインスタントっぽいんだなあ。

面白かったのは、店の名前の由来。皆さんお分かりのように、自由律俳句で有名な、種田山頭火(たねだ さんとうか)から。なんでもこの店を始める時に、社長が酒好き、女好きで、放浪癖があるところが似てるので薦められたんだとか。

山頭火には、ちょっと親近感があります。まあその退廃的な人間性において、自分に通じるものを感じるから。それと、彼が広島から程近い、山口県の防府市の出身というのもあるし。でもそんなことより、俳句そのものが渋くてイカしてますよね。

分け入っても分け入っても青い山/ ふるさとの水をのみ水をあび/ 
ほろほろ酔うて木の葉ふる/ どうしようもないわたしが歩いてゐる/

なんかどうしてもね。ジャズマンを連想してしまうなあ。関係ないけど、店で流れている音楽がいつもジャズ。それも何故かブルーノートばかり。一昨日はジャッキー・マクリーン。試験の出来の悪さに落ち込みながら、一人ラーメンをすするなんて、なんかプチ山頭火状態だったかも。


山頭火句集山頭火句集

社労士中間模試受験

2006-06-26 05:48:55 | 150 社会保険労務士
昨日は雨の中、資格の学校「TAC」で社会保険労務士の中間模擬試験を受験してきました。模試は今回が初めて。なんか久しぶりにドキドキ…、はしなかったか。場所は広島市街のど真ん中、いわゆる電車通りに面したビルの4F。ここは中小企業診断士の模試を受けたことがあって、トイレの場所とか勝手がよく分かっていて良かった。

会場で受験するというのはいいですね。本番に近い雰囲気が味わえる。特に時間配分の目安を実地で検証するという意味合いで意義は大きい。今回だいたいの感覚はつかめたかなあ。マークシート式ということで、診断士の1次試験に似てる。違うのは、診断士が個別科目別の制限時間枠に対し、社労士は選択と択一で大きく二つの制限時間枠というところ。

診断士は、特に経営法務とか時間が不足してあせることがあったけど、社労士は、科目間で調整できるからそれがない。その意味では実力が出せてリーズナブル。ただ択一は、3時間半ぶっ通しだから、最後の方はちょっと集中力が切れるのが難点。それとトイレが要注意。でも診断士の2次試験の精魂尽き果てる記述式に比べると、かなり楽。試験後の疲れはそんなになかったなあ。

それで出来はどうだったかって?まだ答え合わせしてないけど、ほとんど玉砕状態。よく言われる初学者特有の混乱が発生。つまり労災、雇用、健保、国民年金、厚生年金といった、いろんな法律の資格・給付要件が頭の中で、ごった煮状態。どの話なのか分からなくなって。正直言って、とても合格できるレベルじゃないですね、現時点は、っていうか今年は。

でもそんなに落ちこんではいませんよ。全て想定の範囲内。やっぱり勉強を始めて半年じゃね、こんなもんでしょう。もう2ヶ月頑張って、超ラッキーがあるかどうか、運を天に任せるのみ。真の勝負は来年だと思ってます。でも逆に、来年はプレッシャーかかるんだろうなあ、診断士の時みたいに。(笑)

フォーライフ(22)

2006-06-23 06:43:16 | 020 小説「フォーライフ」
◆嵯峨野
奈緒美は、夫の車に見知らぬ女が乗っているのを目撃してから、そのことが気になってしょうがない。気づかれないように陰から見ていたが、二人の表情や仕草から、はっきり分かる。あれは絶対に男と女の関係。女の勘というやつだ。どうしても気持ちを落ち着かせることができず、佐藤を誘った。これまでは必ず佐藤からだったが、今回は初めて自分の方から。

隣りにいる佐藤のことを忘れてぼんやりしていると、タクシーがゆっくり止まった。着いたのは、嵯峨野にある宝筐院(ほうきょういん)。平安時代に白河天皇の勅願寺として建立され、その後貞治五年(1367)、足利義詮が没した時に菩提寺に。名前は義詮の院号である宝筐院にちなんでいる。晩秋のこの時期でも、ここだけは紅葉が残っていると友人から聞いて、是非見たいと思っていた。

古風な門をくぐると、そこは別世界。自然に感嘆の声が出る。友人の言葉が納得できた。散りかけた紅葉やカエデと、散った落ち葉とのコントラストが見事。心のもやもやが、しばし遠のいて、季節を楽しむ素直な気持ちが溢れてきた。

「どうしたんですか、わざわざ呼び出して」「忙しかったでしょ、悪かったわ」「いや、まあちょっとは無理したけど、出張に合わせることができたんで、気にしなくていいですよ」「良かったわ、実はね、ちょっと相談したいことがあって・・・」、平日の夕方のせいか、見物客も少ない。まさに秋が終わって冬がはじまる、そういう雰囲気が二人を包んだ。

「あのね、こんなこと言いにくいんだけど、なんか夫がね、浮気しているみたいなの」「浮気?、画廊を経営しているっていう旦那さん?」「そう、この間ね、出張するっていって家を出たのに、京都の街中で偶然見かけたのよ。綺麗な女の人と一緒のところを」「でも、それだけで浮気してるって?」「女ってね、特に私はね、そう言う所が鋭いの、すぐに分かるのよ」「へえー、そうなんだ」

そう答えながら境内を歩いていると、向こうから中年の男と女の二人連れが歩いてきた。佐藤は別段何も感じなかったが、すれ違った後に奈緒美は立ち止まり、振り返りながら話しかけた。「あの二人ってカップルよ、間違いないわ」「ええっ、そうなの?」「ほら、今手をつないでいるでしょ?」「ほんどだ、さっきはちょっと離れて歩いていたのに」「ねっ、女の人の目つきが違うんだから、潤んでいて・・・」「なんか、細木数子みたいだなあ」

「それでね、頼みたいのは、二人の関係を確かめたいのよ」「今から後を追いかけるってこと?彼らの?」「違うわよ、あの二人じゃないの、夫とその女性」「ああそうか、そうだよな、何勘違いしてるんだろ」「ううん、いいの、それが佐藤さんだから」「でもどうするわけ?」「今度夫が出張するって言い出したら、佐藤さんに連絡するから、二人で夫の車の後をつけたいの」「ええっ、それって、なんか探偵みたいだね」「そうね、でも私もう、このままじっとしていられないから」

そういう奈緒美の話を聞いて、佐藤は自分の仕事の都合を心配している場合じゃないなと思った。「わかったよ、それじゃ連絡を待ってる」「助かるわ」「いや、奈緒美さんのためなら何でもするよ」「ありがとう・・・」、佐藤はまだ奈緒美と男と女の関係になっていないのに、それ以上の緊密な絆を感じた。

佐藤は教訓を学んだ。自分の大事な都合を犠牲にできなければ、浮気をする資格はない。


◆銀閣寺
ある平日の昼間、広之は美和子に誘われ”哲学の道”を歩いていた。亭主が神戸へ出張したと、美和子から連絡があったのが一昨日。亭主の片瀬には、それを事前に電話で連絡していた。

それにしても不思議なシチュエーション。友人の妻の誘惑を頼まれるなんて。しかもその妻が、魅力的な美人。アプローチが、あまりにも順調すぎて怖い。ホテルで一夜を共にしてからというもの、美和子は自分に対しビックリするぐらいオープンになっている。あくまで友人からの依頼に基づく演技、それをつかの間の遊びとして楽しめばいい、と割り切ってはいるが、片瀬にも美和子にも、なんとなく後ろめたい気持ちは湧いてきていた。

小川のせせらぎの音を聞きながら、小さな土産物屋が連なる細い道を歩いていくと、右手に広い参道が見えてきた。

「広之さん、良かったら最後に銀閣寺を見てから帰りませんか?」「ええ、いいですよ・・・」「なんかね、お天気もいいし、ぽわんとしたい気分になっちゃった」「ぽわんですか・・・」、南禅寺を始点とするならば、銀閣寺は哲学の道の終点。広い境内に入ると、飾り気のない素朴さが、落ち着いた風情を感じさせる。東山文化の、さりげない“わび・さび”の世界が漂っていた。

「私ね、金閣寺よりも銀閣寺の方が好きなの」「へえー、でもどうして?」「なんか、落ち着くでしょ、こっちの方が」「確かにそうかもしれない、女性の美しさが引き立つような気もするなあ」「うまいわね」「いや本当にそう思うから・・・」

そう笑って話しながら、広之が銀閣の由来にもなっている二層楼閣の観音殿を見上げた時に、曇った空がちょうど明るくなり始めていた。太陽の近くの雲が銀色に輝いている。銀閣寺で銀色の雲かあ、なんかつながってるなあと苦笑いしながら、有名なヴォーカルアルバム、「Chet Baker sings」の古いミュージカルナンバー、”Look for the silver lining”を思い出していた。

「ねえ、広之さん、今度良かったら温泉にでも行きませんか?」「へえー、美和子さんから誘ってくれるなんて、なんか嬉しいな」「別に特に行きたい所がある訳じゃないんだけど、1泊ぐらいでゆっくりしたいの」「いいですよ、ちょっと心当たりがあるから」「へえー、何処?」「山陰ですよ、日本海に面した温泉、鳥取県にある・・・」

広之は、数ヶ月前に書店で立ち読みした雑誌の特集記事を思い出していた。こんな所にカップルで来て、二人で貸切露天風呂なんかに入ったら、さぞかし楽しいだろうなあと、ちょっとした妄想をしたのを思い出す。それがどうだ、今まさに実現しようとしている。美和子と旅行、それも京都を離れて山陰へ。ちょっとした妄想というのは、ほとんど現実にちかい。

広之は教訓を学んだ。自分の些細な妄想を現実にできなければ、浮気をする資格はない。



Chet Baker SingsChet Baker Sings

フォーライフ(21)

2006-06-23 06:41:05 | 020 小説「フォーライフ」
◆100万ドルの夜景
六甲オリエンタルホテルは、六甲山の山頂近くにある。神戸から車でくねくねした道路を登っていくと、ホテルまでおよそ40分。大阪湾を見下ろすその眺めは素晴らしい。植田は、このホテルを使うときは必ず大阪側で、しかもなるべく上の階の部屋を予約することにしている。その方が夜景が存分に楽しめるから。こういう細やかな気配りが、自分の強みだと自負もしている。

車を駐車場に止めてロビーで受付を済ませ、二人はちょうど部屋にチェックインしたところだった。日が暮れてからそんなに時間は経っておらず、空は群青色に染まっている。大阪湾をぐるりと囲むように光り輝く、街の灯りがキラキラと美しい。

「ねえ、ここからの眺め、100万ドルの夜景ってよく言うじゃない、どういう意味か知ってる?」「知ってるよ、神戸生まれの神戸育ちだよ、ネイティブにそんな質問するなよ」、戦後間もない頃、六甲山から見える電灯の数が500万個近くなり、それにかかる電気代が1ヶ月で約4億円、当時1ドル360円の為替レートで計算すると、約100万ドルになったという話を、植田は貴美子に得意げに説明した。

「あのね、そうじゃないの」「ええっ、違うのかよ」「宝石箱の中にあるダイヤとかが、沢山の星のようにキラキラ輝いているってことよ、憶えておきなさい」「おかしいなあ、俺の話は信憑性あると思うけど・・・」「また何処か地元のお年寄りに聞いたんでしょ、ダメよ、そんな話にだまされちゃ」「・・・」「まあ、このクロスのペンダントは、その中のひとつってとこかなあ」「はあー?そんなにいっぱい宝石持ってるわけ?」「違うわよ、これから増えていくってこと、あはは」

植田は教訓を学んだ。女の勝手な妄想を受け入れられなければ、浮気をする資格はない。

「ねえ、旅行に行く話どうなった?」「ああ、あれか・・・」「忘れてたんでしょ?」「そんなことないよ、最近いろいろ忙しかっただけ」「それで・・・」「なんとか行けそうだよ、仕事が一区切りついたから、ちょっとはゆっくりできそう」「ゆっくりって、どのくらい?」「1泊2日かなあ」「ええーっ?1泊だけー、ぜんぜんゆっくりじゃないじゃない、なんて私もそのぐらいしかダメだけどね」

貴美子は、ようやく実現しそうな小旅行の話に、自然と顔がほころんだ。

「それじゃ、前に話した岡山の湯郷温泉でいい?」「ああ、いいよ」「それじゃ、来週の木金ぐらいでどう?旦那が出張なんだ」「それなら、ちょうどいいな、得意先へのシステム納入がその前に終わるから」「やったあー、いいな、いいな、嬉しいな」「ご主人の方はいいの?」「任せてよ、まあ出張だし、とにかく疑うことを知らないのよ、あの人」

貴美子はニコニコしながら窓から外を眺めている。上機嫌なのがよく分かる。胸元のペンダントから放たれるダイヤの妖しい光と、窓から見える街の灯りの色合いがよく似ていた。部屋のスピーカーからは、アール・クルーのアコースティック・ギターによるソロ、セルジオ・メンデスが作曲したバラード、”So many stars”がしっとりと流れていた。

Solo GuitarSolo Guitar

◆芦屋市立美術博物館
真由美は、出張してきた片瀬を誘った。芦屋川沿いを散歩し、着いた所は美術博物館。十数年前に市制施行50周年の記念事業として建設された。隣りには谷崎潤一郎記念館もある。最近は市の財政難のため、民間への身売りも噂されていて、平日は訪れる客がめっきり少ない。

「この間の美術館に裸婦の絵があったでしょ、作者の名前憶えてる?」「いや・・・」「あれね、小出楢重っていう画家なのよ」「実はね、この近くに仲のいい友達が住んでいて、うちの近くにも、その画家の作品がたくさんあるよって教えてくれて」「お前気に入ったのか?」「違うわよ、片瀬さんでしょ、気に入ったのは、私のお尻に似てるって、じっと見入ってたじゃない」「・・・」

しばらく館内を歩いていると、小さなガラス絵が目に入った。絵の横には、「ソファーの裸女」(1930年)と書かれたプレートがあった。片瀬は、さっき真由美が話していた絵を思い出した。「前よりちょっと太ってるな」「失礼ね、言っとくけど、これ私じゃないからね」「ああ、ごめん、なんかヘンな錯覚をしたな」「まあ、ここに連れて来た私が悪いんだけど」

確かに似ている、同じ画家だ、同じモデルなんだろうか?真由美はここまで太っていない、ただ尻の形がよく似ている、そう思いながら、片瀬はまた絵にじっと見入った。

「その画家とこの博物館とどういう関係なんだよ」「聞いた話じゃね、もともと大阪出身らしいんだけど、芦屋が好きになって、晩年はこの近くに住んでいたらしいよ、すぐ隣りに再現されたアトリエもあるらしいから」「へえー」

「ところで、あの話どうなったの?奥さんに浮気させる話」「ああ、一応友達に頼んだ」「へえー、スゴイじゃない、ホントにやるとは思わなかったけど」「お前なあ・・・」「そんな、怒らないでよ、ただ感心してるだけ」「どうなるかは、よく分からん」「その友達ってどんな人?」「悪友だよ、昔の麻雀仲間」「へえ、堅物の片瀬さんにそんな友達いたんだ」「まあな・・・」

真由美の話を聞きながら、あせって広之に頼む必要はなかったかなと少し後悔した。真由美と一緒に博物館を出ながら、何が自分をそうさせてるんだろうと、自分に対する疑問がふつふつと湧いていた。いや、いいんだ、これで。

片瀬は教訓を学んだ。女の適当な欲望を受け入れられなければ、浮気をする資格はない。

「なんか興味湧いてきたなあ、今度さあ、その友達と奥さんが会っている所をこっそり見てみたいよ」「お前なあ、頭がおかしいだろ?」「何言ってんのよ、岩井志麻子よりましよ」「誰だよ、そのなんとかシマコって」「女流ホラー作家だよ、なかなか過激でぶっ飛んでんのよ」「知らないなあ、でもこっそり見るってどうやるんだよ」「えーとねえ、例えばさあ、二人が車で遠出した時に、こっちも後ろから尾行するとかね、ドライブと思えば面白いんじゃない?」「お前ヘンだよ、発想がヘン・・・」

片瀬は、真由美にそう言いながら自分もヘンだと思ったが、これまでに経験したことのない罪悪感が何故か妙に楽しくもあった。「それじゃ旅行とか誘わせてみるよ、俺は出張することにして」「すごい、だんだん乗ってきたじゃない」




20世紀号ただいま出発

2006-06-22 06:43:01 | 010 書籍
しつこくシリーズで紹介してます、ジャズ評論家でエッセイスト兼作家である久保田二郎の著書紹介の第7弾。今日は「20世紀号ただいま出発」(1985年)。これはマガジンハウスと呼ばれ、雑誌「ブルータス」の増刊第1号として発売されたもの。

内容的には、“暗黒街の帝王”と呼ばれたアル・カポネの話等、世相から音楽、ファッションと1920~30年代の米国を偲んだいろんな話題が満載されていて、読み手を飽きさせません。その中でふと目に止まったのが、日本人の西竹一(にし たけいち)の話。1932年に開催されたロサンゼルスオリンピックの馬術競技で金メダルを獲得した、大日本帝国陸軍の軍人。

第2次世界大戦前にはロスに駐在し、コンバーチブルを乗り回し、著名な映画俳優達と豪遊。バロン西(Baron=男爵)と呼ばれ人気を集めたんだとか。特に現地の若い女性達に。とても粋でお洒落だったみたい。下の写真はロスの自宅でのパーティーのワンショット。モテモテでいいなあ。

ところがここからが哀しい話。戦車連隊長として北満州から、激戦地の硫黄島へ赴任。そして終戦の年、1945年に戦死。この時に島を攻撃した米英軍が、「馬術のバロン西、出てきなさい。世界は君を失うにはあまりにも惜しい」と連日呼びかけたが、西大佐はこれに応じなかった、なんてもっともらしい逸話が後で作られたそう。実は画家の藤田嗣治の回顧展に行って、代表的な戦争画「アッツ島玉砕」を見たら、西の話を思い出して。二人は似てますね、国際的な遊び人つながりで。

それでニュースをひとつ。この硫黄島が映画化されます。それも2本も。クリント・イーストウッドが監督として米国と日本、それぞれの視点で製作。米国版は撮影終了。日本版のタイトルは「硫黄島からの手紙」で、主演は渡辺謙。指揮官の栗林中将役。年末に公開とか。勿論バロン西も登場。でも戦争映画なので、コワイからたぶん見ないだろうなあ。(笑)


Galler

2006-06-20 06:24:02 | 600 グルメ
一昨日の日曜日は父の日でしたね。娘はW杯の応援に街に出てましたから、その後で話をしたのは昨晩が初めて。案の定、日本のふがいない攻撃ぶりに、ややムカついてました。それで食事の後に、おもむろに冷蔵庫から出し、プレゼントしてくれたのが、上の写真のガレー(Galler)のチョコレート。ネクタイをあしらった包装にビックリ。

ガレーのことを知らなかったから、最初何なんだか分からなくて。下の写真の中身を取り出して、ようやくチョコレートだと気づいた。日本の“小枝”に似た細い棒チョコ。食べてみると、柑橘系の皮の匂いがして、甘さを押さえた味がなかなか渋い。まさに大人好み。名前はオランジェット。オレンジピールをビターチョコでコーディングしたもの。量が少なめでちょうどいい。

娘はワインに合うんじゃないかと言ってましたが、これはやはりチョコの甘味を生かすシングルモルト・ウィスキーがいいんじゃないかと思って。ラベルの色合いも良く似ているグレンモーレンジのハイボールをお伴に。狙い通り、いいコンビネーションだったなあ。

このガレーというのは有名らしいですね。これもやっぱりベルギー産。1994年に王室御用達に認定されたんだとか。1976年の創業だから新しいブランド。HPをみると、コピーは「チョコレートのポエム」。“甘い夢に 思わずほほ笑む幸せなひととき 香り高いセピアの宝石をあなたに… 王様の認めたスイーツが ここにあります“、なんてね。引きつけてくれるなあ。

でもなんですね。この間のGWの旅行中は、娘にあれこれ叱られてばかりいたけど、こうやって何かプレゼントされるといいもんです。秋には東京までSMAPを聴きにいくらしいから、その時は小遣いでもやろうかなと考えてます。(笑)


ニュルンベルク

2006-06-19 06:22:13 | 800 観光
昨晩はサッカーW杯、日本の第2戦、対クロアチア。辛くも引き分け。0-0で終ってみると、前半の川口のPK阻止、これが効いた。娘は大スクリーンのある広島グリーンアリーナへ応援に行きましたが、私はすぐに寝たのでまだ顔を合わせていません。第1戦同様、攻め不足が惜しまれますね。それは置いといて、TVを見ていて懐かしかったのが、開催地のニュルンベルク。

実は前に観光で訪問したことがあります。休日に2日かけてロマンティック街道を周遊。スイスとの国境に近い有名なノイスヴァンシュタイン城があるフュッセンから、ローデンブルクを通って、フランクフルトに帰る途中に立ち寄ったのがこの町。ドイツの南東部に位置し、バイエルン州の中ではミュンヘンに次いで2番目の規模。いたのは2時間ぐらいだけど、よく憶えています。

下の写真の左側は、11世紀に神聖ローマ皇帝ハインリッヒ3世が建設した、カイザーブルク城壁から街を見下ろしたもの。右側は、中央広場に面している聖母教会。今回TV画面にもよく写ってました。建てられたのは14世紀。目につくのが中央の仕掛け時計。毎日正午に、選帝候が中央のカール4世の周りを礼をしながら回るようになっていて、1356年に発布された金印勅書がテーマとか。

近くにはルネッサンス時代を代表するドイツの画家、アルブレヒト・デューラーが晩年を過ごしたアパートがあり、記念館になってました。この時代の絵は、そんなに好きじゃないけど、ルーブル美術館にあった上の写真の「自画像」(1493年)は、強く印象に残っているなあ。

そして何といっても、ここはリヒャルト・ワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の舞台。その前奏曲はとてもポピュラー。第2次世界大戦中はナチの本拠地で、党大会が開催された時に、この楽劇がよく使われたという曰くもついていて、政治色が強いことでも有名。聴いていると、荘厳な雰囲気の中に、確かに気持ちが高揚してくる感じですね。



ワーグナー:管弦楽曲集ワーグナー:管弦楽曲集

アートロック

2006-06-16 06:45:13 | 220 POPS
息子がギターにハマっているのは前に言いましたが、GWに彼のアパートに行ってビックリ。なんと部屋の中にギターが4本。エレキが2本にアコースティックが2本。まあフェンダーとか一流品じゃないから、金額的にはたいしたことないけど。圧巻でしたね。狭い部屋が、さらに狭い。

部屋に入るなり息子がCDをかけて、エレキを音に合わせて弾き始めて。すぐに分かりました、誰の曲か。ジミ・ヘンドリックスの”紫のけむり(Purple Haze)”。懐かしかったなあ。高校でジャズバンドをやっていた頃、隣りの部屋で練習していたロックバンドの連中がいつもやってたのがこの曲。そして僕の友達が部屋でよく聴かせてくれたのもこの曲。

その頃に、ジャズ・クラシック好きの自分が聴いて楽しめた数少ないロックが、この通称ジミヘンとクリーム。よく聴きましたね。それで、広島に帰ってTSUTAYAで早速レンタル。高校以来だからかなり久しぶり。今聴いてどうかって?昔のイメージ通り。想像以上に良かった。音源としてもキレイな音。良かったなあ、ガックリこなくて。(笑)

当時を振り返ると、彼らの音楽はアートロックと呼ばれてましたね。ちょっと調べると、「サイケデリック・ムーブメントを体験したミュージシャン達は、1960年代後半よりクラシックやジャズなどあらゆる音楽を取り入れ、さらにプログレッシヴなサウンドを追究するようになっていった」なんて感じ。イメージ的には上の写真。そう言えばBS&Tやシカゴもいたなあ。

おそらくジャズやブルースの匂いに惹かれたんだと思います。確かロックでアドリブとかが始まったのは、この頃じゃないかな。そう考えると、音楽を時代で振り返るのも面白いかもしれませんね。

Experience HendrixExperience Hendrix

Wheels of FireWheels of Fire

恋のゆくえ

2006-06-14 06:28:43 | 350 映画
この間、結婚式で久しぶりにピアノを弾きながら、何故か思い出した映画が、シドニー・ポラック監督のラブストーリー「恋のゆくえ~ファビュラス・ベイカー・ボーイズ~」(1989年)。デイブ・グルーシンが音楽を担当し、サントラがグラミー賞を受賞。調べると専用サイトもありました。ジャズ満載ということで、この映画のことは前から知っていたけど、なんか元同業者の自分には直球すぎるんじゃないかと、ちょっと敬遠していました。

シアトルのナイトクラブで“営業”をしている、しがない兄弟ピアニストの話。男二人のピアノじゃ、色気がなくて客を呼べないから、美人歌手をスカウトする。それが主演でハリウッド女優のミシェル・ファイファー。そして弟と恋に落ちる、なんてよくあるストーリー。男性ピアニストと女性歌手って、音楽だけじゃなく愛のコラボになりがち。やっぱり音合わせとかをしていると、どうしてもね。後になって冷静に考えると、単なるその場の雰囲気が多いんだけど。まあそれはそれでいいか。(笑)

原題は日本語のサブタイトル、“The Fabulous Baker Boys”。おそらく“素晴らしいベーカー兄弟”って日本語題じゃ商売にならないと思ったんでしょうね。でも「恋のゆくえ」は、ちょっとベタ過ぎ。マーヴィン・ゲイのヒット曲を連想させるし。(笑)

印象的だったのは、上の写真のシーン。リゾートホテルの大広間で、赤いドレスを着た彼女が、弟役のジェフ・ブリッジスが弾くピアノの上に乗って歌を唄う。まさに悩殺モード。まあピアニストとしては、一度はやってみたいかも、こういうの。

それにしても、ミシェル・ファイファーはハマってたなあ。ちょいキレイな歌手によくある顔立ち。実際に本人が唄っていて、それも良かった。でもエンドロールで曲だけ流れる「My Funny Valentine」を、是非映画の中で、それもピアノの上で歌って欲しかったなあ。

The Fabulous Baker Boys: SoundtrackThe Fabulous Baker Boys: Soundtrack